特徴的な夢の続き。
【多重夢】
明晰夢も不思議な現象だが、その逆方向の夢もまた不思議。
それは、夢の中で夢を見て、目が覚めてもそれはまだ夢の中という夢。
多重夢だ。
これも幾度が見た事がある。
その中でも鮮明に覚えている多重夢を紹介する。
大学1年の時、サークルでの飲み会の後、先輩(♂)の部屋に泊った時に見た夢。
「夢の中でおしっこがしたくて、トイレに入って勢い良く排尿をした。
そうしたら、別次元の所から生暖かいものが漂ってきて、その異様な感覚で目が覚めた。
目を開けると、すで夜が明けていて、先輩の部屋にいて、隣には別の布団で先輩が寝ている。
私が寝ているのはもちろん先輩の部屋にある布団。
その布団の中に手をさしこむとべっとりと湿り気を感じた。
まずい事態になった、どうしよう、と思っていると、もう一度、目が覚めた。
すでに夜が明けていて、さきほどとほとんど同じ風景。
今一度、自分の布団の中に手を差し込んだ。
すると、今度は湿り気がまったくない。
こちらが、本当の目覚めで、私、いや先輩の布団はまったく無事だった。」
これほど目覚めを有り難く感じた夢も珍しい。
この夢では夢の中でも触覚などの体性感覚(排尿感、暖かさ、湿り気)があるということが、夢らしからぬリアリティを与えていた。
理屈ではこれは当然で、五感はすべて脳内の感覚なので、視覚・聴覚以外も夢で感じることは本来的に可能なのだ。
ということは、ほっぺたをつねっても痛いからといって、夢ではなく現実だという確証はないのだ。
このように多重夢が恐ろしいのは、夢から覚めて現実だと思っているそれがまだ夢である可能性があるということ(しかも触覚を伴って)。
明晰夢とは逆に、夢の力が覚醒意識に勝っている状態である。
結局、現実と夢の区別は、とにかく夢から"本当に"覚めない限り、わからないということだ。
たとえ明晰夢を見ても、見ている本人はその夢から覚めることができないし。
夢の力って恐ろしい。
【金縛り】(睡眠麻痺)
これは覚醒状態のまま夢見の生理的状態(レム睡眠)が作動してしまう現象。
入眠時で閉眼しているものの、まだ覚醒意識があるうちにレム睡眠に陥り、幻覚だけでなく、手足の麻痺、呼吸困難の身体現象を伴う異常現象である。
私はこれを中学から高校にかけて幾度も経験した。
その最初の経験を示す。
閉眼している状態で、まずゴーという音が近づいてきて、あれっと思って目を開けようとするが、瞼が開かない。
焦って声を出そうとするも、口も開かず咽喉から声も出せない。
そして手足を動かそうとしても、動かない。
さらに、胸の上に何ものかが乗っかっている感じで、息苦しく、首を絞められる恐怖を覚える。
そうしている間に、音が遠のき、体の自由が戻ってくる。
私は経験ないが、この時目を開けると目の前に不気味な顔があるような幻覚を見る場合もあるという。
最初に経験した時は、地縛霊か何かに襲われたと思ってびっくりするが、幾度か経験していくうちに慣れてきて、
まず、「あ、来たな」とわかり、少々の間、麻痺状態を我慢して(じっくり味わって)、過ぎ去るのを冷静に待つことができるようになる。
私の場合、高校生の時、金縛りにならなくなったのと入れ替わって睡眠時無呼吸症を発症しだす。
そもそもレム睡眠時は、筋肉が弛緩して電位がなくなることで、夢(幻覚)の中では大騒ぎになっていても、大声が出ず、体も動かない(寝言や夢中遊行はノンレム睡眠での行動)※。
※:なのでレム睡眠の夢で排尿しても無事ですむ。ノンレム睡眠の場合はたいへんなことに…。
だから覚醒状態が残っているうちにレム睡眠の筋弛緩が起きると、身動きがとれないことを”経験”するのだ。
ちなみに、普通の睡眠サイクルでは、睡眠はノンレム睡眠で始まるので、寝入りばなにレム睡眠が来ることはない。
レム睡眠は、睡眠サイクルの繰り返しの最後に来るもので、しかもサイクルが繰り返されるとだんだん時間が増えてきて、覚醒前が最も長い。
明け方以降の起床直前の夢がとても印象に残るのは、それが最も長いレム睡眠による長編の夢だからだ。
夜中に目覚めた直前に見るノンレム睡眠での夢は、静止画的(音や動きに乏しい)で地味なので、その後のレム睡眠の劇的なストーリーの夢によって記憶が消されてしまう。
また、レム睡眠では筋弛緩だけでなく(無呼吸症もレム睡眠時の舌根や呼吸筋の弛緩による)、自律神経が乱れて、体温調節機能や心拍なども乱れるため、人は明け方(一日の最低気温時)に風邪を引きやすく、さらには心停止(死)が起きやすい※。
※:やはり睡眠は死に近い。可逆的な臨死体験ともいえる。いや臨死体験の方が夢の一種だ。
睡眠に掛け布団・毛布が必要なのは、日の出前の最低気温とレム睡眠のタイミングが重なることで、低体温になってしまうからだ(雪山での遭難時に「眠るな!」というのも、レム睡眠に陥ると凍死するから)。