無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『光』/『Simple And Clean』と『Passion』/『Sanctuary』同様に、『誓い』/『Don't Think Twice』もこれから人気を更に増加させていくだろう事は何となく察せられたと思う。

しかし、先週既に予習した通り、これらキングダムハーツたちのテーマソング群にはここから更に"バージョンを増やしていく"フェイズが待っているのだ。手がつけられない。

まず『光』/『Simple And Clean』には『PLANiTb Remix』が存在する。キングダムハーツのサントラに収録されているからにはゲームで使われたのだろう。その上『KINGDOM Orchestra Instrumental Version』も在るのだ。ゲームをしていないのでわからないが、「こんなん山場で流されたら涙腺崩壊必至やん」というしかない感動的なバージョンである。万が一まだ聴いた事がないという人が居れば是非聴いてみて欲しい。人によっては歌よりこっちの方がいいとか言い出すんじゃなかろうか。それ位にメロディーの美しさが際立っている。なお忙しい人には『KINGDOM HEARTS Instrumental Version』もあるぞ。70秒で終わるので40秒で支度して30秒休憩しよう。それはさておき。

そして、『Passion』/『Sanctuary』も同様に…いや、それ以上に『KINGDOM Orchestra Instrumental Version』が感動的なのだ「キングダムハーツII」は。オリジナルの『Passion』にピンと来ない人もこのオーケストラを聴けば曲がりなりにも「この曲の意図する所」を知る事になるだろう。全盛期の久石譲の楽曲群(「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」や「ハウルの動く城」等々…)に匹敵するサウンドトラックである。ここに、こちらはリミックスという表記ではなく『Opening Version』と『Ending Version』の2つのバージョンが加わる。ゲームのオープニングとエンディングに流れるからだが、この使い分けがことのほかゲームファンから評判がいい。余程場面に合っているのだろうな。想像してしまう。なお『Passion』のエンディングバージョンの名は『after the battle』だ。ご存知だろうけど。で、ここに更に『Single Version』があるのだな。てんこ盛り。


さて。つまり、これから『誓い』と『Don't Think Twice』には、リミックスやらオーケストラやら短いインストやらオープニングやらエンディングやらシングル用やらありとあらゆる派生バージョンが期待される訳だ。もうまさにキングダム、「汝の王国」状態である。どのようなバージョンが用意されるからゲームでの使われ方によるだろうが、この今回のメロディーの強さならまたまたオーケストラバージョンが人気を博す事請け合いだ。いや、あんまり安請け合いしたくはないんだが、少々オーケストラとの相性が難しくてもこのメロディーの強さで押し切れるだろう。そして、また新しいバージョンが発表される度に『誓い』/『Don't Think Twice』の評価が上がっていく訳だ。楽しみで仕方がないよ。

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『Passion』の方はというと、『光』の時とは比べものにならない位に"総スカン"だった。『光』は人気曲2,3曲に挟まれた「ちょっとした谷間」程度だったのに対し『Passion』は「キャリアの底」と言ってもいいほど評価が低く、全くと言っていいほど売れなかった。勿論『Be My Last』という壮大な爆弾の援護射撃(妙な日本語)があったからこそだが、発売当時はライトファンはおろか熱心なHikkiファンまで"総スルー"に近かった。まぁファン自体が減っていた時期でもあったしな。

潮目が変わるのはやはりゲーマーの皆さんからの評価だ。当時はYouTube黎明期。まだまだ動画の数も内容も出揃ってはいなかったが、『Passion』と後の『Sanctuary』をフィーチャーした「キングダムハーツ2」の動画は数百万規模の再生数を獲得していく。よっぽどゲームの幻想的な雰囲気と曲調が合っていたのだろう(私はゲームをプレイしていないので知らない)、特に海外のファンと思しい(ネットじゃ正確な区別なんてつかない)層が絶大と言っていい支持を得ていた。この時耕した層が後の『This Is The One』のヒットと『In The Flesh 2010』の盛況に繋がった可能性は高い。

一方日本ではヒカル本人が強引に持っていった。6年ぶりの全国ツアー『Utada United 2006』のオープニング・ナンバーに『Passion』を起用したのだ。並み居る名曲群を押しのけてよりによって歴代最低売上を誇る(当時)曲を"ツアーの顔"にしたのだから覚悟の程が窺える。これによってかよらずか、好き嫌いは抜きにして、以降『Passion』は「なんだかんだで大事な曲」としてなし崩し的にその地位を固めていった。今やゲームの評価と共にその確固たる存在感は無視できなくなっている。


つまり。『光』にせよ『Passion』にせよ、発売の瞬間は必ずしも高評価ではなく、後のヒカルによる扱いとゲームとのフィット感で徐々に評価を高めていった歴史があるのだ。よって『誓い』も、発売前いや発売前後の時点ではまだまだ「将来の確定した評価」からみれば全然過小評価にとどまっているおそれが強い。寧ろ、その筈なのに今の"ロケットスタート"なのだ。これからどんな事になるか想像もつかない。

しかしひとつ懸念がある。そうやって右肩上がりで評価された『光』と『Passion』がやや神格化された所まで来てしまった事だ。正史としては13年ぶりなのだから仕方がないが、この年月の長さは必要以上の拘りを生んで過去の記憶を美化させるのに十分な時間だ。その堅牢さが、逆に『誓い』への過度な期待を生じさせ、本来不要な落胆すら齎すだろう。これもまた「宇多田ヒカルmeetsキングダムハーツ」というコラボレーションが強力なブランドとなった証でもある。その功罪の攻防の中で『誓い』がどうなっていくか、楽しみだ。

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