ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…岡山市・岡山中央卸売市場ネット合同会社の、iコロ

2012年10月26日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 ローカルごはんやご当地グルメは、その成り立ちや背景のストーリーも、関心をそそるための重要アイテムである。古くからの常食なら、興味深いエピソード満載だろうが、地域起こしや新名物づくりから生まれたものはやや苦しい。うんちくも味のうち、が旅で出会ったローカルごはんの楽しみ方だから、新参なりの面白ばなしを、もっと押し出してもいいように思う。

 昨日の岡山シティプレゼンテーションでは、岡山中央卸売市場ネット合同会社で、マグロの血合肉の食用化の話を伺った。市場では、マグロをおろした後に残る血合肉が年間10トンほど出るそうで、毛細血管の塊のような部位だけに、栄養価は高いがとにかく生臭い。味噌に漬けたり牛乳に浸したりしたがうまくいかず、苦心の末、電圧をかけることで臭みの除去に成功したという。

 この血合肉は「マグロ鉄太郎」という名称で販売されていて、11月18日からはこれをコロッケに仕立てた「iコロ」も売り出される。試食の揚げたてのをいただくと、衣がサクッと軽くタネもふわりと柔らか。血の匂いはもちろん、赤身魚の香りも控えめで、揚げ物の脂っこさがなくスナック感覚でパクパクいける。

 担当の方によると、血合肉はヘム鉄が豊富で貧血に効果があり、材料におからも使っているため、食物繊維とカルシウムも摂取できるそう。血合もおからも、本来は捨ててしまうものだけどね、と笑ってらっしゃるが、言われてみればなかなか大した健康食だ。

 血合肉という素材の珍しさ、電圧で臭みを除去する意外性、コロッケ仕立ての親しみやすさに栄養の豊富さ。食うんちくのネタにも事欠かず、市場発の新・岡山名物グルメに名乗りをあげそうだ。欲を言えば、もう少し岡山らしさが加えられると、文句なし。生産販売元には水産ほか、青果の仲卸の方もいらっしゃるから、岡山野菜やフルーツと一緒に、ハンバーガー仕立ても楽しいかも。

 で、名前案は「岡山アイコロバーガー」。語呂もいいし、岡山市さんどうでしょう?


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…大手町『ビストロ・リヨン』の、黄ニラのオードブル

2012年10月24日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 晴れの国・岡山のブランド果実といえば、各種フルーツが思い浮かぶ。ブドウや桃など、お日様の光を存分に浴びて糖度が高いこれら果実は、統計上年間で晴天が多い岡山ならではの、お日様の恵みの味わいなのだろう。

 一方、岡山ブランド野菜の中で注目の黄ニラは、その太陽光線を遮断して栽培するから、晴れの国の恵みをご辞退してもったいないような。とは言え、柔らかい食味と控えめな甘みは、シャキシャキツンツンの青ニラにはない持ち味。栽培に手間と時間がかかること、生産量の少なさから、近頃は高級食材として流通しているのだとか。

 中華料理の食材によく用いられるけれど、大手町サンケイビル地下の「ビストロ・リヨン」では、オードブルの一品に仕立てられた。バケットに鴨のレバーパテを塗り、刻んだ黄ニラをトッピング。普通のニラより香りが強いのが特徴で、パテの濃厚な甘さが際立ち、黄ニラの刺激と香ばしさが相乗効果をかもし出す。パテのねっとり感と、黄ニラのシャキシャキの好対照な歯ごたえも楽しい。

 店の方いわく、このオードブルは黄ニラとレバーパテで「レバニラ」だそう。日に当たらないナヨナヨ野菜ながら、日差し厳しい岡山の活力源になっているのかも?


町で見つけたオモシロごはんbyFb…東京駅 『つばめキッチン』の、つばめ風ハンブルグステーキ

2012年10月23日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 レトロでモダンなリニューアルを施した、東京ステーションホテルのオープンが間近に迫った。内覧会では皇居を眺めるパレスサイド、歴史建築の駅舎内部を見下ろすドームサイドそれぞれの部屋を見せてもらったが、1泊で2万5000円からは少々高値の花。レストランでディナーを楽しみ、バーでカクテルなどいただいた日には、軽く5万は超えそうだ。「もし泊まれたら、晩飯は部屋から景色や内装を眺めながら、カップ麺かな」との、同行者の言葉も分かる気がする。

 カップ麺までいかなくても、ホテルを出て駅周辺の店で食事すれば、いくらか安くつくだろう。とは言え、非日常のレトロホテルに泊まりながら、ありきたりの店に入ってはムードが壊れてしまう。内覧会の前に昼食をいただいた、丸の内オアゾの「つばめキッチン」は、創業60年の洋食の老舗「つばめグリル」の流れをくむ店で、100年の歴史あるステーションホテルに泊まっての食事におすすめだ。

 ハヤシライスやロールキャベツといった、洋食屋の定番メニューもうまそうだが、ここは看板の「ハンブルグステーキ」を注文。焼きたてのハンバーグにビーフシチューをかけ、ホイルでくるんであるため、パンパンにふくらんだのを破るとバッ、と湯気が立ち上る。しっかり蒸されたハンバーグは、ナイフを入れるとふっくら。粗めのひき肉がコクのあるシチューにからみ、思わず笑顔がこぼれるうまさだ。

 このハンバーグが生まれたのは30年前で、包み焼きは香りを演出するためという。香りに深みを出すため、牛を一頭買いしてシチューには様々な部位を煮込んであるそうで、ハンバーグとの相性もいい訳か。ちなみに店名の「つばめ」は、国鉄の看板特急列車からとったとか。かつての東京駅発の列車ゆかりのレストランとくれば、東京ステーションホテル泊まりのディナーに不足はないかも。


ローカル魚でとれたてごはんbyFb…箱根・ポーラ美術館『レストランアレイ』の、イサキのソテー

2012年10月22日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 ポーラ美術館の企画展で、スーラの作品に目をひかれた。浜辺に半分打ち上げられたように、ゆるく傾く帆掛け舟。背後に広がる、うす水色の浅瀬。この「グランカンの干潟」は、ノルマンディ地方に滞在して海を描き続けた氏の代表作で、じっと見ていると箱根山中にいながら、まるで国府津あたりの海風景を思い出させてくれる。

 その影響か、昼食の気分も魚料理に傾くが、さすがにこの立地では厳しいか。と思いつつ、「レストランアレイ」のランチコースを眺めたところ、メインは若鶏の香草焼、ビーフシチューに並び「本日の魚料理」がちゃんとあった。聞くとイサキのソテーだそうで、生のりバターソース仕立てにもひかれ、これをチョイスした。

 カリッと焼けた皮にナイフを入れると、身がホロリと自然にほぐれる。バターで引き出された白身の甘さに加え、皮目から磯魚ならではの潮の香りが立ち、両者を生のりの海藻香が締める感じ。三つの味の「点」が合わさり、イサキの味の実像を「描」く、というとスーラにこじつけかも知れないが、焼き加減とソースの味わいで、イサキの持ち味がガッチリ引き出されている。

 箱根のローカル魚というと、地元芦ノ湖のワカサギが思い浮かぶ。このイサキは沼津港からの直送だが、クルマで小一時間と近く、充分ローカル魚の範疇かも。海辺の絵を山中の美術館で鑑賞すると、かえって様々なイメージが湧くように、山中のレストランで味わう「地魚料理」も、いっそう味わい深く感じるのかもしれない。


ローカル魚でとれたてごはんbyFb…会津若松 『一會庵』の、ニシンの山椒漬け

2012年10月21日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 オリジナルのうまい魚料理は、海なしの土地にも意外に多い。流通が発達していない時代、内陸部や山間部では、海産物は大変貴重な食材。なので、傷まないよう運ぶ工夫や長期保存するため、様々な加工技術が編み出された。

 それが予期せず、味の良さにも影響するケースも。馬に揺られて運ばれ醤油が染みる甲州の煮貝、殺菌用の葉の香りが風味付けになる奈良の柿の葉寿司など、鮮魚にない独特の味わいは、これらの地の人たちの魚への熱い「思い」の味でもある。

 会津の郷土料理、ニシンの山椒漬けに使われる魚介は、北海道産の身欠きニシンだ。北前船で新潟へ、さらに阿賀野川を船でさかのぼり、会津へとはるばる運ばれる。それを醤油と酒と砂糖、さらに山椒の新芽と漬けこんだものである。乾物にされたニシンの凝縮した旨味、殺菌用の山椒の香り付け。運搬と保存のための加工が、味の良さにうまく作用している。

 乗り換えで途中下車した会津若松駅構内の『一會庵』で、地酒「会津娘」と合わせたら、甘辛い味付けに山椒の爽やかさが加わり、辛口の酒との相性バツグン。ニシンそばにのる甘露煮よりは身がソフトで、食感はサバのスモークに似ているかも。保存を意識した加工品は、味付けが濃くなりがちだが、これはしっかりニシンを味わっている感じがする。

 「栄川」「名倉山」「飛露喜」と、カウンター越しに控える会津の地酒たちが気になり…と、内容がいつの間にか「ローカル魚」から「おひとり昼酒」に。小鉢の数切れが終わったら、焼き味噌に地鶏など、ローカルごはんのアテも気になるところ?