ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

焼肉太平門の牛骨ラーメン@倉吉

2020年09月05日 | 旅で出会った食メモ
駅前にある焼肉店で、鳥取和牛専門で山陰に3軒構えるチェーンの本店。ここでも牛すじを頼んだら、こちらは醤油ベースで味が染み身がほぐれる味わい。ナムル、ニラチヂミと、肉は焼かず「焼肉前菜」で納める。

締めの牛骨ラーメンは鳥取のご当地ラーメンで、こちらのは締め仕様なのかダシがしっかり出て味が濃い目。脂はさほど浮いてないが、牛脂の甘さもほどよく、スープを飲むレンゲが止まらない深い味わいである。

倉吉駅前は牛骨ラーメンの店が少なく、ランチもやっている貴重なお店である。

倉吉てくてくさんぽ3

2020年09月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
元帥酒造から街道を先ほど歩いた反対方向へ行くと、旧国立第三銀行倉吉支店の蔵を利用した、アートスペースがある。「くらよしアートミュージアム 無心」は、町と福祉と文化の連携による、作品を展示したミュージアム。禅の精神世界「無心」からとった館名には、既存の価値観や評価に左右されない、無心で表現した作品を発信するとの意図が、込められているかのようである。

この施設では現在、『古久保憲満個展 饒舌な街』を開催している。作者の古久保氏が描いた理想の都市像の絵が、蔵の中のスペースに展示。絵は日本を始め世界の都市をモチーフにしており、集積した都市の情報に自らの精神世界も反映・詰め込みながら、独自の都市像を描いている。

古久保氏は小学生のときに、発達障がい(高機能自閉症)と診断を受けた。当時はほかの児童と共にいることができないほどで、グランドで一人で絵を描いていたところ、それを目に留めた教師の勧めもあり絵を描くことに没頭し始める。東京・中野の社会福祉法人愛成会に見出され、次第に作品が認められるようになり、近年ではヨーロッパやアメリカをはじめ、世界的な評価も高まってきた。それに連れて社会との関わりも持てはじめ、展覧会や取材で海外へ行くことも増えたそうだ。

作品は古久保氏が興味を持っている、世界の都市をはじめ船や車、軍艦といった軍隊の乗り物など。スマートフォンなどでデータを収集して描いており、展示の作品はどれも緻密で情報があふれている。描かれている朝鮮やアメリカのオレゴンなど、都市については特に細かく調べており、「きたちょうせんとアメリカのけいむしょをモデルにしたまち」では周囲の鉄条網が国境、壁がアッテカ刑務所を表現。「発展する中国天津市」にはたくさんの高層ビルにタワー、ジェットコースターが書き込まれる。タイトルは自身でつけており、「はってん」「けいざいかくめい」という前向きなワードが印象的だ。

これらが色鉛筆で着色された、明るく華やかなイメージなのに対し、それ以前に描かれた軍艦が中心の「軍隊シリーズ」は、重たく暗い印象がある。最近はフランス、中国の天津など個展や取材で訪れた都市は、現地をしっかりと観察して描いており、作風もどことなく開放的で明るい。絵を描くことで行動範囲や交流範囲が広がった影響といえ、絵が氏にとって人々と、社会との接点となっているのが実感できる。

いずれの作品からも、込められたあふれんばかりの情報が、見る者に文字通り饒舌に語りかけてくる。伝建地区のしっとりした町並みと緩やかに語らった後は、饒舌な街との賑やかな会話を交わして、倉吉さんぽの締めくくりである。

倉吉てくてくさんぽ2

2020年09月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
山頂には伯耆国の守護・山名師義が築いた城郭の跡がある打吹山を見て、打吹公園通りを渡りさらに先へ。高田酒造は、天保14年に造られた造り酒屋。格子や軒には倉吉の町家の特徴を表しており、厨子(つし)二階建て、吹き抜けの空間や使われる部材に見応えがある。黒壁に細い格子の狭い二階が、落ち着きと重厚さを醸し出す。店頭には、立派な福だぬきの姿も。その先、かつてアーケード商店街だった西町商店街には、当時のレトロな看板がそのまま残る店舗が。まきた旅館の前には、一木に七福神の顔をすべて彫り込んだものがあり、見るからにすごいご利益がありそうだ。

西町にある豊田家住宅は、もと呉服屋。明治時代建築の主屋は、倉吉の伝統的な町家の形式を保持している。玉川を渡った先の倉吉淀屋は1760(宝暦10)年建築の、倉吉に現存する最古の町家建築。間口は26メートル、内部は三間が並び、表が店の間で奥に生活の間、さらに客用の間。玄関は籠が直接入れる、珍しいつくりになっている。「淀屋」の屋号を持つ牧田家は、倉吉を代表する商家。大阪の同名の豪商と、密接な関係だったといわれている。近くの銭湯「大社湯」は、ガラス戸に男湯・女湯の文字が書かれ、ホーロー看板も見られる昭和の趣だ。

玉川沿いには長さ400メートルほどに渡り、白壁土蔵群の土蔵群が続く、江戸~明治期に防火用水の玉川沿いに造られ、蔵の基礎部分は倉吉産の安山岩を用いるなど、防火対策が施されている。板は焼いてあるので、腐りにくい上に景観にもアクセントも。水路にかかる橋は重く高価な一枚石で、当時の豪商の財力も伺える。奥寄りが沿道に赤瓦の建物が並び、白壁と杉板の土蔵が続く景観が見られる。水路に面してエキゾチックな外観を持つ大蓮寺の境内には大阪の豪商・淀屋清兵衛一族や、七福神の弁財天が祀られている。

倉吉てくてくさんぽ1

2020年09月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
倉吉は古代には伯耆国の中心として栄え、江戸期に池田氏が治め陣屋が置かれたことから、陣屋町として栄えた。界隈は「倉吉・打吹玉川伝統的建造物群保存地区」に指定。白い漆喰壁に黒の焼き杉板、屋根には赤い石州瓦、緩やかな反りをもつ一枚石の石橋が玉川沿いに架かる景観など、当時の面影は玉川沿いの白壁土蔵群や、商家の町並みに見ることができる。

石州瓦の建物の倉吉観光案内所が、散策の起点となる。町内は「八橋往来」という、伯耆国の中心であった倉吉と八橋を結ぶ、奈良時代からの街道筋。分岐に設置された道標が、今も残っている。元帥酒造本店(赤瓦七号館)は、160年前に建てられた酒造。倉吉の典型的な町家で、間口が狭く奥が長く、一番奥に土蔵があるつくり。その裏側に水路がひかれ、土蔵の家並みを形成している。町内には3人の仏師による福の神が、各所にあり、この店の店頭にある頭の長い福禄寿もその一つだ。

元帥酒造の付近が、八橋往来で古い建物が集中する地区で、商家のほか明治以降の洋館や商店も見られる。ぎゃらりい和は昭和6年に、日本産業貯蓄銀行倉敷支店として建てられた。倉敷初の鉄筋コンクリート造りの、擬洋風建築物。桑田醤油醸造場(赤瓦六号館)は、明治10年から現在も醤油を製造・販売している、当時の豪商のひとつ。間口が26~7メートルと広いのが、豪商だったことを物語っている。建物は京都に大工を修行に出し、技法を学んで京風にしているため、他の建物とつくりが異なるのも特徴。あたりには年間を通じて、醤油の香ばしい香りが漂っている。

障がい者の文化芸術フェスティバル鑑賞3

2020年09月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
障がい者の文化芸術フェスティバル、アート展の「アール・ブリュット ―日本人と自然―」は、日本人と自然を障がい者の芸術作品により、国内外に発信する展覧会。中国・四国地方各県の作家による、作品の印象を取りまとめた。

森脇高広〈鳥取県〉「無題」
画用紙いっぱいに色を塗り合わせた作品で、作者の感情を可視化したもの。色で画用紙を埋めていくように描き進め、色を混ぜないため原色のカラフルさが際立っている。モチーフ、パーツの大小、天地の方向は決まりはなく、見る側に委ねられている。作品は本来、一枚ずつ独立しているが、集合体となることで個々の色使いのメリハリがより強調された、パッチワーク的な印象を受ける。

中山正仁〈高知県〉「海外航路」ほか
入院した病院で看護婦に描き方を習った絵。美人画はじめさまざまなモチーフ、心象風景を描く。木のパネルに点描の手法で描いていき、エネルギーがいるため3年前から書いていない。作品はモチーフがあるか、自身が見たり体験した題材から制作。かつて水産高校に在学・外国航路への乗船歴があり、「海外航路」はその体験から描かれている。「女」は点描画以前の作品で、写実的に女性を描いたが納得がいかず、一面を赤く塗り完成となった。

徳原望〈山口県〉「とらさんたちの名作風景」ほか
黒のアウトラインと鮮やかな色が、見るものに強いインパクトを与える。リトグラフのように、色彩があふれ華やか。動物のタッチが丸さがあり、優しい印象を与える。広島のアートルネサンス展に出展したり、依頼に応じた作品を描くなど、その名が知られたアーティストでもあり、図書館の壁画を手がけるなど作家としての活動を活発に行なっている。通所介護施設にはギャラリーがあり、作品は地元の周南市で販売も。

戸舎清志〈島根県〉「街と車のある風景」
定規とボールペンによる直線的な俯瞰画で、緻密に計算された数学的図面のような、切れ味のある無機的な印象。車と家の屋根と電線が規則的な配列で、近づくほど角度が揃った直線の集合体と捉えられる。バスでの通勤風景を描いており、どの作品も視点と角度が同じ。膨大な数の車はすべて、覚えているメーカーと車種を忠実に書き込んでいる。

石村嘉成〈愛媛県〉「ハナカマキリ」ほか
動物、虫など生き物を、図鑑的な観察眼で精緻かつダイナミックに表現する。愛媛県を代表する版画作家で、高校の授業で版画の作品を褒められたことがきっかけ。実際に見たものを表現しており、毎日つけている日誌、動物園訪問や旅行先での体験がモチーフになっている。カマキリの目、ロブスターのはさみなど、特徴ある部位をクローズアップした、似顔絵的な表現な特徴。迫力があり写実的ながら、どこかユーモラスでもある。

飛田司郎〈香川県〉「泣きよるきのしたかずこ」ほか
片岡鶴太郎・岡本太郎に影響を受け、画角いっぱいに顔を大胆に描く。代表作は架空の人物を具現化した「きのしたかずこ」シリーズ。アクリルで描いた上にクレヨンをダイナミックに塗っており、間近に見ると塗りの厚みがある。特に目の部分が厚いのは、そこを表現したい作者の意識の表れ。目、口が巨大でアピール度が高く、勢いある殴り書き的パワーがある。

藤井将吾〈広島県〉「ショウゴランド」ほか
ロゴ、乗り物、キャラクターなど、街や旅先で見かけるアイテムを羅列。ピンクか黄色の背景にパーツが規則的に配列されるという構造が、定型のパターン。作者は外に出るのが好きで、広島の各地の街をよく知っているため、リアルな描かれ方になっている。ポップアート風で色彩が強く、看板の文字は「絵」として捉えられているため、実物をトレースした力強いロゴに見える。

澤泰地〈徳島県〉「海と陸に適応した巨大魚」ほか
ワイヤーアートの作家で、図鑑で調べた恐竜をワイヤーによる3次元作品へと仕立てる。ワイヤーアートは学校の授業でも行われていて、徳島県には3人のワイヤーアート作家がいるそう。本来は籠などの実用品を制作するものだが、作者は好む恐竜を表現。資料を多数収集して、色の案を数通り検討した精密な設計図を作成した上で、製作にかかる。一本一本は細いワイヤーながら、動きと質感がある仕上がりに。ワイヤー自体が生き物のようでもあり、巻き方からも生命感が伝わってくる。

Takeuchi Tomoaki〈岡山県〉「素体シリーズ」
人形制作。人間の体の理想とするフォルムを追い続けている。紙粘土か樹脂粘土を整形して、削りも加えて仕上げている。かつては全身像を作っていて、さらに理想を追求して胴体を模索しているが、まだ道は半ばで「完成形はない」とも。展示ケースにたくさんの体系の女性の胴が並ぶ様子は、マネキンのようなモデルにも見え、土偶のような精神世界的にも見える。