こうも暑い夏、エアコンの補助として冷風扇を買い足している。
エアコンだと、設置場所の都合でどうしても冷気が届かない場所が室内にできてしまって、しかものその場所こそ、自分が居たい場所だったりする。
サーキュレーターや扇風機を併用してもいいが、どうせなら冷気を直接浴びたい。
そこで水の気化熱原理(2.5×10^6J/kg)を使った冷風扇である。
この水の気化熱(を奪う)原理は、人体の発汗機能と同じく、自然界ではもっともエネルギー効率のよい冷却方法だ。
冷風扇は安いもの(中国製)だと2000円台から手に入る。
ただ安い物は卓上用のコンパクトサイズなので、自分の体の一部にしか冷気が来ない。
そこでもっと大きい床置きサイズのものをネットで購入した(10000円ほど)。
大きい冷風扇は水もたっぷり入り、冷気の出口(風口)も大きい。
しかも消費電力は60Wなのでエアコンの1/10。
そして風口面以外の3側面すべてが空気の吸い込み口なので、強い風量が出る。
さっそく水と保冷剤を入れて風量最大でフル稼働してみた。
たしかに冷気が出るが、室内の温度を下げるほどではない。
まさにその名の通り”冷風扇”にすぎない。
試しに、エアコンを切った状態で稼働すると、室温がどんどん上ってしまう。
このように冷気が弱いので、温度計を風口に当てて試行錯誤してみた。
風量を最大にした時の風口の温度は、冷風をオフにした温度とほとんど同じで、冷風効果がない(単なる扇風機)。
これは故障(初期不良)かと思ったが、もしやと思い、風量を最小にしてみた。
すると、風口の気温は1℃以上下がり、ちゃんと冷風になる。
冷風扇の風量を多くすると、室温の空気を多量に吸い込むことになり、風口の温度が限りなく室温に近くなる(すなわち冷風の要素が減る)のだ。
となると確かな冷風を出したいのなら、風量を最小にするしかない。
これが第一のジレンマで、エアコンとは逆の非効率さだ。
ちなみに、冷風扇から出る冷風の温度は、理論的には湿球温度だ。
湿球温度とは、乾湿温度計(中学の教室にあった)のガーゼで湿らせた湿球が気化熱で冷却する温度で、これが冷風扇の理論的冷風温度に相当する。
ということは冷風の温度を下げるには、湿球温度を下げればよい※。
※:Kestrel社のハンディ気象計なら気温・相対湿度・露点温度のほかに湿球温度・乾湿温度間の差(Delta T)も計測される。
ついでに(私が好きな)露点温度は、気温の理論的下限で、湿球温度よりやや低い。湿球温度が水蒸気の蒸発の結果の温度なら、露点温度は逆に水蒸気が結露する温度。冷風扇は湿球温度より低くはならないが、エアコンは(室外機で空気を取り込んで)露点温度より低い冷気を生産している。だからエアコンの内部は結露してカビが生えるのだ。エアコンの冷風温度はリモコンの温度設定では制御できないので、内部クリーン機能で防ぐしかない。
湿球温度は乾球温度(通常の気温)が理論的上限なので、乾球温度(気温)を下げると自動的に下がる。
ということは、エアコンで室温(乾球温度)を下げることで、湿球温度も下る。
また、相対湿度が低いほど、水分の蒸発(気化)量が増えるので、湿球温度も下る。
そのためにはエアコンの除湿機能で相対湿度を下げる。
冷風扇の単独稼働だと、水蒸気を放出するため室内の相対湿度が上昇して湿球温度が上がり、冷風が弱くなる(すなわち単独稼働は逆効果)。
ということは、冷風扇から充分な冷風を出すには、エアコンの併用が必須ということ。
電気代が1/10の冷風扇はエアコンの代替にはならないのだ。
これが第二のジレンマ。
以上、2つのジレンマにより、冷風扇で充分な冷風を出すには、エアコンを稼働して室温と湿度を下げ、さらに風量を最小にするということになる。
なるほど冷風扇は、エアコンの冷気が来ない場所での補助用以上ではない。
追記:部屋のエアコンと併用することで、左右両側に本棚の壁があってエアコンの冷気が届かない自分の机付近の空間に冷気を届けることができた。
エアコンの設定を省エネレベルにできるので、エアコン(がんがん)+サーキュレーターよりも、電力的にも温度的にも効率がいいので満足している。
さらにはUV除菌・マイナスイオン※の空気洗浄機能もある。
※:計測マンとして、静電位計を風口にかざすと、機能オフで-200V,オンで-600Vに下るので確かに陰イオンが出ているようだ。オフでの-200Vは冷風機能によるミスト発生によるもので、冷風もオフにすると静電位は0になる。いいかえれば冷風機能だけでも若干の”マイナスイオン”効果はある。