例年、8月は旅行を控えるのだが(暑いし、高いし、混んでるので)、
8月も押し詰まった30日に南房総(千葉県)の休暇村館山に一泊した。
休暇村はこの数日間”オフピーク”割引なので、「高い・混んでる」が緩和され、
さらに自分の職場の共済の関係の休暇村割引を加えると3000円引となる。
休暇村を使うにしても、夏ならもっと遠出ができるのに、隣県のここを選んだのは、なんか遠くに行くのが面倒だったから。
ただ隣県といっても、房総半島の先端なので、旧国でいえば武蔵から下総と上総を横断しての安房となるから、それなりに遠い。
JR東のジパング倶楽部の会員なので、管内の鉄路で200kmを超えると運賃が3割引となる(館山だと往復で該当)。
というわけで割引づくめの旅ともなった。
宿は東京湾の入り口に面しているものの、湾奥の都市部(千葉〜東京〜横浜)は水平線の向こうで見えず、見えるのは安房の山(天気が良ければ見える富士山が遠望)と水平線なので転地効果抜群の地。
それに南房総には、心残りが2つあった。
1つは、漫画家つげ義春の聖地(代表作「ねじ式」ゆかりの地)である外房の太海(ふとみ)に行っていない。
ただし残念ながら、今回のジパング倶楽部の往復きっぷでは途中下車できないので立ち寄れない。
もう1つは、優先順位の低い趣味である「岬巡り」の中で、房総半島では洲崎(すのさき)を行き残している。
房総半島の岬といえば、まずはその北東の付け根にある犬吠埼。→記事
これは房総半島というより本州の東端という重要な岬で、なんと地球が丸いのがわかる。
そして南に突き出た房総半島の南端にあたる野島崎。→記事
さらに、東京湾に細長く突き出た富津岬。→記事
これらは訪れたが、鳥の形の房総半島の嘴の先にあたる洲崎が残っているのだ。
実は洲崎の岬は、嘴の下側中央にある宿から近く、それらを結ぶバスの便がある。
ということで、まずは館山から路線バス※に乗り、宿を通り越して、洲崎のさらに南(相模灘)側にある洲崎神社前で降りる。
※:JRバスなのにSuicaに対応しておらず現金のみ(千円札可)。
山側の長い石段の上に社殿が見える。
洲崎神社は安房国一の宮の1つ(もう1つはさらに南にある安房神社)。
盛夏の日差しの中、長い石段を登り切って、拝殿で参拝し文化財の本殿の写真を撮って、急いで石段を降りて、海岸に向かう。
関東大地震(震災)の際に隆起した岩浜には、鳥居が立てられた「御神石」があり、これも御神体といえる(写真。背後の山の中腹に神社)。
これらを急いで巡って丁度バスの時刻になり、それに乗って、本日の宿・休暇村で降りる。
露天風呂の目の前が海で、潮騒を聴きながら温泉に浸かる。
海以外の景色としては、半島北部で安房の国境を画す鋸山(329m)と岩井※の双耳峰・富山(とみさん:349m)が目につく。
※:岩井は小学校の時の臨海学校先。大学でのサークルの合宿にも使った。
温泉の泉質はナトリウム塩化物泉で、海水起源といえるがしょっぱくはない。
温泉だから、一泊で4回入る。
夕食はビュッフェバイキングで、海産物や地元千葉の豚肉や野菜など、種類は多くはないが、ちゃんとした料理になっていて、いわゆる安宿チェーン(伊東園、湯快リゾート)のビュッフェよりはレベルが高い。
翌朝、窓のカーテンを開けたら、なんと夏なのに富士がくっきりと海の向こうに見えるではないか(写真)。
季節柄、期待していなかっただけに意外感を伴って嬉しい。
それに考えてみれば、海を隔てて見る富士って珍しい構図(北斎の「神奈川沖」のように海上からの富士は別)。
そういえば、東海道線の根府川付近から、目の前に広がる相模湾の向こう側の水平線上に、房総半島の先端部が見えるのだから、館山から相模灘を隔てて富士・箱根が見えておかしくない。
朝食のビュッフェ(やはりちょっと種類が少なめ)を取り、朝風呂に入り、チェックアウトして、再びバスに乗って洲崎の岬に行く。
洲崎の岬と灯台は昨日行った神社とは少々離れていて、戻るバスまでの30分間ではいっぺんに周りきれなかったので、神社と灯台と2回に分けての岬巡りとなった。
洲崎灯台前でバスを降り、オートキャンプ場敷地内の洲崎(房総半島最西端)に行った。
見える海の向こうには、富士から伊豆半島、そして伊豆大島が意外に近く・大きく見える。
実際、ここから大島までの直線距離は熱海からより近い。
展望台もある高台の灯台にも立ち寄り、引き返してきたバスに乗って「渚の駅たてやま」で降りる。
ここには館山市立博物館分館があり、館山の漁業についての展示がある。
数年前に訪れた館山城趾にある本館は里見氏まつわる展示だった。
ここからも、館山湾の奥に富士が見える。
そう、館山からは海越しに真正面に富士が見えるのだ(ここからの富士は富士見の名所の一つに入る)。
冬だったらもっとよく見えるだろう。
帰路は、ゆったり外房線回りにしようかとも思ったが、1時間も余分にかかる上に途中下車できないので往路(内房線)を引き返すことにした。
実は明日9月1日から房総半島フリー切符が発売される。
唯一残った心残りの「太海」は、いつかこのフリー切符を使ってでのんびり行くことにする。