T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1581話 [ 「思い出が消えないうちに」の粗筋 1/? ] 11/23・金曜(曇・晴)

2018-11-22 13:00:49 | 読書

「あらすじ」

 ※各々の話の粗筋の中の「ポイントと思われた部分」を薄緑色の蛍光ペンで彩色した。

 ※各々の話の粗筋の中の「心を打った部分」を薄黄色の蛍光ペンで彩色した。

 ※各々の話の粗筋の中の「私が補足した文章等」を薄青色の蛍光ペンで彩色した。

[第一話 「ばかやろう」が言えなかった娘の話]

<主要人物>

 瀬戸弥生、瀬戸美由紀

<概要>

 弥生は、両親の写真を頼りに大阪から函館の都市伝説がある「喫茶ドナドナ」に来た。

 幼い自分を置いて死んだ両親に「ばかやろう」と言うために、時間移動で過去へ戻る。

 写真の通りの様子で、母・美由紀と父・敬一が赤んぼの弥生を抱えて「喫茶ドナドナ」へ現れる。

 美由紀は4歳のときに両親が失踪。苦しんだ末に自殺しかけた時、時田ユカリに救われたとのこと。

 弥生は、自分よりも以上の苦しみを味わった母のことを知り、自分の気持を恥じて、母のように頑張ろうと現在に戻る。

 そのすぐ後で、美由紀はユカリの計らいで、"自分が見たいと思っている未来"の「喫茶ドナドナ」に現れた。

 弥生は、親子対面をして、「来年結婚するの」と嘘をついて幸せな顔みせ、美由紀を安心させる。

<詳細なあらすじ>

 1.   < 序章 >

 函館は坂の町である。

 公けに名前が付けられていない坂は、地元の人からは「名無し坂」と呼ばれている。

 流が働く「喫茶ドナドナ」は、その名無し坂の中腹にあった

 この喫茶店の中のある座席には、不思議な都市伝説がある

 その席に座ると、その席に座っている間だけ、望んだとおりの時間(過去または未来)に移動ができるという。

 ただし、非常にめんどくさい次のようなルールがあった。

 1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない。

 2.過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない。

 3.過去に戻れる席には先客がいる。

  その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ。

 4.過去に戻っても、席を立って移動する事はできない。

 5.過去に戻れるのは、カップに注がれたコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。

 

  カランコロロン(喫茶店の入口のカウベルの音)

 店長代理の流が東京との電話から戻ると、カウンター席に座っていた函館大学に通う学生の松原菜々子が、

「流さんは東京に残らなくてよかったんですか」と、声をかけてきた。

 菜々子は、今日、流の亡くなった奥さんが娘に会うために、過去から東京の喫茶店(時間移動ができる都市伝説がある店)に来ることを聞いていた。だが、奥さんと14年振りに会えるチャンスだというのに、東京に行かず電話だけで済ませてしまうことを不思議に思っていたのだ。

 流は、「うん、まぁ」と、曖昧に答えて、カウンターの中へと入った。

 菜々子の隣には精神科医の村岡沙紀が坐っていた。菜々子と共にこの喫茶店の常連客である。

 さらに、菜々子が、「奥さんに会いたくないんですか」と尋ねると、

 流は、「俺じゃなくて娘に会いに来てるわけだし、俺には出会ってからの思い出があるんで………」と、言って逃げるように厨房に姿を消した。

(少しでも母と娘の二人きりの時間を大切にしてやりたい)といった気持なんだ。

 入れ替わりに厨房から現れたのは時田数である。数はこの喫茶店のウエイトレスだ。

「何問目までいきましたか」

 数はカウンターの中から、そう言って話題を変えた。

 沙紀が「24問目」と言って、本に書かれている内容を声を出して読んだ。

  「『もし、明日世界が終わるとしたら? 100の質問』

   第24問。

   あなたには今、最愛の男性、または女性がいます。

   もし、明日世界が終わるとしたら、あなたはどちらの行動をとりますか。

   ①とりあえずプロポーズする。

   ②意味がないのでプロポーズしない」

 沙紀は、「さ、どっち」と隣の菜々子に尋ねた。

 菜々子は、答えずに、先生はと問い返した。

「後悔して死ぬのは嫌だから、しちゃうかも」と答えた。

 菜々子は考え込み、「ちなみに数さんはどっちですか」と問う。

 数が、「私は………」と言ったとき、

  カランコロロン

 数が反射的に、「いらっしゃいませ」と、喫茶店の入口に声をかけた。

「ただいま」と、元気な声がひびいた。女の子だった。

 名は時田幸。数の娘で今年7歳になったばかり。父の名は新谷刻で写真家。世界各地の風景写真を撮るのが仕事で、年に数日しか戻って来ない。

「お帰り」と応えたのは、菜々子で、数は幸の後ろに控える青年に目配せした。

「おはようございます」

 青年は小野怜司。このアルバイト定員である。

「ちょうど、そこでばったり会って………」

 幸と一緒に入ってきた理由を、誰に聞かれたわけでもないのに説明して厨房に消えた。

 店員にいる菜々子と沙紀以外の客は、入口近くのテーブル席に座る黒服の老紳士と菜々子と同年配の女性のみである。その女性客は、開店からずっといるのだが、何をするわけでもなく、ただ窓の外を眺めているだけだった。

 この喫茶店の開店は、朝市などを訪ねる観光客に合わせて朝7時とずいぶん早い。

 幸が抱えていたトートバックをテーブルの上に置く。

 朝一番に図書館で本を借りてくるのが幸の休日の習慣になっていて、この日は、小学校は創立記念日で休みであった。

 幸は借りてきた本を嬉しそうにテーブルの上に並べた。

「虚数と整数の挑戦状」、「ピカソに学ぶ古典美術の争点」、「……」、「……」

 菜々子と沙紀は子供には難しい本だと思い、思わぬ衝撃を受ける。

 数は、「意味がわかってなく、文字を見てるのが好きなだけです」とホローした。

 幸は菜々子が持っている「もし、明日、…… 100の質問」という本に興味を示した。

「読んでみる?」と幸に本を渡す。

 幸は最初のページに戻して読み上げた。

                 

「『もし、明日、世界が終わるとしたら? 100の質問』

 第一問。

 あなたの眼の前には、今、世界の終わりが来ても一人だけ助かる部屋があります。

 もし、明日世界が終わるとしたら、あなたはどちらの行動をとりますか?

 ①入る。

 ②入らない。 」

 

 幸に、「さ、どっち?」と菜々子の声がひびいた。

 幸は、「うーん」と少し考え、「私は入らない」ときっぱりと言い切った。

 菜々子と沙紀は、「入る」とそっと答えていたので、菜々子は「なんで」と聞いた。

「だって、一人で生きていくっていうことは、一人で死ぬことと同じでしょう」

 菜々子も沙紀も言葉を失った。

 

「ごちそうさま」と言って、開店からいた女性客が立って出口に向かった。

 怜司から金額を聞いて、ショルダーバッグから財布をとり出した。そのとき、一枚の写真が床に落ちた。だが、女性は気づいていない。

 怜司からお釣りを受け取ると、女性は、

その子の言うとおりだわ。一人で生きなきゃいけないなら、死んだ方がましだった」と、独り言のように呟いて店を出た。

  カランコロロン

「ありがとう……、ございました」と、いっも元気な怜司の挨拶がさえない。

「死んだほうがましだった……って」と、首を傾げながら戻ってくる怜司に、数が、そうですねと言って、じっと店の入口を見つめていた。

 店の中央の柱時計を見た沙紀が、「おっと、もうこんな時間か……」と、言って立ち上がった。時計は、午前10時半を指している。

 出口のほうに行った沙紀は、とつぜん、踵を返し、数に向かってこう告げた。

「麗子さんが来たら、様子を見ててもらえる?」と言う。(第二話に関連)

 わかりましたと言って、数は頷いた。

  カランコロロン

 菜々子が、入口に落ちている写真に気づき、沙紀に声をかけた。しかし、沙紀は気づかずに出て行った。

 菜々子はレジ前に駆け寄り、床の写真を拾い上げ、数に差し出した。

 写っているのは、沙紀ではない若い女性と、同じ年頃の男性、そして、新生児らしき赤ん坊だった。赤ん坊は若い女性に抱かれている。それと、もう一人、若いときの時田ユカリ。

 

 ユカリは、この喫茶店の店長で、今現在、ここで働いている流の母である。そして、数の母・時田要の実の姉でもあった。

 ユカリは即行動の自由人で二月ほど前、この喫茶店を訪れたアメリカ人の少年と一緒に渡米してしまった。行方不明になった少年のお父さんを探すためである。

 突然、店主を失ったこの喫茶店には、アルバイトの怜司しか残っておらず、長期休業の予定であった。

 その頃、ちょうど東京に行く予定があった怜司は、流が働く喫茶店「フニクリフニクラ」に寄って、店を続けられないか相談した。

 事情を知った流は、勝手気ままな母の行動に責任を感じ、流の娘・ミキを一人東京に残して、店長代理として函館にやってきた。

 しかし、まだ問題があった。実は函館の喫茶店にも、「フニクリフニクラ」と同様に、過去に戻れるという席が存在する。

 流には、この時間移動をさせる能力がない。時間を移動するためのコーヒーを淹れることができるのは、時田家の血を引く、7歳以上の女性のみと決まっているからだ。現在、その能力があるのは、ユカリ、数、流の娘のミキ、数の娘の幸の4人。ただし、女の子を妊娠すると、その能力は、その女の子に引き継がれ消えてしまう。

 そのため、能力があるのは、ミキと幸だけとなるのだが、ミキは、時間移動によって過去からやってくる母と会うために東京に残っている必要があり、幸だけとなる。幸はまだ7歳なので、数が付き添いで函館に来て手伝うことになった。

 東京の店は、10数年来の常連客に二美子と五郎にミキの手伝いをお願いすることになった。

 そんなことから、流、数、幸の3人が来函したのだ。

 

「これ、朝からずっといた女の人のものじゃないですか」

 数も同じ意見で頷いた。

 菜々子が写真の裏側に書かれた文字に気づいた。

「 2030、 827、20:31 」 

 どう見ても今日の日付である。しかも、その数字の後には、「あなたに会えてよかった」と書いてあった。

(朝からいた女性が、ぜひ会いたいと心では思っていたので、それを書いたのだろう

 数は、(今夜、来る……)と思った。

 

   <瀬戸弥生は母親に会うために過去に戻る決心をした>」へ続く

 

 

 

 

 

 

 

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