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「大地の子」②

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   紅衛兵が押しかけ学校や文化施設を壊していきます。暴力で荒れ狂う文化大革命は多くの技術者、医者、教師など知識人たちを粛清し、その家族や子供たちは農村に下放されるなどして何十万人と犠牲者をだし、一億人も被害者がでました。革命という名の権力闘争でした。犠牲者はいつでも民衆です。毛沢東中国では農業、工業政策の失敗によって何千万の人々が餓死します。「大地の子」で毛沢東の行った文化大革命の真実を強烈に知る事ができました。
 
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 北京鉄鋼公司の技術者である陸一心は、ある日突然スパイとして吊るし上げられて牢獄に送られ、拷問を受けて労働改造所(労改)に送られます。多くの囚人と共に辺境のダム建設の奴隷労働に従事します。ダムの増水時には解放軍の兵士とともにダムを守りますが、山崩れでの生き埋めやダムの決壊があり多くの犠牲者がでます。
 
ダム建設現場から内蒙古にある労働改造所に移されて羊飼いとして従事します。虚しく時は立ちますが、一心なりの知恵で良い牧草地を求めて羊飼いもりっぱに努めます。イメージ 4
 
一心はこの地で二人の恩人に出会います。それは労改の羊飼いで日本からきた華僑の「黄書海」と、後に結ばれる「江月梅」です。黄書海には内蒙古の大地を黒板にして日本語を学びます。僅かですが希望が見えるシーンでした。
 
    そして巡回医療で北京からきた医療団の看護婦江月梅との出会いは印象的なシーンでした。月梅たちが乗った医療車が路肩の泥にはまり、動けなくなってしまいます。羊飼いでその場に居合わせた一心は、もともと技術者なので泥の土を削り車を動かします。その行為に月梅はただの羊飼いでないと気づきます。その縁で破傷風になって血清が必要な一心を月梅が助けます。うわごとで父を呼ぶ一心に自らの父を重ね、月梅は匿名で陸徳志に手紙を書いて連絡します。
 
 一心を助けた二人の中国人にドラマでありながら、心打たれてしてしまいました。二人も文化大革命の被害者です。月梅の父は病院の院長でありながら、吊るし上げで自殺していました。自殺者の娘としてレッテルを張られ、医師になる夢をたたれ巡回医療の看護婦として働く月梅。月梅は一心に、父にはない強さを感じていたのでしょう。
 
 黄書海は中国建設のために日本から一家で来ていました。日本の祖父が孫のために使い慣れた色鉛筆を送ったのですが、色鉛筆の長さが違うという事で暗号に違いないと、スパイの容疑で逮捕されます。妻は冷たい牢獄で足腰を痛め、下放された子供たちの「寒くて眠れないので一杯のお湯がほしい」との手紙を読み、妻子のために無実のスパイ容疑を認め、労改に送られたのでした。
 
 内蒙古の労改では一心に不利なことが様々起きてしまいます。懲罰牢に入れられ、羊飼いから汲み取りの仕事に変わりました。砂嵐が激しく吹く日に一心と月梅は再会します。「どんな状況にいても自分を見失わない人」と月梅に愛を告白されるのですが、一心は日本人である自分に関わることが月梅を不幸にすると言い、月梅の愛を受け入れる事が出来ません。とても悲しいシーンでした。
 
 イメージ 3突然いなくなった一心の安否を心配していた陸徳志のもとに、匿名で月梅から手紙が送られ、居場所がわかります。息子一心のために北京へ直接上訴へ行きます。「人民来信来訪室」は中国全土から直訴に集まった人々が、小屋まで作って順番を待っています。父陸徳志も息子の冤罪を晴らすためにがんばって小屋で逗留します。
 
 解放軍の幹部である一心の親友力本の奔走で上訴が届き、一心が労改から解放されることになります。息子を出迎えるために陸徳志はいつ着くとも分からない一心の帰りを北京駅で寝泊まりして待ちます。
 
  5年ぶりに苦労して帰って来た息子との再会は、子供のころ人買いから救った陸徳志と一心、八路軍の関所での父子の感動のシーンとが重なりました。見ていてあふれる涙がとまりませんでした。
 
 
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