暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

アイロニー

2022-10-03 | 
あなたは私の腕をもちあげ
ひとつずつかぞえていく
ふるくうすれた傷跡を
ひとつずつ、ていねいに

あなたは私のふるい記憶も
すべてしっているようだ
ななつの時にころんだ傷跡
みっつの時にかかった疱疹

傷跡にふれられるのはけして
こころよくはない
けれどあなたの声はおだやかだ
手のひらはくまなくおりていく

私の罪をさらけだしている
それらをくまなく指摘される
おだやかな声で
おだやかなまなざしで

あなたは私の脚をもちあげ
ひとつずつかぞえていく
みたこともない傷跡を
ひとつずつ、丁寧に

あなたが定義した傷跡は
あなたが定義した瞬間まで
存在しないはずだった
昨晩わたしがつけた傷、

あなたの定義した傷跡が
指さすごとにうまれていく
勝手にきざまれていく
私の罪

二年前にころんだ傷跡、
一月前についたひぶくれ、
うまれてまもなくつけた傷、
わたしとおなじ位置の傷跡、

罪がでっちあげられていく
これはわたしたち二人の罪、
そうほほえむあなたのおだやかな声に
私はゆっくりと目をとじた

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