八王子の郷土資料館で、「八王子と天然理心流」展をやっているので観に行った(30日まで)。
天然理心流とは、新選組の近藤勇の剣術流派で、沖田総司や土方歳三もその門弟だった実践剣法。
その流派の本拠地はこの桑都八王子であった。
八王子といえば都下で最大の市で、そこらの県庁所在地を凌駕する都市規模を誇っている。
といっても、都区部の人間にとっては、高尾山に行く時の通過点にすぎない。
私も八王子城と陣場山のハイクで立寄っただけ。
せっかく行くのだから、名物ぽいのを昼飯に食べようとネットで調べたら、
「八王子ラーメン」なるものが、いわばご当地ラーメンとしてあることがわかった。
それを出している「でうら」という店が、資料館近くにあったので、まずはそこを目指す。
やはり、店の外にまで行列が。
でもネットでは回転がはやいというので、迷わず並ぶ。
都心では、ラーメン屋に並ぶことは決してしないが、
地方の訪問先では、せっかくだから並んででも食べてみたい気持ちになる。
しかも、せっかくついでに、注文も”並”ではなく”大盛(1.5倍)”にしてしまう。
しかし八王子ラーメンは至って廉価で、並はたいていの店で450円で、大盛でも550円。
八王子ラーメンは、”きざみ玉ねぎ”が入っているのが第一の特徴らしく、そしてそれに合うようにつゆは醤油ベース、麺はそれ用に作られた尾張屋の細麺が定番という。
カウンター越しに確認したら、確かにこの店の麺は「尾張屋」の箱から出されている。
しかも壁のあちこちの貼り物を見ると、主人は大のドラゴンズファン。
なので名古屋人が行っても違和感ない。
店内で並んでいる間に注文をして、給水機から自分用の水を汲んで、指定された席につく。
最初、大盛では多すぎるかと思ったが、簡単にぺろりと平らげた。
タマネギは、ぐつぐつに煮込んではないので、逆に味が生きている。
ただ、箸で取るには小さくて(レンゲはつかない)、つゆにかなり残ってしまうのがおしい(通の人はタマネギをうまく麺にからめて食べるのかな)。
さて、第一目的(いつのまに?)を終え、坂を下って資料館に行く。
ここは入館無料で、目的の特別展は一室にまとめられていた。
近藤勇が発行した許状などもあった。
この特別展用に作られた図録を購入。
天然理心流に関する活字資料って少ないから、この資料を入手するのが第二の目的。
翻刻された増田藏六(流内で実力ナンバー1)の「印可」には、天然理心流の神髄が具体的に記されてあって、とても参考になりそう。
また藏六の弟子の山本萬次郎という人は、天然理心流だけでなく、なんと小笠原流礼法も教えていたというからうれしくなる。
さらに、足を伸ばして、信松院に行く。
信玄の娘松姫が住職をしていた寺で、清楚な墓がある。
地歴部員だった高校時代(現、あきる野市)から行きたいと思っていた所(そう、八王子って近くて遠い地だった)。
これで本日の予定は終わったが、まだ14時台。
帰るには早い。
資料館でもらった観光地図によると、天然理心流の村田藏六の碑のある善龍寺がここから近い。
せっかくだから天然理心流の史跡も廻ろうと、善龍寺へ向う。
善龍寺の前の道路は「秋川街道」で、戸吹(とぶき)を通るバスが走っている。
戸吹には、天然理心流初代と二代の墓があるのだ。
八王子は次にいつ来るかわかららない。
またまたせっかくついでに、バスに乗って戸吹に降り立つ。
滝山街道沿いのここ戸吹は、実は私にとって懐しい。
我が高校(全寮制)時代、学期の前後などに実家から母が運転する車で通過した所。
この戸吹を過ぎると、道は峠を越えて秋川の谷に下り、高校がある秋留台が一望となる(峠の手前にあった「へそまんじゅう」の看板は今でもあるのかな)。
なのでここ戸吹は、厳しい寮生活に戻る時あるいはそれから解放されて実家に戻る時の、気分的な境界地点だった。
天然理心流流祖の墓のある桂福寺の二階建ての鐘門は(写真)、その頃から素通りしながらも印象的で目に焼き付いていた。
その寺を、今回初めて訪れるわけだ。
新選組のベースとなった天然理心流への思いに、自分の高校時代の思い出が加わった境内で、流祖近藤内蔵助と二代目三助の墓を詣でた。
初めての「八王子ラーメン」から始まり、最後は高校時代の思い出にひたれて、
思いの外、充実した八王子の日帰り旅だった。