昨日の新聞、死亡欄に、小さくコリン・ウィルソン先生が逝去された旨を伝える記事が掲載されていました。
享年82。
私は小さな記事を見つけて、衝撃を受けました。
その死よりも、扱いの小ささに。
私にとっては高校から大学にかけて、最も興味深く読んだ思想家の一人だったからです。
先生は貧しい家庭に生まれ育ち、中学卒業と同時に工場労働者となります。
しかし、ほどなく職を辞し、大英博物館に通いつめて思いのたけを執筆。
この間、野宿生活を送っていたと伝えられます。
実存主義哲学に基づき、社会の常識の中で生きることが出来ず、社会秩序の外に身を置く芸術家らを取り上げた「アウトサイダー」が大ヒット。
後に怒れる若者たちを生み出すきっかけになったとも言われています。
以来、先生は様ざまなジャンルに興味を示し、多くの評論、小説を手がけました。
先生は正統的なアカデミズムの世界に身を置いた経験が無いことから、いわゆる正統な学者からは蛇蝎の如く嫌われていましたが、そんなことは関係なく、興味の赴くままに、オカルト研究や心理学研究、右脳の研究、殺人鬼の研究などを繰り広げました。
タイトルの付け方も秀逸で、例えば右脳研究では「右脳の冒険」・「フランケンシュタインの城」などがあり、わくわくしながら読んだものです。
人間の能力の限界と可能性を探った、「サイキック」。
また、心理学者のマズローと親交が深く、その影響か、心理学的なアプローチで人間の幸福を論じた「至高体験」など、じつにエキサイティングな作品群でした。
特に「至高体験」は、今や臨床心理士などメンタルヘルスに携わる人には必読の書と言っても過言ではありません。
昨夜は20数年ぶりに古ぼけた「フランケンシュタインの城」や「右脳の冒険」などを読み返し、先生が求め続けた人体の謎、脳の謎、幸福感はどこからくるか、などを考えさせられました。
心からご冥福をお祈りします。
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