ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

極楽!築地で朝ごはん20食目…『市場鮨』の、赤身の刺身がたっぷりのった鉄火丼

2006年04月06日 | 極楽!築地で朝ごはん
 築地場外の飲食店の全店網羅を志した以上、観光客が集まる有名店から市場で働く人御用達の店はもちろん、看板を全く出していないような怪しげな店や、ちょっと場末風? なところへも足を向けなければならない。別に義務感で、ということではなく、かえってそんなところの方が思わぬ「当たり」に出くわすのでは、という期待もあるのだが。

 場外市場で賑わっているエリアの外れあたり、築地東通りの晴海通り寄りの一角に、小ぢんましりたビルが立っている。今まで市場を散策する際に何度か前を通ったが、あまり気にかけたことがなくいつも素通りしていた。この日はビルの入口にあったパン屋で、あんぱんが気になってちょっと覗いていると、ビルの奥へ数軒の店が並ぶの目に入ってきた。最奥から2番目の店は寿司屋のようで、ここからはやっているかもよく分からないが、店頭まで来てみるとどうやら暖簾と看板は出ている様子。周囲に人気はなく入りづらい雰囲気だが、とりあえず暖簾をくぐってみることにした。

 築地場外の飲食店にしては店内は広く、市場の寿司屋ではなく町で見かける普通の寿司屋の印象。もっとも時間帯のせいか、客も市場の人がひとりいるのみである。無人のカウンターの一角に腰掛けて、まだ仕込み中といった感じの板前さんと差し向かいながら、品書きをざっと眺める。握りや丼物などが並ぶ中、朝ご飯にピッタリのものはないか探したところ、鉄火丼630円というのを発見。朝から数千円出してにぎり寿司は少々豪華だが、これなら量も値段も朝ご飯にはちょうどいい。

 この『市場鮨』、もとは場内でマグロ専門の仲卸をしていただけあり、寿司ネタの中でもマグロの品揃えの良さには定評がある。赤身を豪華にのせた鉄火丼のほか、カマトロを使った大トロ丼にネギトロ丼など、マグロをネタにした丼物は多彩。ほかにもランチの握りや具だくさんの海鮮丼などお得なメニューが揃い、そのものズバリの店名の通り、なかなか本格的な市場の寿司屋のようである。

 カウンター越しに差し出された丼には、表面を覆い尽くすようにたっぷりとマグロの赤身がのっている。ざっと数えても10枚ほどはありそうだ。ひと切れ箸でつまんでみるとかなり厚く切ってあり、これは食べ応えがある。中トロや大トロのふっくらした味わいと対照的に、全体的に歯ごたえがありざっくりした食感。味の方もかなり淡泊であっさりしているから、これまた朝食向きか。

 刺身が厚めなので、ご飯と一緒にかき込むというよりもつまんではご飯を食べ、という具合なので、先に刺身だけなくなってしまった。残ったご飯をあら汁と一緒に平らげてひと息。ちょっと気を付けなければ見つけられなさそうな場所で、思わぬマグロのうまい店を見つけたな、と、ちょっと得をした気分で店を後にする。相変わらず人の気配があまりないビルの飲食店街から出ると、そこは築地東通り。買い物客が行き交い、店の人の呼び声が響き渡る、いつも通りの築地の喧噪が広がっていた。(6月下旬食記)