ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

極楽!築地で朝ごはん19食目…『ととや』の、希少なボンジリ入り焼き鳥丼

2006年04月04日 | 極楽!築地で朝ごはん
 前回の「築地寿司」で、築地場外の食べ歩きで、ようやく「寿司デビュー」を果たした。これを転機に、これからの築地食べ歩きの展開に変化が訪れるか… と思ったが、とりあえずこの日も築地6丁目界隈へ。築地への買出し客や観光客が少ない、いわば通好みのこのエリアが気に入ってしまい、観光客も多く出入りする寿司店の探訪はまあ、ぼちぼちということで。昨日寿司を食べたから、という訳ではないが、この日選んだのは肉系、鳥料理である。

 今日は路地裏へと分け入らずに、晴海通りに面した鳥料理の店『ととや』に早々に決め、暖簾をくぐることに。築地の魚づくしに飽きたときに、カレーや牛丼、ラーメンなどを食べてきたが、鳥の専門店は始めてである。店は9時からなのでまだ開いて間もないせいか、テーブル席中心の店内にはほかに客の姿はなく、おばあさんがひとり、いすで店番している。BGMなど流れておらず、活力あふれる築地にあって珍しく、静かで落ち着いたたたずまいの店である。

 つくね焼き鳥丼や五目そぼろ丼など、卓上の品書きにある数種の丼物から、選んだのは焼き鳥丼。昼だけの限定メニューで、柔らかいモモ肉を特製の甘辛いタレにつけ焼きにした、照り焼きをのせてある。品書きに「モモ肉とボン」と書かれている「ボン」とは、ボンジリのこと。尻まわりの貴重な肉で、1匹から1切れしかとれない貴重品だ。ほとんど脂だけ、その分鳥の旨みをたっぷり含んでいて、鳥好きにはたまらない味という。ほか、大盛りも「大盛り、中盛り」のほか「肉大盛り」なんてのがあるのがおもしろい。

 運ばれてきた丼に肉は5~6切れのっていて、ご飯が見えないほど。見るからにボリュームありそうだが、肉を2、3切れつまんでみると、柔らかくかなり淡泊な味わい。味が淡いのでテーブルのタレや、薬味であるかんずりを足しながら、さらに肉をガツガツ。かんずりとは新潟県新井特産の香辛料で、地場産の唐辛子を雪にさらしてアクを抜き、麹や塩、天然の香料を加えたもの。辛味が強いが爽やかで、鶏肉の淡い味わいによく合う。そして目玉のボンチリ。かみしめるとジュッとジューシー、脂のみだが良質のため、くどさや雑味がなく意外にさっぱりとしている。肉の丼とはいえ、これはあっさりと朝食向き。食が進み、大盛りにしておけばよかったかな、とちょっと後悔してしまう。

 締めくくりに、追加で頼んだうずらとつくね入りのスープをグッと飲み干す。おかげで脂が流れ、口の中がさっぱりした。ごちそうさま、と店を出ると、梅雨の間の晴れ間が広がっている。築地の食べ歩きを始めて、もうすぐふた月。日差しはすっかり、夏模様である。(6月中旬食記)