ここ数年、地方の新空港の開業ブームである。最近だと神戸空港、北九州空港がオープン、3月の神戸の観光客は一時的に増加し、北九州空港と羽田空港を結ぶ新たな航空会社・スターフライヤーは、連日満席の盛況という。昨年の2月に開業した中部国際空港、通称「セントレア」も、万博効果と名古屋の好景気の影響あって、今のところ利用状況は好調とのこと。地元の見学客の数も依然、相当なもので、今や名古屋屈指の「トレンドスポット」。市民は愛着を持って「せんとりゃあ」と名古屋なまりで呼んでいるとかいないとか。
名古屋で一泊、その後に空路で愛媛県の松山へ、と妙な旅程で移動することになり、このセントレアを早々に利用する機会に恵まれた。名鉄名古屋駅から空港行きの特急で30分ほど。中部国際空港駅の改札を出ると緩いスロープがターミナルへ伸びていて、すぐにロビーにたどり着いた。羽田や関西空港と比べ、はるかに便利だ。館内の見学もしたかったのでやや早めに到着したため、まずは正面のエスカレーターで4階へ。左手はヨーロッパの路地裏をイメージしたレストラン・ショッピングエリアの「レンガ通り」、右手は日本情緒あふれる狭い路地に、食事どころと店舗が並ぶ「ちょうちん横丁」で、まだ午前中なのにどちらも結構な客で賑わっている。
レンガ通りはカジュアルフレンチやイタリアン、フードテラスなどの食事どころ、アクセサリーや輸入雑貨のショップなどが集まっていて、レストランは滑走路を見渡す「エアロポルト」が人気。南イタリアの郷土料理やナポリピザが本格的と評判が高く、お昼の開店前から、周辺にはお客の姿もちらほら見られる。一方、ちょうちん横丁は和風レトロな店構えの店舗が並び、なんだか懐かしくホッとする空間だ。ここには何と、日本の空港で初の展望風呂があり、時間があれば入ってみようと思ったものの30分待ちの盛況ぶりだ。飲食店は大エビフライと知多半島沖の魚介が頂ける「まるは食堂」が一番人気で、長い行列ができている。ちくわ、日間賀島のタコの加工品、真珠漬けなど、海産物のみやげ店の店頭も興味深い。話題の「空弁」を扱う店もいくつかあり、タコめしなどもある。
スカイタウンから出たところの展望デッキで、伊勢湾をバックに離着陸する飛行機を眺めていると、そろそろ搭乗の時間が近づいてきた。さっきの店で「空弁」を買って機内で食べることにして、目に付いたのをひとつ買い込んで搭乗口へ。中部国際空港と松山空港を結ぶ便はDHC8-400という小さなプロペラ機で、離陸して左にセントレアを見て、御在所岳上空を通過、琵琶湖にさしかかったところで弁当の包みを開くことにした。『なごや一番』と、堂々たる名前が付いたこの空弁、名古屋の地鶏・名古屋コーチンと、名物ウナギ料理のひつまぶしがセットになった、名古屋の味が凝縮した弁当である。製造元の「だるま」は、名古屋駅でも古くから駅弁を販売しており、「みそカツ弁当」や「とりめし」といった、ご当地名物の味の駅弁を数多く扱っている。
箱のふたには「純系名古屋コーチンを使用」とあり、名古屋コーチン普及協会のシールも付いている。うるち米と餅米のご飯と一緒に頂くと、肉は柔らかく地鶏独特のくせもあまりないので、鶏のいい味が濃厚に楽しめる。ごはんに刻んだウナギの蒲焼きを混ぜ込んだひつまぶしには、三河一色産のウナギを使用。身はふっくら、皮が香ばしく焼かれ、タレやご飯によく合う。箸休めはこれまた名古屋名産の守口漬けも入っているなど、まさに本格的な名古屋名物が盛りだくさん。やや値段は高いがそれだけに本格的な味で、冷めてもおいしいように調理されているのもありがたい。
フライトの短い時間で食べる「空弁」のため、少々量が少なく、もうひとつなにか弁当を買えばよかったかな、と思いつつごちそうさま。飛行機は航行高度5000メートルと低いため、下界の景色がとてもよく、六甲山麓から大阪市街、さらに神戸を見て、尾道上空からしまなみ海道沿いに南下する。新空港のおかげで、あと1時間後には道後温泉本館の湯に浸かっていられそうである。(3月食記)
名古屋で一泊、その後に空路で愛媛県の松山へ、と妙な旅程で移動することになり、このセントレアを早々に利用する機会に恵まれた。名鉄名古屋駅から空港行きの特急で30分ほど。中部国際空港駅の改札を出ると緩いスロープがターミナルへ伸びていて、すぐにロビーにたどり着いた。羽田や関西空港と比べ、はるかに便利だ。館内の見学もしたかったのでやや早めに到着したため、まずは正面のエスカレーターで4階へ。左手はヨーロッパの路地裏をイメージしたレストラン・ショッピングエリアの「レンガ通り」、右手は日本情緒あふれる狭い路地に、食事どころと店舗が並ぶ「ちょうちん横丁」で、まだ午前中なのにどちらも結構な客で賑わっている。
レンガ通りはカジュアルフレンチやイタリアン、フードテラスなどの食事どころ、アクセサリーや輸入雑貨のショップなどが集まっていて、レストランは滑走路を見渡す「エアロポルト」が人気。南イタリアの郷土料理やナポリピザが本格的と評判が高く、お昼の開店前から、周辺にはお客の姿もちらほら見られる。一方、ちょうちん横丁は和風レトロな店構えの店舗が並び、なんだか懐かしくホッとする空間だ。ここには何と、日本の空港で初の展望風呂があり、時間があれば入ってみようと思ったものの30分待ちの盛況ぶりだ。飲食店は大エビフライと知多半島沖の魚介が頂ける「まるは食堂」が一番人気で、長い行列ができている。ちくわ、日間賀島のタコの加工品、真珠漬けなど、海産物のみやげ店の店頭も興味深い。話題の「空弁」を扱う店もいくつかあり、タコめしなどもある。
スカイタウンから出たところの展望デッキで、伊勢湾をバックに離着陸する飛行機を眺めていると、そろそろ搭乗の時間が近づいてきた。さっきの店で「空弁」を買って機内で食べることにして、目に付いたのをひとつ買い込んで搭乗口へ。中部国際空港と松山空港を結ぶ便はDHC8-400という小さなプロペラ機で、離陸して左にセントレアを見て、御在所岳上空を通過、琵琶湖にさしかかったところで弁当の包みを開くことにした。『なごや一番』と、堂々たる名前が付いたこの空弁、名古屋の地鶏・名古屋コーチンと、名物ウナギ料理のひつまぶしがセットになった、名古屋の味が凝縮した弁当である。製造元の「だるま」は、名古屋駅でも古くから駅弁を販売しており、「みそカツ弁当」や「とりめし」といった、ご当地名物の味の駅弁を数多く扱っている。
箱のふたには「純系名古屋コーチンを使用」とあり、名古屋コーチン普及協会のシールも付いている。うるち米と餅米のご飯と一緒に頂くと、肉は柔らかく地鶏独特のくせもあまりないので、鶏のいい味が濃厚に楽しめる。ごはんに刻んだウナギの蒲焼きを混ぜ込んだひつまぶしには、三河一色産のウナギを使用。身はふっくら、皮が香ばしく焼かれ、タレやご飯によく合う。箸休めはこれまた名古屋名産の守口漬けも入っているなど、まさに本格的な名古屋名物が盛りだくさん。やや値段は高いがそれだけに本格的な味で、冷めてもおいしいように調理されているのもありがたい。
フライトの短い時間で食べる「空弁」のため、少々量が少なく、もうひとつなにか弁当を買えばよかったかな、と思いつつごちそうさま。飛行機は航行高度5000メートルと低いため、下界の景色がとてもよく、六甲山麓から大阪市街、さらに神戸を見て、尾道上空からしまなみ海道沿いに南下する。新空港のおかげで、あと1時間後には道後温泉本館の湯に浸かっていられそうである。(3月食記)