暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

聖域

2011-02-20 | -2011
空は厚い灰に覆われ
悲しみをひりだすような雨が降る
断続的に 弱く弱く
土は死の色に染まり
木々はとうに見切りをつけた
かの地では木々が鮮やかに芽吹き
花々が狂おしいほどに咲き乱れ
突き抜ける青空が大地を洗い
毒を知らぬ人々は手に農具を持って
笑い合っているのだという
だがそれが何になろうか
涸れた世界を歩くうちは
肉体など邪魔でしかないというのに
憧れで幾人もが無駄に死に
残された者は死者の遺品を奪い合う
なまなかの希望がわれらの尊厳を奪い去るなら
その世界をわれらは殺そう
底に溜まる怒りを鎮められないなら
その世界をわれらは殺そう
羨望の偶像が善になろうか
いたずらに心をはやらすばかり
たとえいくら死がはやろうとも
ここがわれらの聖域であり
そしてわれらは生きている
耐えて怒りを底に溜め
雨に降られて顔を拭い
土にとられて足を挫き
他者に奪われ心を欠き
尊厳の最後のひとすくいを
聖域に捧げて死ぬために

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