飯館村役場のモニタリングポストは、3月15日の水素爆発からずっと稼働しているので、
自分が飯舘村に行く前の晩、その1時間ごとの線量データを4月27日分まで集計してみた。
そうすれば、住民の被曝積算量の目安がわかると思ったから。
ついでに、データをエクセルに入力しながら気づいたことは、
3月15日以降の大きな減少トレンドの中で、日中は高くなり、夜に低くなるという日内変動があることに気づいた。
この変動パターンは、原発敷地内の最大線量を誇る「事務本館南側」の変動パターンと同じ。
事務本館のデータには「風向」もあるので、この増減は日中の海風(事務本館は原子炉の陸側にある)と夜間の陸風によるものとわかる。
不幸にも原発に吹く海風の進入路だった飯舘村も、原発からの海風のせいで昼間はやや高くなるのだ。
すなわち昼は原発からの飛散が来ているのだ。
話は戻って集計結果だが、総計は8982.65μSv、すなわち約9mSvに達した。
もちろん飯舘村でも地点により線量の差が大きいが、役場は円形の村の丁度中心にあるので、村全体の平均値ともみなせる。
ちなみに一日当り最大量だったのは翌16日で、701.85μSv/day。
そして16-20の4日間だけで2349.3μSvにも達した。
全44日間の1/11の間に総量の1/4の線量を浴びた事になる。
今では日に80μSv程度なので、この4日間浴びた人は今後の一ヶ月分損した事になる。
その被曝積算量としての9mSvだが、年間被曝量の(私が採用している)安全限度を10mSvとすれば(政府は20mSvとしている)、
猶予はあと1mSvしかない。
それを日数に直すと、今後は更に線量が低下するから計算は難しいが、仮に今の80μSv/day状態が続くとすれば、猶予はたった12日半ということになる。
それなら今月中の計画避難というのも当を得ている。
と思い、4日には同行者にもこの話題を得意げに語ったのだが、
家に帰って計測結果をまとめているうち、この論理は
とんでもない誤りである事に気づいた。
読者のみなさんは、それがおわかりか。
ヒントは前回の記事そのもの。
※どこが誤りかわからない読者は、ここで先を読まずに、前回の記事に戻ってほしい。
机上の計算が現実と乖離してしまう実例を自ら犯してしまった。
定点観測をしているモニタリングポストは村役場の敷地内のもちろん屋外にある。
なのでこの総計8982.65μSvは、あくまで村役場の敷地における線量の積算量であり、村民の被曝積算量では決してない!
なぜなら、村民は、村役場の敷地にまるでモニタリングポストのように24時間ずっと立ちっ放し状態を44日間通していることなどないからだ。
たとえば役場勤務の人なら、昼の8時間は(今なら0.2μSv/hの)建物内にいる。
そして仕事が終われば家に帰って、家の中で朝まですごす。
すなわち、多くの住民は日常生活的に”屋内退避”状態だったはずであり、そうすると被曝積算量はこの屋外の積算値よりもずっと低いことになる(ただし屋外で飼われているイヌは地面に近いところで生きているだけにより多く被曝している)。
4日のわれわれだって、大部分は車の中にいて、屋外に連続1時間以上いたことはなかった。
すなわち、屋外の線量は人の被曝量に換算できない。
屋内が屋外よりずっと低い事を計測したことで、この誤りに自分で気づく事ができた。
人の被曝積算量を正しく知りたいなら、私が4日にやらせてもらったように、ガラスパッチをずっと身につけて、それを専門の機関に提出して検査してもらうことだ。
このガラスパッチこそ、居残っている住民に配布して、毎月検査すべきだ。
信頼できるのは、机上の計算ではなく、ただただ
実測値のみ。
もともと自分がこう主張しておきながら、たとえ2日間とはいえ、机上の計算でわかったつもりになってしまったのには、恥じ入るばかり。
証拠もないのに論理(理屈)だけでわかったつもりになってしまう”知性”の弱点を心しておこう。