下町ロケット・ヤタガラス
「あらすじ」
「第九章 戦場の聖譚曲」
-1-(財前から佃に的場の辞任情報が伝わる)
学会があるから上京すると、北海道農業大学の野木から連絡を受けたのは、9月上旬のある日のことであった。
人形町にある和食の店で顔を合わせる。野木とは、およそ二月ぶりてあった。
「今回の的場さんのやり方は酷すぎた。あそこまでやる必要はなかったんだ」
「同感だな。もっと我々の技術力を信じて欲しかったと思う」
野木はそう言いながら、足下のカバンの中から最新号の科学雑誌を引っ張り出した。
「月刊メカニカルサイエンス」。機械工学分野の権威ある専門誌だ。
―――自動走行制御システムの徹底比較、といったタイトルの記事が載っていた。
それは、編集部が「ランドクロウ」と「ダーウィン」のトラクターを借り、20もの項目で比較、点数化したもので、「ランドクロウ」が圧勝していた。さらに、両方のトラクターを各々実際に使っている農家や販売している農林協を取材したものであった。
野木はいった。「こんな形で自分の研究の評価が下されるなんて面白いじゃないか。僕の研究はいってみれば実学だ。実学であるのなら、農業に携わる人たちの評価を真摯に受け止めるべきだと思う。それこそが僕の研究に対する真の評価なんだ」
佃は心から同意しつつも、身の引き締まる思いであった。佃もまた、常に市場の評価にさらされている。必要がないものを作れば、あっという間に淘汰され、世間の荒波に消える運命にある。
ポケットの中で、佃のスマホが着信を告げたのはそのときだ。
クルマの騒音に、財前の言葉はきれぎれに聞こえた。「先ほど、弊社は緊急の記者会見を行い、的場俊一取締役の辞任を発表しました」
佃は言葉を失い、店内の野木を振り返った。
-2-(重田の的場への復讐の終焉)
帝国重工の緊急記者会見を伝えるニュース映像を重田は眺めている。
下請法違反の事実を全面的に認め、担当取締役として深々と頭を下げた的場の姿に、無数のフラッシュが焚かれる。画面で見る的場は、意思のない人形のようであった。
弱々しく許しを請う哀れな男の姿を見つめる重田は、これがオレの勝利なのか、と愕然としている。
こんな男への復讐のために、ひたすら怒りを燃やし、自らを鼓舞して来たのか。
ここには期待した歓喜も想像した達成感もない。あるのはただの虚しさだった。
-3-(的場の辞任が、伊丹の人生の節目になる)
伊丹は社長室にあるテレビで従業員たちと共に的場を見ていた。
かつて自分を裏切り、帝国重工を追い出した男ーーー。この男に対する憎悪のために、島津と決別し、ダイダロスの重田と手を結んだ。
だが、そこまで自分を駆り立てたものは何だったのかと、いま伊丹は考えた。
的場から受けた仕打ちへの怒りか。裏切られ騙されたことへの恨みか。無論それもあるだろう。だが、このとき、気づいたことがあった。
それは、自分が許せないのは的場ではなく、実は自分自身だったのではないかということだ。
―――会社なんか興すもんじゃない。カネに縛られるほど無様なことはない。
いまでも、この父の言葉はまざまざと伊丹の脳裏に蘇てくる。
小さな町工場を経営していた父は、自らの人生を顧みつつ、与え得る最大の教訓を伊丹に授けてくれた。
だが、父が与えてくれたその尊い教えに、伊丹は背いた。背かざるを得なかった―――的場のために。
そんな風にしか生きられなかったことを伊丹はずっと心のどこかで悔いていたのだ。
そしていまーーー。その男は―――無惨に倒れた。
人生の節目と呼べるものがあるとすれば、いまがまさにその瞬間に違いない。
そう思っているとき、
「社長、お電話です。ヤマタニの入間さんから」
アシスタントの坂本の声に、伊丹は目を開いた。
入間の声は重々しい響きを伴っていた。「『ダーウィン』のトラブル報告が多すぎるんだよ。トランスミッションに構造的な欠陥があるんじゃないか」
「トラブルについては把握しておりますが、現在、原因については確認中でして―――」
「だったらすぐに確認してくれないか」
電話の声に苛立ちが混じった。伊丹が最も怖れるひと言が吐き出されたのは、その直後である。
「こんなことは、言いたくないがね。場合によっては、リコールを検討するべきだと思う」
-4-(「ダーウィン」のトランスミッションの欠陥を解決する技術の特許が佃製作所に)
「どうだ。何かわかったか」
取引先から帰社した伊丹は、真っ先に社屋の二階にある小部屋に入った。
その小部屋のワークデスクで、先日から1台のトランスミッションが分解され、精査されている。
帝国重工「ランドクロウ」に搭載されている佃製トランスミッションの、リバースエンジニアリングだ。
「この遊星ギア、ウチのと比べてみてください」
並べてみせたのは、「ダーウィン」に搭載しているギアゴースト製トランスミッションである。
「同じ働きをする部品ですが、佃製作所のほうはかなり特殊な形状になってるんです。ギアの形状や周辺パーツにも工夫がある。この辺りに何かしら理由が隠されている気がします」
「要するにウチの構造だと、部品への負担が大き過ぎるということか。だとすれば、ウチの部品をこれと同じ様に修正することは可能か」
佃製作所の部品を指差して、伊丹が聞いたとき、
「おい、ちょっと待てよ」
氷室が声を荒げた。「あんたは、トラクターの故障をウチのミスだと認めるっていうのか」
「あんたは黙ってろ」
伊丹はついに鋭く言い放った。「あんたは、わからないんだろ。だったら、やってみるしかないだろうが。あんたは自分のプライドのことしか頭にないかもしれないが、こっちは会社の命運がかかってるんだ」
伊丹の剣幕に、氷室は震える唇で反論しようとしたが、言葉は出てこない。
「大至急、この部品の権利関係を調べてくれないか」
暫くして、深刻な表情の堀田が、「さっきの部品に関する特許が、すでに佃製作所により出願されているようです」と報告した。
-5-(伊丹がライセンス契約を佃に切願することになる)
伊丹の求めで、この日、「ダーウィン・プロジェクト」の主要メンバーが集まった。技術的な話になるので伊丹は堀田も連れてきている。
「トランスミッションの構造に問題があったとしても、欠陥というわけではないだろう」
重田が聞いた。そこが肝心なところだからだ。
「残念ですが、欠陥ではない、と言い切れる自信はありません」
堀田は続ける。「弊社でこの問題について鋭意検討してきましたが、いまだ独自の解決策を得るに至っておりません。いまのところ唯一の解決策は、似た構造をもつ佃製作所製トランスミッションに採用されている技術を取り入れることかと………」
「だけど、それには知財の網がかかっているわけでしょ。だったら、それに代わる発明をしてくれよ」
キーシンの戸川は簡単にいう。
「申し訳ないが、すぐには難しい。氷室も退職している」
伊丹は、続けて、「ヤマタニから、リコールを検討するようにいってきている」とも告げた。
「全てが順風満帆に進むビジネスなんかない」
会社を潰している重田の言葉は、重々しく響く。「とにかく、ここを乗り越らないことにはどうにもならない、何とかして佃製作所からライセンス契約を取り付けることだ」
返事の代わりに、伊丹はしばらく天井を仰いでいたが、絞り出すような声で、
「この件は私から佃社長に相談してみます」と告げた。
-6-(「ダーウィン」のトランスミッションは私の設計で、欠陥があることを島津が告げる)
「紆余曲折はありましたが、ようやく、本来の形に戻ったということですね」
ほっとした表情でそういったのは山崎である。
毎週水曜日の夕方開かれる佃製作所内の連絡会議だ。
的場俊一の辞任が伝えられたのは、三日前のこと。無人農業ロボット事業を統括する的場の後任として、宇宙航空本部長の水原重治が任命された。
その水原は直ちに、事業を取り仕切るプロジェクト・リーダーとして財前を指名し、現場の総指揮をとるように命じたのである。
財前が現場の陣頭に立つことで、日本の農業を救うという事業本来のの志を取り戻したといっていい。
会議の中で「ダーウィン」は故障が多いという話が出たとき、島津は難しい顔になって考えていた。
気になっていた佃が、会議の後、そのことを島津に聞いた。
「『ダーウィン』のトランスミッションって、ベースになっているのは私の設計なんですけど、あの設計には欠陥があるのです」
初めて聞く話であった。会議室に残っていた社員たちも一様に立ち止まり、島津の話に耳を傾けている。
「私がそれに気づいたのは佃製作所に来てからです。ウチのトラクターも途中で止まっちゃったことがあったでしょう。具体的な解決策を思いついたのは、そのあとです」
「あの特許申請がそれですか」
そう聞いたのは、唐木田だった。この特許については、役員会でも報告されている。
「その欠陥を持ったまま使い続けるとどうなるんだ」と佃が聞いた。
「ギアが変速できなくなる可能性があります。もし、私の最初の設計通りだと、部品に負担がかかり過ぎて、あるところまでいくと、変形したり破損したりするんじゃないかな」
「もし、それが事実なら、リコールが必要かもしれない。大変だ」
山崎が真剣な顔でいった。
ギアゴーストの伊丹から、佃の元に連絡があったのは、その翌日のことであった。
-7-(ライセンス契約を哀願する伊丹。しかし、佃は断る)
約束の時間に、伊丹は、単身、佃製作所にやってきた。
伊丹は、まず、佃をはじめ社員の皆さんに不愉快な思いをさせてしまい、申し訳なかったと心から詫びて、深々と頭を下げた。
「ダーウィン」のトラブルを説明し、伊丹は単刀直入に切り出した。
「弊社にはこのトラブルを解決するだけの技術力はありません。虫のよい話だとは重々承知しています。ですが、もう私どもには他に手段がありません。御社が特許申請しておられるこの技術を、私どもにも使わせていただけないでしょうか。何とぞお願いします」
「あんた、誰に向かって頼んでいるんです」
唐木田が声を怒らせた。「ウチはお宅のライバル企業ですよ。なんでライセンスを供与しなきゃならないんです」
「ずいぶん、調子のいいことをおっしゃいますね」
山崎がいった。「裁判で負けそうになったとき、誰が助けたんですか。一緒になってリバースエンジニアリングも手伝った我々をソデにしてダイダロスと提携したのは御社でしょう。生き残るためにそうしたとあなたはおっしゃいましたね。ウチとでは生き残れないと。ウチにだってね、プライドってものがあるんですよ」
伊丹は、どちらの言葉にも、「返す言葉もございません。本当に申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げるばかりだった。
「断りましょうよ、社長」
唐木田のひと言に伊丹はさっと青ざめた顔をあげる。
「そこを何とかお願いします。ライセンス料は、いくらでもお支払いします。ウチの儲けなんかなくていいと思っています」
「金銭の問題じゃありません」、と山崎が怒りに青ざめて言い放った。
「伊丹さん」
佃がようやく口を開いた。「人の痛みというのは、与えたほうは忘れても、与えられたほうは中々忘れないものです。我々は誠意あるビジネスを心かげてきたし、実際にそれを実施してきたつもりだ。下町のいいところは、そういう気持ちの通じ合う仕事ができるところなんじゃないのかい」
伊丹は俯き、唇を噛んだまま答えない。
「それに、あんたたちの『ダーウィン』は、下町の技術を世の中に知らしめたいというコンセプトだろう。だけど、それは本当に正しいんだろうか。ライセンス云々という話の前に、私が一番ひっかかっているのはそこだ」
佃は続ける。「道具というのは、自分の技をひけらかすために作るものじゃない。使う人に喜んでもらうために作るもんだ。なのに、あんたたちのビジョンにあるのは、自分のことばっかりじゃないか。下町の技術だの、町工場の意地だのといってるが、誰が作ろうと、使う人にとってそんなことは関係がない。本当に大切なことは道具を使う人に寄り添うことだ。あんたたちにその思いがあるのか」
あまりのことに、伊丹はただ惚(ほう)けたようになって、佃を見ている。
「その肝心なことすら分からず、自分たちのことしか考えてない連中に、ウチのライセンスを渡すわけにはいかない。顔を洗って出直してくるんだな」
もはや、伊丹から反論の言葉は出てこなかった。
「佃さんのおっしゃる通りです。失礼しました」と立ち上がり、「島津さんに伝えていただけませんか。オレが間違っていたと、すまなかったよ」と言い残すと、佃たちの前を辞去していった。
その翌日、伊丹から数回佃のスマホに電話があって、お会いしたいとの申し出があったが佃は断った。
その伊丹が、その翌日、突然アポなく訪ねてきた。しかし、佃は会うことを断った。
伊丹はその翌日も、さらにその翌日も諦めず佃を訪ねたが、どれだけ来ても同じだと断った。
-8-(佃たちの気持の変化)
秋晴れの拡がる田んぼでは、収穫の時期を控えた稲穂が黄金色の輝きを放っていた。今年も例年になく穫れそうだ、佃さんたちのおかげだと、殿村家では佃たちの来訪を心待ちにしていた。
そんなある日、帝国重工が新たに製品化したばかりの無人農業ロボットを見学するために、佃たち佃製作所のスタッフが殿村家を訪ねた。
コンバイン―――育った稲を刈り取り、収穫するための機械である。トラクターと同じく無人で動く農業ロボットだ。
その日、納車したばかりの「ランドクロウ・コンバイン」は、またしても父り正弘を感激させた。
ひと通りの作業を見学し終えたのは、午後4時過ぎのことだ。道路が混むからと、急ぎ殿村家をおいとました佃製作所の一行であるが、
「すまん、立花。ちょっと止めてくれ」
インターチェンジに向かう途中の農道を走っているときだった。
「おい、ヤマ。あれを見てみろ」
田んぼの真ん中に、1台の「ダーウィン」のトラクターが立ち往生している。
「例の故障じゃないですか」
動かなくなっているトラクターの傍らに、農家の30代半ばの男が立っていた。脇妻も立ち、途方にくれた表情で夫を見つめている。その傍らに、子供と思われる男の子と女の子が、そんな父と母を、心配そうに見上げていた。
立花が手伝って来ましょうかといったとき、農林協のロゴの入った車が来た。慌てた様子で男が降りて田んぼの中を小走りに近寄っていく。
故障の状況を説明しているのだろうと思われる農家の男と、頭を下げてひたすら謝る農林協の男の様子が見える。
どれくらい、それを眺めていただろうか。「もういいぞ。出してくれ」と佃がいい、再び動き出した。
佃はバンの中で一心に考えて続けている。やがて、
「『ダーウィン』を―――いやギアゴーストを見捨てるのは、さっきの農家のような人たちのことを見捨てるのと同じことかも知れないな」
誰にとも言った佃の言葉を、山崎や島津、軽部と立花、そしてアキが聞いている。
「オレたちの目的は、日本の農業を救うことだよな」
佃の独り言は続く。「だったら救ってやれないか、あの人たちを」
「救ってあげましょうよ。救うべきです」という山崎。
「見捨てるべきじゃないです」と島津がいう。
アキも軽部も賛成し、最後に運転席から立花が、「社長、お願いです。救っていただけませんか」と車を止めようとしている。
佃の腹も決まった。
-9-(「理念に基づく金儲け」の考えで、帝国重工はライセンス供与を認める)
「『ダーウィン・プロジェクト』に技術供与をするというのか」
藤間社長の眼光が水原と財前のふたりを射た。
「佃製作所の分析によりますと、同社で特許申請しているトランスミッション技術を供与しても、我々の『ランドクロウ』は、自動走行制御システム、エンジンおよびトランスミッション、その全てにおいて技術的優位に立っていると」
財前が差し出したのは、最近「月刊メカニカルサイエンス」誌に掲載された、「ランドクロウ」と「ダーウィン」の技術を詳細に比較検討した記事である。
その分析結果に目を通した藤間に、財前は続ける。
「宇宙航空部でも比較検討を行いましたが、ほぼ同様の結果を得ております。『ダーウィン・プロジェクト』に佃製作所のトランスミッション技術を使わせることで、我々の技術に対するユーザーの評価も高まるものと思われます」
「ライセンスを与えなかった場合、どうなる」
藤間の問いは単刀直入だ。
「『ダーウィン・プロジェクト』は行き詰まるでしょう。ですが、問題はそこにありません。『ダーウィン』はすでに千数百台も市場に出ております。それを購入した農家が問題なのです。『ダーウィン・プロジェクト』が破綻すれば、その農家が困ることになります。一般的なトラクターより高価な代金のローンが残っているのに、リコールもされず、代替機もない。多くの農家が切迫した状況に追い詰められるでしょう。看過ごすわけにはいきません」
「それはウチの責任か」
「いいえ違います。表面的にこれは、尻ぬぐいのようなものです。ですが、この判断は、我々の無人農業ロボット事業の理念に基づいています。日本の農業を救う、という理念です。我々は、そのために無人農業ロボット事業を立ち上げました。相手がライバル会社のユーザーであれ、窮地に陥っているものを見捨てることは理念に反します」
藤間から、「わかった。思うようにやってみろ」という言葉が出た。
それは、佃製作所が申し出た「ダーウィン・プロジェクト」へのライセンス供与について、藤間の決済が下りた瞬間であった。
藤間の前を辞去して廊下に出たとき、水原が、「お前、霞を食って生きて行けるのか」と問う。
「理念と金儲けは、必ずしも一致しませんが、理念がない金儲けは、ただの金儲けです。我が帝国重工のすべきことではありません」と答えた。
-10-(日本の農業を救うために、「ダーウィン」への救世主が現われる)
「ダーウィン・プロジェクト」に参加している300社以上の中小企業の経営者が急遽集められ、緊急会議が始まった。
マイクを持った伊丹は、「ダーウィンに起こっているトラブルの原因がトランスミッションにあることが判明し、その解決策を模索してきたが、有効な解決策を見いだせないまま、いまに至っております。そんな中、この不具合を解決できる技術が存在することがわかり、その技術を持っている会社に使用許可を求めましたものの、残念なことに、同意を得られませんでした。このような状況を踏まえ、『ダーウィン・プロジェクト』の方向性についてご意見をいただきたい」と説明し、謝罪した。
様々な声が会場から上がる中、会場に突然、佃が現れ、「私にお話させてください」と伊丹からマイクを受け取った。
佃は、まず、「ダーウィン」を窮地から救う切り札となる特許を有している会社だと明かし、自分たちの技術を守りたいという一念から、伊丹の申し出を断った経緯を語った。しかし、先日、「ダーウィン」のトラブルにより、困っている農家の人々の姿を目のあたりにしたことにより、その考えが変わったといったことを佃は続けた。
「困っている農家の人たちを見たとき、思い出したのです。帝国重工の無人農業ロボットの目標、理念とは、日本の農業を救うことだと。ならば、こうした方を救うのだって我々の仕事なんじゃないか。どこのトラクターを使っていようと関係ない。この方たちに喜んでもらうために、我々はできることをするべきではないか」と、
そして、「この考えに社員皆が賛成してくれたこと、帝国重工のプロジェクトリーダーである財前さんがすぐ賛成されて、社員の調整に尽力してくれたこと、また、プログラムを担当している北海道農業大学の野木も背中を押してくれたこと」を語り終えると、
「私たちの技術、どうか使って下さい。そして、『ダーウィン』を信じて購入した農家の方々を救っていただきたい。どうか、彼らの期待を裏切らないでください。私は、日本の農業の発展のために、喜んでライセンス契約に同意させていただきます」と言い切った。
「最終章」に続く