また2024/8/11のEIGHT-JAMから。
『私が感じ取ったものを、そことは切り離してまた膨らますみたいな。ちょっとお餅貰ったけど切り離してまた膨らます…殖やした、みたいな。…喩えが変だな…漬物の菌とかの方がいい? ちょっと分けて貰った(笑)。』
これはタイアップの制作話の時にヒカルが出した例え話のくだりですわね。サバンナ高橋に切替スピードを絶賛されてたけど、本来なら芸人さんの現場での切替スピードはもっと早い。それでも感心されたのは、ヒカルさんてインタビューで予め問答を想定してなくてその場でひとつひとつ考えながら言葉を発するからね、これ収録の現場ってより、ネタ出しとか打ち合わせの間合いなんですよバラエティで言うなら。漫才師がコンビでネタ合わせしてアイデアを搾り出してる時にこのスピードで「ここは餅…いや漬物か」って即座に代替案出されたら「あ、この人頭の回転早いわ」ってなるよね。それ。
つまりヒカルさんは最初「切り離して膨らませる」というキーワードを抽出してその特徴の当て嵌まる食べ物としてお餅を出してきたのだけど、
「待てよ、お餅は確かに膨らませるものだけど、量が増えるわけじゃないよね? 単に中に空気が入って容積が増えるだけで質量はそのまんまだな。いや私のやってる事は、メインのタイアップ相手のストーリーを元にして“新しく歌を作り出す”ことだから、最終的なアウトプットの総質量は増えてないといけないんだよね。だとしたら餅の喩えは不適切だな、なんか同じものを分けて貰って質量が増えるもの…ああ、お漬物だとそうなるか!」
…とか考えて喩えをスイッチしたんだろうね。動画と音声があると思考過程が追い易くて嬉しいぜ。
抽象的思考の基本的な推移の一例として、これは非常に参考になるのよね。
・切り離す
・膨らます
の2点の性質だけ抽象してそれに合致する餅という具象を返してはみたものの、元の被比喩対象にとっては不十分でもうひとつ
・最終的な総質量が増えている
という条件を加える事で今度は十分さを担保する。確かに、私の普段の思考過程もこれの繰り返しだわ。対象の特徴や性質を項目毎に抽出して言語化し固定化(ここが大事なんだけどまだあんまり一般的になってないな)して幾つかのサブルーチン(プログラム/ロジック/アルゴリズム)に放り込んで答えを返して貰ってまた対象の性質と突き合わせて齟齬がないか確認する。…ふむ、思考過程だけじゃないな、人との会話であろうと、技術の習得だろうと、自然相手の実験や観察であろうと、基本的にこういうプロセスだわね。
なので、何をするにしてもこの「餅と漬物」のくだりはとても参考になるエピソードだと思うし、なんだったら「コロンブスの卵」や「トロイの木馬」や「臥薪嘗胆」みたいに、普通に文章中に故事成語の一種としてこれから用いていくことになるかもしれないわ。どうなりますやら、だけどね。
P.S. なお、餅や漬物でなく栗まんじゅうならドラえもんの「バイバイン」。あれもSFちっくなエピソードとしては秀逸でしたな。今や「指数関数的増加の具体例」としては最も有名なもののうちの一つかも?? 知らない人はググってね。
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