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ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

障がい者の文化芸術フェスティバル鑑賞3

2020年09月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
障がい者の文化芸術フェスティバル、アート展の「アール・ブリュット ―日本人と自然―」は、日本人と自然を障がい者の芸術作品により、国内外に発信する展覧会。中国・四国地方各県の作家による、作品の印象を取りまとめた。

森脇高広〈鳥取県〉「無題」
画用紙いっぱいに色を塗り合わせた作品で、作者の感情を可視化したもの。色で画用紙を埋めていくように描き進め、色を混ぜないため原色のカラフルさが際立っている。モチーフ、パーツの大小、天地の方向は決まりはなく、見る側に委ねられている。作品は本来、一枚ずつ独立しているが、集合体となることで個々の色使いのメリハリがより強調された、パッチワーク的な印象を受ける。

中山正仁〈高知県〉「海外航路」ほか
入院した病院で看護婦に描き方を習った絵。美人画はじめさまざまなモチーフ、心象風景を描く。木のパネルに点描の手法で描いていき、エネルギーがいるため3年前から書いていない。作品はモチーフがあるか、自身が見たり体験した題材から制作。かつて水産高校に在学・外国航路への乗船歴があり、「海外航路」はその体験から描かれている。「女」は点描画以前の作品で、写実的に女性を描いたが納得がいかず、一面を赤く塗り完成となった。

徳原望〈山口県〉「とらさんたちの名作風景」ほか
黒のアウトラインと鮮やかな色が、見るものに強いインパクトを与える。リトグラフのように、色彩があふれ華やか。動物のタッチが丸さがあり、優しい印象を与える。広島のアートルネサンス展に出展したり、依頼に応じた作品を描くなど、その名が知られたアーティストでもあり、図書館の壁画を手がけるなど作家としての活動を活発に行なっている。通所介護施設にはギャラリーがあり、作品は地元の周南市で販売も。

戸舎清志〈島根県〉「街と車のある風景」
定規とボールペンによる直線的な俯瞰画で、緻密に計算された数学的図面のような、切れ味のある無機的な印象。車と家の屋根と電線が規則的な配列で、近づくほど角度が揃った直線の集合体と捉えられる。バスでの通勤風景を描いており、どの作品も視点と角度が同じ。膨大な数の車はすべて、覚えているメーカーと車種を忠実に書き込んでいる。

石村嘉成〈愛媛県〉「ハナカマキリ」ほか
動物、虫など生き物を、図鑑的な観察眼で精緻かつダイナミックに表現する。愛媛県を代表する版画作家で、高校の授業で版画の作品を褒められたことがきっかけ。実際に見たものを表現しており、毎日つけている日誌、動物園訪問や旅行先での体験がモチーフになっている。カマキリの目、ロブスターのはさみなど、特徴ある部位をクローズアップした、似顔絵的な表現な特徴。迫力があり写実的ながら、どこかユーモラスでもある。

飛田司郎〈香川県〉「泣きよるきのしたかずこ」ほか
片岡鶴太郎・岡本太郎に影響を受け、画角いっぱいに顔を大胆に描く。代表作は架空の人物を具現化した「きのしたかずこ」シリーズ。アクリルで描いた上にクレヨンをダイナミックに塗っており、間近に見ると塗りの厚みがある。特に目の部分が厚いのは、そこを表現したい作者の意識の表れ。目、口が巨大でアピール度が高く、勢いある殴り書き的パワーがある。

藤井将吾〈広島県〉「ショウゴランド」ほか
ロゴ、乗り物、キャラクターなど、街や旅先で見かけるアイテムを羅列。ピンクか黄色の背景にパーツが規則的に配列されるという構造が、定型のパターン。作者は外に出るのが好きで、広島の各地の街をよく知っているため、リアルな描かれ方になっている。ポップアート風で色彩が強く、看板の文字は「絵」として捉えられているため、実物をトレースした力強いロゴに見える。

澤泰地〈徳島県〉「海と陸に適応した巨大魚」ほか
ワイヤーアートの作家で、図鑑で調べた恐竜をワイヤーによる3次元作品へと仕立てる。ワイヤーアートは学校の授業でも行われていて、徳島県には3人のワイヤーアート作家がいるそう。本来は籠などの実用品を制作するものだが、作者は好む恐竜を表現。資料を多数収集して、色の案を数通り検討した精密な設計図を作成した上で、製作にかかる。一本一本は細いワイヤーながら、動きと質感がある仕上がりに。ワイヤー自体が生き物のようでもあり、巻き方からも生命感が伝わってくる。

Takeuchi Tomoaki〈岡山県〉「素体シリーズ」
人形制作。人間の体の理想とするフォルムを追い続けている。紙粘土か樹脂粘土を整形して、削りも加えて仕上げている。かつては全身像を作っていて、さらに理想を追求して胴体を模索しているが、まだ道は半ばで「完成形はない」とも。展示ケースにたくさんの体系の女性の胴が並ぶ様子は、マネキンのようなモデルにも見え、土偶のような精神世界的にも見える。

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