このところ天気のいい日が続き、朝の築地散歩も気分爽快に楽しめたが、この日は朝からしとしと雨が降り続いている。地下鉄の東銀座駅を出て、傘を差して築地方面へと歩いているだけで、足元からぬれてくるほど雨脚が強い。アーケードが設けられている新大橋通りの商店街を歩いている分にはいいけれど、あまりあちこち歩き回るのは少々面倒だ。こんな日は早々に店を決めて、雨宿りを兼ねてゆっくりと朝ごはんといきたい。
昨日鯵フライライスを頂いた「ひかり」と同様、新大橋通り商店街と築地西通りとの間を結ぶいくつかの路地にも、隠れた? 飲食店がいくつかある。店といってもこのあたりの路地にあるのは、通りに面してカウンターが設けられているだけの、オープンスタイルが中心。食べ歩きの際にしょっちゅう通り抜けるすぐ横で、ひと仕事終えた親父さんが丼をかきこんでいたり、朝からビールと刺身で一杯やっていたりと、これまでも気になっていた店の中で訪れたのは『食事処たねいち』。建物の中の狭く薄暗く細い通路に面したカウンターだけの店で、おかげで雨にぬれないのがありがたい、とカウンターのいちばん端に腰をかける。すぐ後ろは商店のため、買出しのお客が行き来したり品定めをしていてにぎやか。「市場食堂」らしい風情が満点の店である。
市場食堂らしさは、メニューにも見られる。どんぶりと定食が中心で、メバチマグロをふんだんにつかったマグロ丼、魚は日替わりの焼き魚定食、たっぷり具だくさんのイクラ丼にウニ丼など、ネタやおかずの鮮度や量、さらに値段の安さは特筆モノ。そのおかげで、昼時には観光客や近くにオフィスのあるサラリーマンで、行列必至の人気店とか。そんな豊富なメニューの中から選んだのは、看板料理のひとつである海鮮丼。ウニ、イクラ、マグロ、白身魚、タコ、卵焼きと6種もの具がのるというのに、値段は1000円を切っている、大変お得なメニューである。
雨にぬれて冷えた体を、セルフサービスのお茶を飲みつつ暖めながらしばし待っていると、どうぞ、と丼が目の前に置かれた。見るからに具の種類が豊富で、マグロは赤身のほかこの値段で中トロまでのっているのは驚きだ。脂ののりは程々で甘みがあり、筋もなく柔らか。さらに、ウニとイクラがたっぷりのっているのもうれしい。ウニはねっとりと甘く、じっくり味わいたいがご飯の熱で溶けてしまうので、急いで頂く。日替わりの白身はこの日はヒラメで、板前さんが目の前でおろしてさくを切っている。つるりとした舌触りが瑞々しく、後からほんのりした甘みが実に上品だ。肉厚なタコは、かみしめると甘みがじわり。
それにしても様々な具、様々な旨味が楽しむことができ、おいしいやら忙しいやら。まさに魚の旨味を堪能できるどんぶりで、いずれのネタもご飯ととても合い、どんどん進む。味の面でも雰囲気の面でも、築地の海鮮丼ランキングでは、ここがナンバーワン。魚河岸・築地らしさを感じ、味わうにはもってこいの店である。丼を平らげ店を後にしたが、雨は激しくなる一方。今日は仕事もお休みにして、新大橋通り商店街の名物モツ煮込みの店「きつねや」あたりで、腰を据えて朝酒を楽しみたいところだが。(6月下旬食記)
昨日鯵フライライスを頂いた「ひかり」と同様、新大橋通り商店街と築地西通りとの間を結ぶいくつかの路地にも、隠れた? 飲食店がいくつかある。店といってもこのあたりの路地にあるのは、通りに面してカウンターが設けられているだけの、オープンスタイルが中心。食べ歩きの際にしょっちゅう通り抜けるすぐ横で、ひと仕事終えた親父さんが丼をかきこんでいたり、朝からビールと刺身で一杯やっていたりと、これまでも気になっていた店の中で訪れたのは『食事処たねいち』。建物の中の狭く薄暗く細い通路に面したカウンターだけの店で、おかげで雨にぬれないのがありがたい、とカウンターのいちばん端に腰をかける。すぐ後ろは商店のため、買出しのお客が行き来したり品定めをしていてにぎやか。「市場食堂」らしい風情が満点の店である。
市場食堂らしさは、メニューにも見られる。どんぶりと定食が中心で、メバチマグロをふんだんにつかったマグロ丼、魚は日替わりの焼き魚定食、たっぷり具だくさんのイクラ丼にウニ丼など、ネタやおかずの鮮度や量、さらに値段の安さは特筆モノ。そのおかげで、昼時には観光客や近くにオフィスのあるサラリーマンで、行列必至の人気店とか。そんな豊富なメニューの中から選んだのは、看板料理のひとつである海鮮丼。ウニ、イクラ、マグロ、白身魚、タコ、卵焼きと6種もの具がのるというのに、値段は1000円を切っている、大変お得なメニューである。
雨にぬれて冷えた体を、セルフサービスのお茶を飲みつつ暖めながらしばし待っていると、どうぞ、と丼が目の前に置かれた。見るからに具の種類が豊富で、マグロは赤身のほかこの値段で中トロまでのっているのは驚きだ。脂ののりは程々で甘みがあり、筋もなく柔らか。さらに、ウニとイクラがたっぷりのっているのもうれしい。ウニはねっとりと甘く、じっくり味わいたいがご飯の熱で溶けてしまうので、急いで頂く。日替わりの白身はこの日はヒラメで、板前さんが目の前でおろしてさくを切っている。つるりとした舌触りが瑞々しく、後からほんのりした甘みが実に上品だ。肉厚なタコは、かみしめると甘みがじわり。
それにしても様々な具、様々な旨味が楽しむことができ、おいしいやら忙しいやら。まさに魚の旨味を堪能できるどんぶりで、いずれのネタもご飯ととても合い、どんどん進む。味の面でも雰囲気の面でも、築地の海鮮丼ランキングでは、ここがナンバーワン。魚河岸・築地らしさを感じ、味わうにはもってこいの店である。丼を平らげ店を後にしたが、雨は激しくなる一方。今日は仕事もお休みにして、新大橋通り商店街の名物モツ煮込みの店「きつねや」あたりで、腰を据えて朝酒を楽しみたいところだが。(6月下旬食記)