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韓国映画「タクシー運転手」(2017年)

 

 ソン・ガンホ主演の軽いタッチで描かれた韓国映画「タクシー運転手」(2017年8月)を観ました。実在の話を元に片やのんびり、片や鬼気迫る勢い、ロードムービー、怒り、団結、銃弾、カーチェイスありで映画として楽しめました。ただ、主人公がビッグな映画俳優ソン・ガンホでなくてパク・ヨンギュや、チョン・ウンインならもっと良かったのにと思いました。   

 ドイツ人記者トーマス・クレッチマン(ユルゲン・ヒンツペーター実在の記者)を乗せてタクシー運転手ソン・ガンホ(キム・サボク実在の運転手)はソウルから一路光州市へと向かいます(手当が高額なので)。戒厳令が付されて陸の孤島と化した光州市は出入りを止められています。抜け道を使って市内へと進みます。中で行われている軍隊による市民・学生への虐殺。同じタクシー運転手たちの命がけの闘いもあり、その凄惨な光景を目の当たりにしたら誰でも人生観が変わります。ソン・ガンホは一度は娘のために逃げ出しますが、光州以外の人々の噂話を聞き、ドイツ人記者を迎えにまた光州に戻ります。取材を終えた記者を乗せ命がけの光州脱出、管制下の空港、そして搭乗とハラハラドキドキする場面が、映画の緊迫度を盛り上げています。

  「タクシー運転手」

監督 チャン・フン

脚本 オム・ユナ

出演 ソン・ガンホ トーマス・クレッチマン ユ・ヘジン パク・ヒョックォン チェ・グィファ

 

 Youtubeで光州事件の画像をよく目にしますが、「タクシー運転手」で心に焼き付いたことは光州市民の団結です。生死を越えた気高い市民の心をていねいに描いてくれたと思います。1980年5月の光州市の人々は素朴で温かい生活を営んでいて、まさか軍隊による大虐殺にあうとは思いもよらなかったでしょう。それを強く感じさせる映画でした。

 2017年8月に公開され、若い世代や40代から50代の民主化世代の支持を受けた、ムンジェイン大統領政権が誕生した波にも乗って、1200万人の観客を動員しました。37年前の出来事は新しい記憶として後世に残ることでしょう。

 採点10点満点中/7点

 

当ブログの「砂時計」光州事件も描いたドラマ

砂時計③https://blog.goo.ne.jp/yakkogacha/e/9d51cc5be51c9bab6fd8d4a16b4f356c

砂時計②https://blog.goo.ne.jp/yakkogacha/e/10cd541815fcf9f30c101b0fb0b917cb

砂時計①https://blog.goo.ne.jp/yakkogacha/e/83fb33671ce13f2d0d84b5fc4317d7ea

 軍部が光州市を封鎖したために、当時事実が報道されることはなく、民主化を求める学生が起こした暴動として韓国や世界に報道されました。ヒンツペーター氏の報道によって、世界は真実を知ることができましたが、韓国においては、真実が明らかにされるのは1990年代以降になります。
 民主化運動とは無関係なのに、学生に対する弾圧に巻き込まれ、光州市の人々は軍隊によって暴行を受けます。さらに軍隊の発砲により、光州市の人々は傷つき、殺されていきます。目の前で起きている、軍隊の一般市民への殺戮と暴力に抗議・反対する光州市民によって、自然発生的に起きたのが「光州事件」と呼ばれるものです。正しくは「光州市民弾圧・暴力事件」と呼ばれるべきだと思います。
 逮捕者の中には今でも拷問の後遺症に苦しむ人々がいます。その拷問の酷さにPTSDで酒をあおらずには居られない方のドキュメンタリーを見ました。こんな拷問もあるのかと思う程でした。人間のなせる業でしょうか。

 

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