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木下恵介アワー 「二人の世界」(1970~1971年 全26話)

 

 4年前に日本映画専門チャンネルで観たドラマの感想です。

1967年からTBSで”木下恵介アワー”が始まりました。「二人の世界」は第8作目で1970年12月から1971年5月まで放送されました。
 当時このドラマを観ていなかったので、巷でよく流れていた「二人の世界」(あおい輝彦が歌った主題歌)が、ベッタリとしていてあまり好きになれませんでした。
 日本映画専門チャンネルで「山田太一劇場」として、1月に放送されて初めてドラマ「二人の世界」を観ました。このテーマ曲がオープニングとドラマの中で流れているので、大ヒットした理由がよくわかりました。多くの人がドラマを観て、この歌を好きになったのですね。今では私も大好きになりました。
 あおい輝彦「二人の世界」は木下忠司が作曲し、脚本家山田太一が作詞しています。特に2番の歌詞にグッときます。♪夜の闇の中でも 僕は君が見える 声をかき消す 風の中でも 僕は君の声を聴く さすが山田太一だわと感心しています。
 

 「二人の世界」はロマンチックで明るいドラマです。栗原小巻と竹脇無我のゴールデンコンビ。清潔感があって、やわらかで、それでいて凛としている二人。素敵です。放映当時、中華圏で絶大な人気があったのも納得です。

 場面で流れるクールな矢島正明のナレーションも魅力です。
  『始めて出逢った夜、小さな出来事が二人を近づけた夜、二人の間に愛が生まれた。いや、しいて愛とよばなくてもいい、愛がそのように早く生まれ、短い間に揺るぎなく思えることに冷めやすいことを感じる人もいるだろう。だから愛と呼ばなくてもいい』
  『ひとつのめぐりあいが、二人の世界がただ二人の幸せではなくて より広いせかいを照らすのでなければ、二人の世界もその命を失うだろう』
 
 良い俳優を適材適所で配役しています。両親に山内明、文野朋子、人のいいコック長の三島雅夫。ご近所のうるさ型おばさんに武智豊子、やくざのような貫禄に内田朝雄、意思の弱そうな小坂一也、俳優が豪華です。
 
 
 
   二人の世界 1970年 TBS 全26話
 
 
 企画 木下恵介    脚本 山田太一  演出 木下恵介、川頭義郎  音楽 木下忠司  制作 松竹 木下恵介プロダクション TBS
 出演 栗原小巻 竹脇無我 あおい輝彦 三島雅夫 東野孝彦  山内明 文野朋子 菅貫太郎 長谷川哲夫 村井国夫  武智豊子  内田朝雄 小坂一也 五十嵐じゅん
 
 あらすじ(ウイキより)
 
 宮島二郎(竹脇無我)と榊原麗子(栗原小巻)は、海外有名アーティスト(アルマンド・ロメオ)のコンサート会場で入場を断られた同士として偶然知り合う。楽屋口から忍び込もうとして見つかって追いかけられるなどしてそのまま深夜までデート。お互い惹かれあった二人は、毎日のように会ってわずか5日目に結婚を約束するまでになる。知り合って短すぎる、若すぎると言う反対にも抗して二人は3カ月で結婚へとこぎつけるのだった。
 安定したサラリーマン家庭で幸せな生活をおくる麗子だったが、二郎は、会社の派閥争いで左遷され、サラリーマン生活に前途を見いだせなくなっていた。新婚早々、夫婦の危機を迎えた二人だが、お互いに協力し合って生きていこうと脱サラしてスナックを営むことにする。しかし、その経営にも大きな荒波が押し寄せてくるのだった。
 
*****
 

 

 

 二人の燃えるような恋愛は、落ち着いたレストランやバーの効果もあり、短い時間を感じさせないで、ロマンチックに描かれて成就します。大人の恋愛です。
 木造アパートでの新婚生活は竹脇無我の仕事上の理由で、二人はいがみあったりもします。脱サラを決めてからのテンポの良さが、「二人の世界」を明るいドラマに仕立て上げました。
 1970年代の商店街の賑わいなども感じられ、人々が生き生きとしています。観て本当に良かったと、お勧めできる「二人の世界」です。
 
 採点10点満点中8点
 
 
 

 

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「ありがとう第2シリーズ」(TBS 1972年~1973年 全52話)

 

 

 
  4年前にBS12で視聴した「ありがとう第2シリーズ」の感想をこのように書いていたのだなあと新鮮な感慨にふけってしまいます。
 
 
 激しいドラマばかり観ているので、BS12で放送中の「ありがとう2」は穏やかな気持ち、幸せな気持ちになれます。再再再再放送”ありがとう”
 
 日々の暮らしは、事件や事故がひんぱんにおきるわけではなく、あれやこれやと些細な出来事が繰り返されて営まれます。平凡であり健康でいることがどんなに、幸せなことでしょう。
 
 
 
 ピンボケですが爽やかに主題歌を歌う、明星・平凡のグラビアのようなこのシーン。ナース帽がとてもよく似合うチータ(水前寺清子)のファンになってしまいました。
 
♪さわやかに恋をして さわやかに傷ついて さわやかに泣こう いつも心に青空を いつも優しい微笑みを♪”ありがとう”の歌がこんなに胸に響くなんて。
 
 
 
  ありがとう第2シリーズ 看護婦編
 
 作 平岩弓枝
 演出 川俣公明 
 プロデューサー 石井ふく子
 出演 水前寺清子 石坂浩二 山岡久乃 乙羽信子 長山藍子 山本学 児玉清 河内桃子 岡本信人 小鹿ミキ 伊志井寛 清水将夫 大空真由美 奈良岡朋子 佐野浅雄 佐良直美 上村香子 沢田雅美 井上順ほか
 
ウイキより
 
 都内杉並区阿佐ヶ谷にある十(つなし)病院と健気な母子家庭である古山家の周辺に起こる日常を描いた連続ドラマ。新と虎之介との恋愛、十家の長男が離婚寸前から再び幸せな家庭を築くまでの葛藤、その他不思議な縁で結ばれ分かれていく様々な人間模様を描く。第5回テレビ大賞を受賞している
 
 第2シリーズの1972年12月21日放送分(第48話)は、民放ドラマ史上最高の視聴率の56.3%を記録した。これは2010ワールドカップ日本対パラグアイ戦の57.3%に抜かれるまで、TBSの歴代視聴率1位の座を守り続けていた。ウイキより
 
 56.3%の金字塔、「ありがとう」すごいですね。ワールドカップという特別行事を考えるといまだに1位です。俳優陣も豪華な顔ぶれ。1972~1973年の人たちはドラマ「ありがとう」のように楽しく、穏やかに暮らしていたのでしょうか。み~んな幸せだったのかな今観ても本当に面白いドラマです。
 
採点10点満点中8点
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二十四の瞳 (松竹 1954年)

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 まだ観ていない名画に出会えた幸せを、心から感じた木下恵介監督作品「二十四の瞳」。一言”美しい” 映画でした。人間が美しい、映像が美しい、音楽(唱歌)が美しい。春の日の桜の木の下は白黒ではありますが、満開桜の色が見えるように感じられました。映画は考えぬかれた構図の上に成り立っているのだと、映画の基本を改めて教えてくれた「二十四の瞳」です。
 出演者も素晴らしく、高峰秀子と子役たちの交流が生き生きと描かれて、「美しい魂」という形容詞がぴったりの演出でした。
 
 1954年当時キネマ旬報で1位に輝いたという「二十四の瞳」。鑑賞した後全身が感動に包まれ、とめどもなく涙が溢れ、しばらく呆然自失でした。
 
 誰もが知っている、「仰げば尊し」「七つの子」「ふるさと」「ちょうちょ」「みなと」など16曲もの唱歌が場面で流れます。60数年生きてきてこれほど唱歌が美しくて、胸に響いたことはありませんでした。
 風景も古今東西、人間が心地よく感じられる黄金比率、3分割、5分割の割合で撮影されています。遠くの大きな山々を背景に小さな人間が場面の端から端へと歩いて行く、自転車で学校へ向かうシーン。船の櫓を漕ぎながら岬へと。雄大です。
 分教場の1年生の楽しい受業、大石先生のお見舞い、6年生の修学旅行、貧しさ、字幕による時代の説明、教え子たちの出征、進路、同窓会。
 
 「二十四の瞳」は1928年から1946年までの小豆島が舞台で、戦前の地方、農漁村には貧しさが根強く残っています。満州事変から次第に戦争へと向かう世の中で、大石先生扮する高峰秀子は”死んではいけない、兵隊にならなくてもいい”と、反戦の考えをはっきりと子供たちに伝えています。
  2018年の今、軍備拡張に日本が進む中、「二十四の瞳」を観ると1954年は”戦争反対”で国がまとまっていたのだなあと感慨深いものがあります。だって戦争で300万人もの犠牲者が出て、国土は焦土になってから十年も経っていなくて、人々は”もう戦争はこりごり”だったのですから。この映画が文部省特選ということに時代を感じました。
 
 「二十四の瞳」 松竹 1954年
 
 原作 壷井栄
 監督 木下恵介
 脚本 木下恵介
 音楽 木下忠司
 撮影 楠田浩之
 出演 高峰秀子 天本英世 笠智衆 浦部粂子 清川虹子 浪花千恵子 田村高廣 月岡夢二
 
 あらすじ(ウイキより)
 
 1928年(昭和3年)、大石先生(高峰秀子)は新任の女教師として小豆島の岬の分教場のに赴任する。一年生12人の子供たちの受け持ちとなり、田舎の古い慣習に苦労しながらも、良い先生になろうとする大石先生。
 ある日、大石先生は子供のいたずらによる落とし穴に落ちてアキレス腱を断裂、長期間学校を休んでしまうが、先生に会いたい一心の子供たちは遠い道のりを泣きながら見舞いに来てくれる。
 しばらくして、大石先生は本校に転勤する。その頃から、軍国主義の色濃くなり、不況も厳しくなって、登校を続けられない子供も出てくる。やがて、結婚した先生は軍国教育はいやだと退職してしまう。
 戦争が始まり、男の子の半数は戦死し、大石先生の夫も戦死してしまう。また、母親と末娘も相次いで世を去る。
 長かった苦しい戦争も終わり、大石先生はまた分教場に戻り教鞭を取ることになる。教え子の中にはかつての教え子の子供もいた。その名前を読み上げるだけで泣いてしまう先生に、子供たちは「泣きミソ先生」とあだ名をつけた。
 そんな時、かつての教え子たちの同窓会が開かれる。その席で、戦争で失明した磯吉は一年生のときの記念写真を指差しながら(オリジナル版では指差す位置がずれ、涙を誘う)全員の位置を示す。真新しい自転車を贈られ、大石先生は胸が一杯になり、涙が溢れてきた。その自転車に乗って大石先生は分教場に向かう。
 
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「大地の子」④

 
 実の親と育ての親、二人の父の間で揺れる一心。出した答えは「私はこの大地の子です」
 
 気持ちの整理がついた一心は西蒙古鋼鉄公司へ転勤します。その地は夢を断たれて左遷された場所でもあるし、何より労働改造所で過ごした辺境の地です。それでもこの地を選んだことは、中国の発展に一心が心から尽くしたいと思っているからでしょう。国を超えて、恩讐を超えて選んだ一心の生き方です。
 このドラマは放送当時多くの人に感動を与えました。再放送も何度かありますが、いつ見ても感動が薄れることなく、一心が生きた激動の歴史を改めて考えさせられるのです。
 オープニング、劇中、エンディングで流れる音楽が素晴らしく、ドラマティックで胸に迫ってくるものがあります。渡辺俊幸の音楽がドラマに臨場感を与えました。
 岡崎栄の脚本も良く、松岡孝治、潘小揚、榎戸崇泰の演出も見ごたえがありました。
 原作 山崎豊子の小説は社会派です。骨太な男たちの様々な生き方を描いています。原作にした映画やドラマは見ごたえがあります。「白い巨塔」「華麗なる一族」イメージ 4「不毛地帯」「沈まぬ太陽」
 
 
 「陸一心」役の上川隆也は誠実な人柄でぴったりでした。彼以外は考えられないし、上川さんには申し訳ないのですが、一心は上川、上川は一心なのです。
 
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 「陸徳志」役の朱旭は、中国の俳優で素晴らしい篤志家の演技を見せてくれました。運命に翻弄される息子を、どうしようもなく切なく見守る年老いた父親は、見ているものに一緒に心配させ感情移入させました。中国人にこんな素晴らしい俳優がいたなんてそれだけでも感動です。
 
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「松本」役の仲代達也、日本の名俳優です。悲哀をかんじさせる父。表情といい見開いた目の演技といい素晴らしい!ドラマ撮影後、仲代さんが「朱旭」さんには俳優として負けましたと言ってましたが、いえいえ私は仲代さんのような俳優がいて、日本人であることを誇りに思いまイメージ 2す。
 
 
 
 「月梅」役の蔣雯麗、中国の俳優、一心とぴったりで上川さんと結婚して欲しいと思ってしまうほどでした
 
イメージ 3 「黄書海」役の薄宏 声楽家 「黄書海」は日本から来た華僑。頭の切れる人で理不尽な運命を受け入れて内蒙古の草原を悠々と羊飼いをする。一心の日本語の先生。一心の窮地を救う。
 
 「一心の母」田中好子 「祖父」牟田貞三 「妹あつこ」永井真理子
 
 「残留孤児連絡会の人々」渡辺文雄 十勝花子 益田喜頓
 
 「東洋製鉄の人々」西村晃 宇津井健 児玉清 角野卓造
 
 歴史に翻弄された一心ですが、人生に失望することなく、前に向かってゆっくりと歩いて行く。その姿は派手で自信に満ちあふれたものではありませんが、一心の明るい笑顔に、人生には希望があるのだとラストのエンディングを見て感じました。
 「大地の子」はNHKの放送70周年記念特別番組で、「良い作品を作ろう」という製作者の熱意が感じられます。1995年に日中合作で超一流の秀作ドラマが作られたことは、今の日中関係を思うと感慨深いものがあります。
 鬼籍に入られた俳優の方々も多く、今となってはとても懐かしくて、この作品には感謝したい気持ちでいっぱいです。
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「大地の子」③

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   陸一心は北京鉄鋼公司に復帰することができましたが、現場ではなく図書室勤務でした。名誉回復はなかなか出来ず、図書室で日本語の勉強を始めます。
 
 日中国交回復で、日本では本格的に満蒙開拓団の残留孤児探しが始まりました。一心の実の父、松本(仲代達也)は日中国交回復のプロジェクトの一環である製鉄所作りのメンバーになり、東洋製鉄上海事務所の所長として中国に赴任します。そこで自ら、子供探しを始めます。
 
 一心は命の恩人、月梅と結婚します。月梅は巡回診療で、一心の妹あつこらしき人を見つけます。一心と松本は親子と知らずに、お互いの国の代表として対峙します。
 
  一心は病床のあつこに会いに行きます。二人はおぼろげな記憶をたどり、兄、妹として感動の再会をします。病状の重いあつこは入院しますが、治る見込みのない患者として退院させられ、義母は慣習に従って危篤のあつこを土間に寝かせていました。一心は怒ります。36年ぶりにやっと出会えたあつこの死をみとります。
 
  松本は娘あつこの居場所を探し出し、会いにいきますが、あつこはすでに亡くなっていました。そこで二人は初めて親子だと知り、一緒にあつこを弔います。一心も苦労したのですが、あつこはもっと苦労していました。売られた農家でこきつかわれ、寒村の貧農に嫁いで、からだを壊しても働き続けなければならない、残留孤児がこのように苦労したのは、悲惨な戦争があったからです。それにしても悲しい。あつこのシーンは本当につらい。
 
 二人は親子ということを黙ったまま、仕事を続けます。日本への視察旅行中、悩んだ末に一心は松本の家を訪れます。仏壇の母の写真、妹あつこの遺髪とツメをみて泣き続ける一心でした。
 
 松本の家を訪ねたために門限の時間に遅れ、大事な書類を元恋人の夫に盗まれ、又しても、スパイの疑いで職を解かれ、西蒙古の製鉄所に左遷されてしまいます。
 
 そこにはかなり以前から左遷された所長が化石のようにいました。やる気のない工場で、質の悪い鉄を作っているのを見て、一心は仲間の工員たちと良質の鉄作りを始めます。そして良い鉄を作ることに成功します。自分の置かれた場所で落ち込んだり、恨んだりするのではなく、新しい道を見つけて進んで行く。なんて素晴らしい人なのでしょう。なんて強い人なのでしょう。「強い」というのは武器を持って戦うのではなく、困難なことを知恵を使って解決する力が「強い」ということを教えてもらいました。
 
 スパイの疑いが晴れて上海に戻り、炉に火が入ってプロジェクトの最新鋭の製鉄所が完成しました。
 松本は一心の育ての親、陸徳志に会いにいきます。二人の父はお互いを思いやります。松本が帰る時、陸徳志は日本語でさようならと挨拶します。松本は思わず涙があふれます。
 陸徳志の薦めで、松本と一心は親子水いらずの船旅をします。
 
 
 
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「大地の子」②

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   紅衛兵が押しかけ学校や文化施設を壊していきます。暴力で荒れ狂う文化大革命は多くの技術者、医者、教師など知識人たちを粛清し、その家族や子供たちは農村に下放されるなどして何十万人と犠牲者をだし、一億人も被害者がでました。革命という名の権力闘争でした。犠牲者はいつでも民衆です。毛沢東中国では農業、工業政策の失敗によって何千万の人々が餓死します。「大地の子」で毛沢東の行った文化大革命の真実を強烈に知る事ができました。
 
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 北京鉄鋼公司の技術者である陸一心は、ある日突然スパイとして吊るし上げられて牢獄に送られ、拷問を受けて労働改造所(労改)に送られます。多くの囚人と共に辺境のダム建設の奴隷労働に従事します。ダムの増水時には解放軍の兵士とともにダムを守りますが、山崩れでの生き埋めやダムの決壊があり多くの犠牲者がでます。
 
ダム建設現場から内蒙古にある労働改造所に移されて羊飼いとして従事します。虚しく時は立ちますが、一心なりの知恵で良い牧草地を求めて羊飼いもりっぱに努めます。イメージ 4
 
一心はこの地で二人の恩人に出会います。それは労改の羊飼いで日本からきた華僑の「黄書海」と、後に結ばれる「江月梅」です。黄書海には内蒙古の大地を黒板にして日本語を学びます。僅かですが希望が見えるシーンでした。
 
    そして巡回医療で北京からきた医療団の看護婦江月梅との出会いは印象的なシーンでした。月梅たちが乗った医療車が路肩の泥にはまり、動けなくなってしまいます。羊飼いでその場に居合わせた一心は、もともと技術者なので泥の土を削り車を動かします。その行為に月梅はただの羊飼いでないと気づきます。その縁で破傷風になって血清が必要な一心を月梅が助けます。うわごとで父を呼ぶ一心に自らの父を重ね、月梅は匿名で陸徳志に手紙を書いて連絡します。
 
 一心を助けた二人の中国人にドラマでありながら、心打たれてしてしまいました。二人も文化大革命の被害者です。月梅の父は病院の院長でありながら、吊るし上げで自殺していました。自殺者の娘としてレッテルを張られ、医師になる夢をたたれ巡回医療の看護婦として働く月梅。月梅は一心に、父にはない強さを感じていたのでしょう。
 
 黄書海は中国建設のために日本から一家で来ていました。日本の祖父が孫のために使い慣れた色鉛筆を送ったのですが、色鉛筆の長さが違うという事で暗号に違いないと、スパイの容疑で逮捕されます。妻は冷たい牢獄で足腰を痛め、下放された子供たちの「寒くて眠れないので一杯のお湯がほしい」との手紙を読み、妻子のために無実のスパイ容疑を認め、労改に送られたのでした。
 
 内蒙古の労改では一心に不利なことが様々起きてしまいます。懲罰牢に入れられ、羊飼いから汲み取りの仕事に変わりました。砂嵐が激しく吹く日に一心と月梅は再会します。「どんな状況にいても自分を見失わない人」と月梅に愛を告白されるのですが、一心は日本人である自分に関わることが月梅を不幸にすると言い、月梅の愛を受け入れる事が出来ません。とても悲しいシーンでした。
 
 イメージ 3突然いなくなった一心の安否を心配していた陸徳志のもとに、匿名で月梅から手紙が送られ、居場所がわかります。息子一心のために北京へ直接上訴へ行きます。「人民来信来訪室」は中国全土から直訴に集まった人々が、小屋まで作って順番を待っています。父陸徳志も息子の冤罪を晴らすためにがんばって小屋で逗留します。
 
 解放軍の幹部である一心の親友力本の奔走で上訴が届き、一心が労改から解放されることになります。息子を出迎えるために陸徳志はいつ着くとも分からない一心の帰りを北京駅で寝泊まりして待ちます。
 
  5年ぶりに苦労して帰って来た息子との再会は、子供のころ人買いから救った陸徳志と一心、八路軍の関所での父子の感動のシーンとが重なりました。見ていてあふれる涙がとまりませんでした。
 
 
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「大地の子」 NHKドラマ

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    1995年に放送された「大地の子」は中国残留孤児が、戦争、文化大革命、日中国交回復と、歴史の過酷な運命に翻弄されたにもかかわらず、中国の大地で生きて行こうと決心するドラマチックで骨太なドラマです。
 
 このドラマで感動するのは上川隆也扮する「陸一心」の生き方です。どんなに理不尽な出来事にもくじけず、過酷な環境のなかでも自分を見失わないで精いっぱい生きて行こうとする、概して人は困難な状況に陥った時失望し、自暴自棄になったり、死を選んだりします。一心はそれでも生きて、その中で知恵を使い一生懸命に働き、まわりに感動をあたえます。視聴者にも勇気を与えると思います。
 
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 ドラマではこれでもかと悪い中国人がでてきますが、「朱旭」扮する主人公一心の父親「陸徳志」の出現で、ドラマを観ていて救われるような気がします。このような人がいるので、残留孤児を助けて育てた中国の方には感謝の気持ちでいっぱいになります。
 
 
    陸一心(日本名松本勝男)は想像を絶する敗戦まじかの満州で記憶と言葉を失い、妹とともに残留孤児として売られ、農家で家畜並みの扱いを受けます。袋だたきにあいながらも逃げ出し、人買いに売られ、ペストにかかり、死線をさまよいます。中国人の篤志家で小学校の教師である陸徳志は、自身の防寒コートと交換して人買いから一心を助けます。重体の一心を手厚く看病し、我が子として育てていきます。
 中国は日本の関東軍が去った後、毛沢東の八路軍と蒋介石の国府軍の内乱になります。八路軍の攻勢で人々は八路軍側へ行こうと、国府軍と八路軍の関所の間の真空地帯に大勢の人が押しかけて、餓死者もでるほど悲惨な状況になりました。陸徳志一家は命からがら関所にたどりつきますが、八路軍の関所で一心が日本人と分かりそうになり、陸徳志が犠牲的精神で素晴らしい父親の情愛をみせて、難所を無事通り抜けることができます。
 
 イメージ 3一家は長春に落ち着き、一心は小学校中学校と勉強しますが子供の頃から小日本鬼子として苛められていました。高級中学では共産党青年団に入団しようとしますが、お守りが見つかってしまい窮地に立ちます。親友の「力本」の機転で入団に成功します。
 優秀な一心は大連工業大学に入学します。しかし日本人であるという運命はどこまでも、一心を追い詰めて行きます。大学時代の恋人とも別れます。
 文化大革命の嵐が吹き荒れ、北京鉄鋼公司で技師として働く一心は日本人であるがゆえにスパイと決めつけられます、一心の理不尽で過酷で悲惨な運命が又始まります。
 
 
 
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