無意識日記
宇多田光 word:i_
 



でまぁ質問箱への返答に繋がる訳だがtwitter見てない人には何のことだかわからないだろうからその内容を蒸し返しつつ進めていこう。記々の方読んでる人にはわかるかな。


内向的な独り言ソングである『SAKURAドロップス』では『君』という歌詞が2度出てくる。失恋の痛みの中で『もっと/近づきたい』と願う相手とは一体誰なのか。失恋相手の事なのだろうか。

『君』が失恋相手の事だとすると、『どうして同じようなパンチ何度もくらっちゃうんだ』は同じ相手に何度も告白しては玉砕する事を指す訳だ。だってまだ未練があるから近づきたいと願う訳だしね。『SAKURAドロップス』は「同じ人に何度フラれても諦めない歌」になる。

この場合、最後の『好きで好きでどうしようもない それとこれとは関係ない』の解釈は明解である。向こうが好きになってくれなかろうがどれだけこちらが玉砕しようがこの好きという感情には関係がない。人を好きになるってそういうことじゃないよね。とそういう意味で『それ(報われない事)とこれ(好きである感情)とは関係ない』と歌われるのだ。これはわかりやすい。


では、『君』が失恋相手の事ではないと解釈してみる。具体的な失恋相手ではなく、例えば「自分の理想の恋人」「自分のまだみぬ運命の人」というのではどうか。つまり、『止まらない胸の痛み超えてもっと君に近づきたいよ』というのは、幾多の失恋を乗り越えていけばいつか必ず運命の人と巡り会えるんじゃないかという希望を歌う一節になるし、『そっと君に手を伸ばすよ』の一節も理想の恋人に届かない距離をいつか縮めたい想いがみてとれるようになる。この解釈も悪くない。だがこれに沿うならば『好きで好きでどうしようもない それとこれとは関係ない』の解釈は次のようになる。好きで仕方がない相手とは脳内の理想の恋人のことであって、ならば確かに理想と現実は関係ないのだな、と。


どちらも歌詞の解釈としてはアリだが質問箱への返答した内容とはやや異なる。ここではもう少し違う『君』の解釈が必要になるのだがこの連載長く続き過ぎてきたので私そろそろ途中で放り出すかもしれない(笑)。まぁそれもいつものことなので次回を震えて待つとしようか。果たしてどうなっていることやら。

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『SAKURAドロップス』はヒカルの曲の中でもとりわけ感傷的で独り言感が特に強い。ただひとりで喋っているだけというか、誰に対して伝えたい訳でもないというか。その内向的な性質を活かしたのが『Laughter in the Dark Tour 2018』でのヒカル自らの手による即興気味のキーボードソロだった、という話は既述の通り。それ位に詩的で私的な歌なのだ。

アルバムのオープニングナンバーといえばまずはリスナーを巻き込んでいけるような力強い曲が好まれる。『DEEP RIVER』アルバムにはそういった楽曲がなかったのかといえば全くそんなことはなく、2曲目に最強クラスのワンワード・リフレインソングたる『traveling』が控えている。この曲はまさにオープニングにうってつけで、歌詞にも『みんな踊り出す時間だ』『みんな盛り上がる時間だ』とあるしライブバージョンでは各会場の名前を差し挟むことでも有名だ。これに巻き込まれないなんて嘘だろ、と言いたくなる位の牽引曲。これから始まればわかりやすい。年間2位か3位の特大ヒット曲だし、いわば『Wait & See ~リスク~』並みのの勢いと『Automatic』並みの知名度を兼ね備えた最強のオープニングナンバーに成り得たのだ。

が、現実はこの通り『SAKURAドロップス』が1曲目だ。勿論この曲も年間6位の大ヒット曲だし知名度も申し分ない。アルバム発売直前のシングルカット曲だしね。しかし、曲調が内向的なバラードというのがやはり引っ掛かる。ちょっと普通じゃないよね。

考え方としてはこうだ。まず、国民的所持商品となった前2作と似た印象は与えたくなかった、という点。ミッドテンポの『Automatic』ともアップテンポの『Wait & See ~リスク~』とも違うスローテンポの『SAKURAドロップス』で差別化を図りましょう、と。もう一つは今や宇多田ヒカルの作風は皆の知るところなので、最大の代表曲である『First Love』同様王道のバラードで幕を開けていきなりクライマックスでもいいだろう、と。ドラマ「First Love」の主題歌でもあるし。そういった意図がはたらいていたのではないだろうか。

いずれにせよ現実はこうなのだ。今更言っても始まらないのだけれども、「このアルバムの曲順がもし違っていたら?」という思考実験もまた楽しいものであゆ。いつか他の作品でも考えてみたいな。

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