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スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

将棋大賞&必要な論理

2014-04-03 19:34:51 | 将棋トピック
 2013年度の将棋大賞の発表が1日にありました。
 最優秀棋士賞は森内俊之竜王・名人。名人防衛,竜王挑戦,奪取。七大タイトルのうち,上位のふたつを独占。対戦相手が現在の三強と目される残りのふたりなので,順当な選出といえるでしょう。2003年度以来10年ぶり2度目の最優秀棋士賞。
 優秀棋士賞は三強の残りふたりから羽生善治三冠。棋聖防衛,王位防衛,王座防衛,王将挑戦,A級順位戦優勝,朝日杯将棋オープン優勝。渡辺二冠との比較ですが,タイトル数が多く,王将戦は負けたものの,棋聖戦と朝日杯で勝っていますので,これも順当といえるように思います。このカテゴリーでは2006年度2012年度に受賞歴があり,2年連続3度目。記録部門の最多対局賞と最多勝利賞も受賞。
 敢闘賞は郷田真隆九段。挑戦者決定戦で3敗というのは,このクラスの棋士としては確たる実績とはいえないでしょうが,最後にNHK杯を優勝。この点が評価の最大のポイントとなったものだと思います。現行制度になったのは2005年度からで,以降だと2011年度以来2年ぶり2度目の敢闘賞。
 新人賞は大石直嗣六段。C級2組順位戦で全勝。しかしNHK杯で準決勝まで進出し,途中で羽生三冠を破った点がこの評価に繋がったものと推測します。
 ほかの記録部門は,勝率1位賞が村山慈明七段,連勝賞は永瀬拓矢六段。
 最優秀女流棋士賞は里見香奈女王・女流名人・女流王座。女王奪取,女流王座挑戦,奪取,女流名人防衛。こちらは三大タイトル総なめですから当然でしょう。2009年度,2010年度,2011年度,2012年度に続き5年連続5度目。
 女流棋士賞は甲斐智美女流二冠。女流王位奪取。倉敷藤花挑戦,奪取。複数のタイトルを獲得しているのでこれも自然。2010年度以来3年ぶり2度目。
 女流最多対局賞は香川愛生女流王将でした。
 升田幸三賞は松尾歩七段。横歩取り△5二玉型に最脚光をあてたことが評価の対象。
 名局賞は第61期王座戦五番勝負第四局の千日手指し直し局で,同部門の特別賞がA級順位戦最終局の三浦・久保戦。後者の将棋は囲碁将棋チャンネルの中継で観戦していましたが,一局の将棋であんなに遅い時間になったというだけで驚きです。

 原因と媒介というふたつの内在性に,何らかの関連性があるとみなすのであれば,当然のことながら今度はそれを正当化するような論理が構築されなければなりません。延長の属性の場合でいうなら,延長の属性が個々の物体に対して内在的原因でありかつ最近原因であるということと,延長の属性の間接無限様態である不変の形相を有する全宇宙が,内在的に媒介することによって,個々の物体が生起するということの間の,整合性を構築するような論理が必要であるということです。
 僕は朝倉流の論証を用いることによって,不変の形相を有する全宇宙の媒介によって諸物体が生起するということの意味を示しました。この点については,必ずしも朝倉流の論証を経ずとも帰結するとしておきます。というのは,諸々の物体がその内部で生成したり変化したり消滅したりしても,それを全宇宙という視点からみた場合には,その形相にも本性にも何らの変化ももたらされないということは,僕が部屋の内部でどんな行動をしようと,部屋の現実的本性も現実的形相も変化しないということと同様の過程で証明が可能であるからです。したがって運動と静止という延長の属性の直接無限様態から,全宇宙の存在が必然的に帰結するなら,その全宇宙の存在というものが不変の形相を有するということは,帰結しているといえるからです。ただそれは,全宇宙の存在が朝倉流の論証を検証する過程において,演繹的に帰結したのに対して,同じ全宇宙の存在が,それ以前には無限に多くの物体が存在しなければならないということから帰納的に帰結していたという相違があるだけだといえます。
 整合性を保つ論理の構築のための最大の問題点の所在は,延長の属性に対して内在的であるということと,間接無限様態に対して内在的であるということの間には,ある決定的な亀裂があるように思われるという点にあります。延長の属性は翻訳すれば物体的実体なのであり,間接無限様態は無限であるとはいっても実体ではなく様態だからです。つまり,実体に内在的であるということと,様態に内在的であるということを,同時に主張できるような論理が必要なのです。
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順位戦回顧&第一部定理一三系

2014-03-15 19:52:43 | 将棋トピック
 第72期順位戦は13日に全日程が終了しました。
 A級展望で最有力と評した羽生善治三冠が優勝し,名人戦の挑戦者に。終ってみれば2位に2勝の差をつけ,今年度も悠々のトップでした。屋敷伸之九段と谷川浩司九段が降級。
                         
 B級1組は展望で,前期は不甲斐ない成績であったと書いた広瀬章人七段と阿久津主税七段が揃って昇級し,八段に昇段。A級でどこまでやれるのか楽しみです。最注目だった豊島将之七段は頭はねの3位でしたが,すぐに昇級できそうです。A級経験者の高橋道雄九段と鈴木大介八段が降級。
 B級2組は有望株とした4人のうちのふたり,佐藤天彦七段と村山慈明六段が昇級で村山六段は七段昇段。この両者もいずれはA級を狙える棋士だと思います。
 C級1組は名前を出さなかった佐々木慎六段と糸谷哲郎六段が昇級。もっとも,若手精鋭の中には入ります。期待した阿部健治郎五段の負け越しは意外でしたし,残念でした。
 C級2組は澤田真吾五段,佐々木勇気四段,大石直嗣六段が昇級し,名前を出した佐々木四段は五段昇段。あとのふたりは同門で,やや変わった将棋を指す印象があり,この将棋でどこまでいくのかは楽しみです。

 第一部定理一三には系があります。
 「これらの帰結として,いかなる実体も,したがってまたいかなる物体的実体も,それが実体である限り,分割されないことになる」。
 『エチカ』の多くの系は,この帰結として,という文章から始まっています。ところがこの系はそうではなく,これらの帰結として,といわれています。この点に関しては岩波文庫版の訳者である畠中尚志が注釈しています。それによれば,この系は第一部定理一三からだけでなく,第一部定理一二からの帰結事項でもあるということです。スピノザが非意図的に,これらの帰結,という筈がないと僕は考えます。するとスピノザ自身の定理や系の配置の意図から察して,畠中が注釈している内容は妥当であろうと僕は解します。
 第一部定理一三証明のうちに,スピノザの戦略性があるかもしれないと僕がいったのは,その訴訟過程により,この系が帰結するようになっているからです。第一部定理一三は絶対に無限な実体をその考察対象に据えていますが,絶対に無限ではなく,自己の類において無限である実体を同じような対象と据えたとしても,成立するような内容となっているからです。
 次に,この系では物体的実体といわれていますが,自己の類において無限であると考えられるような物体的実体が実在するということをスピノザが認めているわけではありません。この直後の第一部定理一四は,実在する実体が神だけであるということを主張しているからです。よってここで物体的実体といわれているのは,いわば名目的な実体なのであり,実在的に解そうとするならば,この物体的実体は神であると理解しなければなりません。ただしこのことは第一部定理一四に進んでから『エチカ』では明らかになるという順序になっているのは事実です。
 僕が物体的実体というのを,神の延長の属性と翻訳しておいたのは,この部分で何らかの混乱を引き起こさないように用心しておくためでした。ただし,属性attributaに関してそれが分割可能であるかどうかを問うことは,デカルトにとってもスピノザにとっても問題とはなっていません。スピノザがここで物体的実体といったのは,明らかにデカルトの哲学を射程に入れていたからだといえるでしょう。
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羽生 「最善手」を見つけ出す思考法&差異の所在

2014-03-11 19:11:32 | 将棋トピック
 将棋関係の書籍も紹介していきましょう。ただ,僕は現在は指しませんので,入門書や詰将棋も含め,戦術に関する本は読みません。なのでそういった類の書籍の紹介はありません。また,このシリーズは敬称略でいきます。第1回は保坂和志の『羽生 「最善手」を見つけ出す思考法』です。
                         
 光文社知恵の森文庫の1冊。初版の発行は2007年6月。僕が所有しているのは翌月発行の第3刷。ただしこの本は,1997年に朝日出版社から発行された『羽生 21世紀の将棋』を文庫化したもの。それがすべて収録されている上に,文庫化にあたってのまえがきと茂木健一郎の解説も収録されていて,価格はこちらの方が安価です。まだ手にされていない方は,こちらの文庫本を購入することをお勧めします。
                         
 保坂の手法は,羽生の自戦記をテクストとして読解することによって,羽生の将棋観を明らかにすることです。ですから指し手の解説などはありません。文芸評論の方法に近いものであり,将棋関連の書籍としては際立った異色作といえるでしょう。解説の茂木は,これは「将棋の本」ではないと断言しているくらいです。
 保坂が注目する大きな点は,羽生の自戦記は事実の積み重ね,いい換えれば実際に指された手の集積を中継しているようではないということと,一読した限りでは羽生自身が先手か後手かが分かりにくいということです。保坂が出す結論についてはここでは明示しませんが,これらを手掛かりとして,羽生に独特といえる将棋観,あるいは勝負観を帰結させています。
 保坂の結論が正しいのかどうかはだれにも,おそらく羽生にすら分からないのではないかと僕は思います。ただ,シリーズの第一弾にこの本を選んだのは,少なくとも僕が読んだ将棋関連の書籍の中で,最も面白かったものは何かと問われたならば,迷わずにこの本をあげることができるようなものだからです。

 スピノザがデカルトの神の定義を認めないように,デカルトもまたスピノザの神の定義である第一部定義六を認めないであろうと僕は判断します。そしてデカルトがスピノザの神の定義を認めないということと,スピノザがデカルトの神の定義を認めないということの間には,意味の上で大きな差異があるだろうとも判断します。スピノザはただ,神が最高に完全であるということは,神の定義の要件を満たしていないというだけで,それが真理ではないとはいいません。しかしデカルトは,神が絶対に無限であるということは,認められないであろう,いい換えればそれを虚偽ないしは誤謬とみなすであろうと思われるからです。
 神が絶対に無限であるとしたら,少なくとも思惟によって認識し得る属性に関しては,そのすべてを神に帰す必要が生じます。ある特定の属性は神の本性を構成しないとするならば,そのことによって神が絶対に無限であることは不可能になるからです。そしてデカルトは物体的実体が存在するということは認めました。それはスピノザの哲学に翻訳したならば,延長の属性が存在することを認めているのと同じことだと僕は理解します。しかしデカルトは,物体は少なくとも思惟によって分割可能であるから,物体的実体は完全性を欠くものであり,ゆえにそれは神の本性を構成しないと考えました。つまり延長の属性は神の属性ではないと主張しているのと同じことであり,そうであるなら神が絶対に無限であるということはないということになります。
 一方,スピノザは絶対に無限であるという本性から最高に完全であるという特質が帰結すると考えているのですから,神が最高に完全であるためには,その前提として神が絶対に無限である必要があると主張していることになります。そしてそのためには,延長の属性が神の本性を構成しなければならないのです。
 これでデカルトとスピノザの差異の所在がよく分かります。デカルトは神が最高に完全であるためには,延長の属性が神の本性を構成してはならないと考えました。スピノザは逆に,神が最高に完全であるために,延長の属性が神の本性を構成しなければならないと考えたのです。
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ごきげん中飛車&延長の属性の三様態

2014-03-02 19:00:21 | 将棋トピック
 ごきげん中飛車のリンクのための記事を掲載してから6年以上。現在は2010年度の将棋大賞の升田幸三賞を受賞した指し方がほとんどとなり,リンクする意味がかなり薄れました。今後の利便性向上のため,新記事を作成しておきます。
 今回の基本図は6手目。先手の☗2五歩に後手が☖5二飛と回った局面。
                         
 ①超速銀。基本図から☗4八銀。以下,☖5五歩☗6八玉☖3三角☗3六歩と進みます。
                         
 1図からは☖4二銀か☖6二玉が主流。前者を①-A,後者を①-Bとし,それ以外の手であれば単に①と表記します。
 ②丸山ワクチン。基本図から☗2二角成☖同銀。
                         
 ここで☗9六歩と突くのが佐藤流といわれる指し方。その場合は佐藤流とし,それ以外の手であれば単に②と表記します。
 ③超急戦。基本図で☗5八金右と上がると先手は超急戦を目指したことになります。☖5五歩☗2四歩☖同歩☗同飛のときに☖5六歩でこの戦型が確定。
                         
 後手は☖5五歩と突くところと☖5六歩と突くところでは変化が可能。その場合は③の変化として手順を示します。
 今はこれ以外の手順は減少しました。ここ3年以内に記事にした対局では④☗7八金と⑤☗6八玉があっただけ。一応これらは記号をつけておき,それ以外の手はすべてその他ということにします。

 2017年3月7日の追記です。
 上述の変化のうち,⑤の☗6八玉は☖5五歩☗4八銀☖3三角☗3六歩と進むと1図に合流します。そこでこの変化になった場合は⑤①と表記し,☖4二銀なら⑤①-A,☖6二玉なら⑤①-Bと表記することにします。

 第二部定義一を,延長の属性Extensionis attributumの個物res singularisとは物体corpusであるという意味に僕は解します。厳密にいうとこの定義Definitioは明らかに第一部定理二五系を援用しています。スピノザ自身もその系Corollariumの参照を促しています。その系でいわれているのは,ふたつの個物のうちres particularisの方です。ですから第二部定義一の意味としては,物体とは延長の属性のres particularisであると解しておくのが本来的には妥当ですし,何より安全でしょう。しかし僕がres particularisとres singularisに同一の訳を与えて構わないと考えていることは,以前に説明しました。よってここでもこの定義は,物体とは延長の属性のres singularisであると解することにします。
 これで,延長の属性に関しては,スピノザは直接無限様態,間接無限様態,そして個物のすべてが何であるかを明らかにしていることになります。繰り返しとなりますが,直接無限様態から順に,運動motusと静止quies,不変の形相formaを有するものとしての全宇宙totius Universi,そして各々の物体です。思惟の属性Cogitationis attributumの場合,間接無限様態を明らかにしていないといえる面が残るおそれがあるので,これ以降はこの延長の属性の場合を対象として考察を進めていきましょう。
 延長の属性の直接無限様態,間接無限様態,個物が何であるのかということのうちに、すでに僕たちの一般常識を覆してしまうかもしれないようなことが含まれています。少なくとも僕にとってはそうでした。延長の属性は,人間が認識できるものとしては、スピノザがいうところの自然Naturaのすべてに該当します。つまりこれはスピノザがその意味での自然というものを,原理的にどのように理解していたのかということと関係してきます。したがってそのことを最初によく理解しておかなければ,単なる誤解に終ってしまうだけでしょう。
 そこで,スピノザがどういう前提で,スピノザ自身がいう意味での,またおそらくクレーファーWilhelmus Nicolaas Antonius Kleverが解していたような意味での自然を把握していたかということの探求から開始します。そしてそのためには,一般的な常識を,とりあえず棚上げしておかなければなりません。
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竜王戦展望&絶対的と一定

2013-06-18 19:02:50 | 将棋トピック
 第26期竜王戦は昨日,4組の決勝があり,挑戦者決定トーナメントの出場者が出揃いました。簡単に展望しておきます。
 今期はいわゆる羽生世代のビッグ3が1組で1位から3位までを独占しました。このために近年になく重量級のメンバーとなった印象があります。ただでさえ制度の変更後は1組が有利になっていますので,常識的にはこの3人のうちだれかが挑戦権を獲得するとみるのが妥当なのではないでしょうか。たとえば2組で2位になった豊島将之七段の位置ですと,まず谷川浩司九段と対戦。勝ったとして待っているのは森内俊之九段。ここを撃破しても準決勝は羽生善治三冠と当たる可能性があり,決定戦まで進んでも佐藤康光九段や郷田真隆九段戦を残す可能性が大であるということで,挑戦まで辿りつくのがいかに大変なことであるかが分かろうというものです。
 もちろんリーグ戦ではなく,トーナメントの一発勝負ですから,何が起こるか予断を許さない面は大きいとはいえます。それでも大波乱の結果に終るという可能性は,限りなく低いと思えます。
 今期も中継があるでしょうから,何局かは紹介していく予定でいます。

 ここでは先に,次の点に注意をしておいてください。
 僕は,神の本性あるいは神のある属性の変状に関して,絶対的な仕方での変状と一定の仕方での変状というのが対義語的関係に該当するということを論証しました。このとき,各々の仕方の内容というのは,当然ながら異なっています。これは,それが異なっているから一方が絶対的な仕方と形容され,他方は一定の仕方と形容され得るのだということから明らかだといえます。つまり神の属性の変状に限らずとも,絶対的な仕方と一定の仕方のふたつの仕方があるというならば,それは異なった仕方としてあるのでなければなりません。これを否定するのは,絶対的な仕方と一定の仕方は同一の仕方であると主張しているのと同じことですから,それが不条理であるということに関して,これ以上の説明は不要でしょう。
 このとき,実際に対義語的関係をなしているのは,これら各々の仕方の内容であると把握されなければなりません。いい換えれば,絶対的な仕方の観念と,一定の仕方の観念が対義語的関係を構築するということになります。そしてもしも一般的に,あらゆる仕方というのは絶対的な仕方と一定の仕方のふたつしかなく,すべての仕方はそのどちらかの仕方の一方にのみ属するという,これは仮定としても無茶な仮定ですが,そういう仮定をしたとするなら,このことは一般的に,つまり神の属性の変状の場合に限定せずに,絶対的な仕方と一定の仕方は対義語的関係に該当するということになります。
 ただし,仕方というのは,それ自体が何か内容を有するというものではありません。それは絶対的な仕方とか,一定の仕方とかいわれることによって初めて何らかの内容を有します。いい換えればそれが観念として把握される場合に,観念対象ideatumを有するということになるのです。これは単に仕方といわれるだけでは,それがどのような仕方であるかを知ることは不可能であるということをいっているようなものですから,やはりきわめて当然のことといって差し支えないでしょう。
 つまり,実質的に対義語関係をなす,というかなしているのは,絶対的と一定であるということが,このことから帰結します。
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順位戦展望&ふたつの個物

2013-06-01 19:08:49 | 将棋トピック
 第71期名人戦は森内俊之名人が羽生善治三冠の挑戦を4勝1敗で一蹴。この結果,第72期順位戦A級1位は前年と同様に羽生三冠となり,全参加メンバーが決定。恒例の展望です。
 A級。名人戦での森内名人と同様,順位戦での羽生三冠は異常な強さを発揮していますので,やはり最有力ではあるのでしょう。ただ,そろそろ渡辺明竜王にこのクラスでも真価を発揮してほしいというのが個人的な希望です。
 B級1組。最注目は昇級してきた豊島将之七段。このクラスをすぐに抜けることができれば,A級でも上位の争いが期待できるのではないかと思います。前期に期待していた広瀬章人七段と阿久津主税七段は,厳しくいえば不甲斐ない成績に終りましたが,頑張ってほしいという気持ちは今期も同様です。
 B級2組。一筋縄ではいかないクラス。佐藤天彦七段,戸辺誠六段,稲葉陽六段,村山慈明六段が有望株ですが,ベテランの力も侮れないように思います。
 C級1組。このクラスも若手精鋭が何人かいますが,個人的に最も期待しているのは阿部健治郎五段です。そしてぜひとも注目しなければならないのは斎藤慎太郎五段。このクラスもすぐに突破するようであれば,将来性はかなり高いといえるのではないでしょうか。
 C級2組。一時期に比べますと若手強豪と目される棋士が上に抜けていったように思います。昇級させてあげたいと思うのは横山泰明六段。順位が上位ですから昇級争いには絡んでくるでしょう。ほかに順位上位者の中では佐々木勇気四段や永瀬拓矢五段でしょうか。

 第一部定理二六第一部定理二七とを,このような仕方で読解することに対しては,次のような反論が生じるかもしれません。
 第一部定理二五系は,個物について言及されています。これに対して,第一部定理二六および第一部定理二七では,個物とはいわれずに単に物といわれています。このゆえに,第一部定理二五系を通して第一部定理二六と第一部定理二七を読解するということは,いかにそれらがその直後に言及されているのだとしても,問題があるのではないかという反論です。
 スピノザの哲学において個物というのは,ある特別なことばであるといえると思います。ですから,スピノザが個物という場合と,単に物という場合を同一視することはできないという考え方には僕自身も同意します。したがって予想されるこの反論に対しては,弁明しておく必要があるでしょう。
 個物というのは,もっと後,第二部定義七においてようやく定義されることになります。そこでスピノザが定義しているのは,res singularisです。これは直訳すれば個別的事物とでもいうべきものです。僕は日本語としての個物ということばがいつだれによって発明されたのかは知りません。ただ,個物というのが,この個別的事物を簡略化したことばであるのは間違いないだろうと思います。
 これに対して,第一部定理二五系で言及されている個物というのは,res particularisであり,ラテン語では異なっているのです。こちらはもしも直訳するのであれば,特殊的事物ということになると思います。
 スピノザがこのような使い分けを行った理由のひとつとして,res singularisについては後に定義する予定があったので,この段階ではまだそのことばを用いることを躊躇し,res particularisといったということは考えられないわけではありません。ただし,この主張には正当性を欠くような要素もあります。第一部定理二八は個物の無限連鎖について言及していますが,そのときにはスピノザは,複数形への変化というのを無視すればres singularisの方を使っているからです。これも第二部定義七以前であるのは同様なのです。
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将棋大賞&新しいブリッジ

2013-04-02 19:10:43 | 将棋トピック
 昨日,昨年度の将棋大賞が決定しました。
                         
 最優秀棋士賞は渡辺明竜王。竜王防衛,王将挑戦,奪取,棋王挑戦,奪取で三冠を達成。朝日杯将棋オープンNHK杯でふたつの棋戦も制していて,当然の受賞。MVPは初受賞となりました。
                              
 優秀棋士賞は羽生善治三冠。こちらは棋聖防衛,王位防衛,王座挑戦,奪取。A級順位戦で優勝して名人挑戦権獲得。銀河戦でも優勝しました。渡辺竜王と遜色ない成績で,こちらも当然の受賞でしょう。ずっとMVPだったこともあり,この部門は2006年度以来2回目。同時に特別賞にも選出され,こちらは1995年度以来の2回目。記録部門では最多対局賞が2011年度から2年連続11回目,最多勝利賞は2010年度,2011年度から3年連続で13回目。
 敢闘賞は中村太地六段。棋聖挑戦が評価されたもの。この年齢でのタイトル戦登場は確かに立派です。初受賞。記録部門では連勝賞も獲得。昨年度の勝率1位賞に続く記録部門での受賞です。
 新人賞は永瀬拓矢五段。加古川青流戦新人王戦で優勝ですから,この部門はこの人以外にありません。こちらも初受賞。記録部門の勝率1位賞にも輝きました。こちらは昨年度は連勝賞で同じように2年連続での記録部門受賞。
 最優秀女流棋士賞は里見香奈女流名人。女流王位奪取,女流王将防衛,倉敷藤花防衛,女流名人位防衛,マイナビ女子オープン挑戦。文句なし。昨年度は5敗しかしておらず,そのうち3敗は番勝負内ですから,実質は2敗しかしていないも同然です。2009年度,2010年度,2011年度も受賞していて,4年連続4回目。
 女流棋士賞は上田初美女王。女王防衛と女流名人位挑戦。女流最強戦優勝。実力的に里見名人に迫っている感もあり,明日からのマイナビは非常に楽しみです。初受賞。
 女流最多対局賞はLPSAの中井広恵女流六段でした。
 升田幸三賞は角交換四間飛車の藤井猛九段。1996年度に藤井システムで受賞していて2度目。この部門で2度の受賞は大いに称えられるべきものと思います。
 名局賞は王座戦の第四局。これは千日手局込みでしょう。名局賞特別賞に女流名人位戦第五局が選ばれました。女流の将棋が選出されるのは素晴らしいことだと思います。

 歯科検診であれこのときのような治療であれ,僕はもう何度もI歯科には通っています。その中でもこのときほど滞在したのは初めてでした。治療に要した時間は2時間弱。なお,ここで装着した仮の歯というのは,ブリッジの中の虫歯を治療した歯のことだけではありません。ブリッジを架けていた3本の歯のすべてです。それぞれに微調整を施しましたので,これほどの時間が必要になったものでしょう。帰宅したのは午後1時40分頃。この日の午後はまた本牧まで出向く必要がありましたが,それには支障は来しませんでした。
 翌2日の土曜日は妹の土曜出勤。この日はチョコレートを作りました。おそらくバレンタインデーに向けてということだったのでしょう。バレンタインデーも一応はキリスト教の行事であるとはいえ,施設はキリスト教系法人ですから,このような作業を行うのはむしろ自然である気もします。そして3日の日曜日はピアノレッスン。この日も午後1時からでした。
 さらに翌日の4日の月曜ですが,この日は妹は作業所を休みました。といっても具合が悪くなったわけではありません。こども医療センターの通院の日だったからです。この日は午後1時半の予約。僕はこの日は長者町に出ていて,午後3時半過ぎにはもう家に帰ってきたのですが,そのときにはすでにと妹は帰っていました。
 この週末,10日の日曜にはふたりは美容院に行っています。
 12日の火曜日にI歯科へ。歯科の通院は金曜に行くことが多かったのですが,ブリッジはこの週のうちには架けられることになっていて,なるべく早い方がよいということでしたので,僕の都合がついた火曜に予約しておいたもの。時間は午前9時でした。この日も午後は長者町に出向くことになっていましたので,僕としても早い方がよかったのです。
 まず嵌めておいた仮の歯を外し,それ以前に塗り固めたまま残っていた余分なセメントを除去。ここまでは歯科助手による作業で,そこからはI先生自身がブリッジを架けました。このときにも微調整が必要となりましたが,仮の歯のときほどには時間は掛かりませんでした。帰宅したのは10時15分くらいでしたから,概ね30分程度の滞在で済んだという計算になります。
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順位戦回顧&カラオケ

2013-03-15 19:54:33 | 将棋トピック
 昨日のB級1組13回戦で,今期の順位戦は閉幕しました。事前に展望しましたので,回顧します。
                         
 A級は8勝1敗で羽生善治三冠が優勝して名人挑戦権獲得。連勝記録こそ7回戦の逆転負けで止まったものの,大一番となった次の8回戦は双方の錯覚による逆転勝ち。1回戦と5回戦も負けの局面がありましたが,終ってみれば安定した結果を残しました。名前をあげた渡辺明竜王は今期は各棋戦で大活躍でしたが,それに比較すると5勝4敗はやや寂しい成績だったといえるかもしれません。高橋道雄九段と橋本崇載八段が降級し,深浦康市九段は初の残留なりました。
 B級1組は11勝1敗の行方尚史八段と10勝2敗の久保利明九段が3位以下に差をつけての昇級。共に復帰ですので,それ相応の力はあったということになります。阿久津主税七段の4勝8敗,広瀬章人七段の6勝6敗は不甲斐ない成績という印象で,来期の奮起に期待。丸山忠久九段は6勝6敗の指し分けでした。井上慶太九段と中田宏樹八段が降級。
 B級2組は9勝1敗の藤井猛九段と豊島将之七段が昇級。3人のうちひとりは上がりましたのでよしとします。藤井九段もさすがにこのクラスでは力が違ったようです。
 C級1組は9勝1敗の稲葉陽六段と村山慈明六段の昇級。中村太地六段は7勝3敗でした。村山六段も若手強豪のひとりですから,昇級候補であったのに変わりはありません。
 C級2組は9勝1敗で大本命の菅井竜也五段,阪口悟五段,初参加だった斎藤慎太郎四段が昇級し,斎藤四段は五段昇段。新参加で昇級は立派ですし,4月に二十歳を迎えるという年齢から,将来がかなり有望でしょう。注目の伊藤真吾四段は5勝5敗の指し分け。まずまずといえるのかもしれません。

 11月17日の土曜日はガイドヘルパーを依頼。この日は本牧でカラオケでした。
 以前に妹は娯楽としてはボーリングとカラオケを好むと書いたことがあります。ただ,僕は妹とカラオケに行ったという経験はないので,妹の歌がどの程度のものなのかということは分かりません。しかし,妹がどんな歌を歌うのかということなら分かります。基本的には演歌を代表とするような歌謡曲が中心で,そうでなければ童謡です。これは妹がマイペースな人間であるということと関係しています。つまり妹は,あまりテンポが早いポップスのような楽曲ですと,演奏に歌詞が間に合わないのです。
 このために,妹は,歌謡曲を中心とする歌番組は,テレビでもよく視ています。たとえばNHK歌謡コンサートとかBS日本のうた,木曜8時のコンサートといった番組です。これらは単に視ているというだけでなく,歌手が歌う際には画面に歌詞が出ますから,それに合わせて口ずさむことがほとんどです。ただし妹はそう多くの漢字を読めるわけではありませんから,そこは飛ばしてしまいます。ポップスなどでは英語が入ることも多いですが,こちらになると妹はまったく読めませんので,妹が歌謡曲の方を好むのには,これも一因を形成しているといってよいでしょう。なお,中には知っている,つまり歌詞を覚えている曲というのもありますから,そうした場合は漢字には関係なく歌うことができます。おそらくカラオケで歌うのはそうした曲でしょう。
 ダウン症とはいえ,妹は突飛な行動を取るということはまずありません。ですから,自宅にひとりで放置しておくというのは危険が伴いますが,だからといってずっと監視していなければならないというわけではありません。その中でもとくに,こうした番組を視ている間というのはそれにかなりの程度まで集中していますから,ほとんど目を離していても大丈夫なのです。
 その2日後,19日の月曜日がこども医療センター遺伝科の通院。この日も作業所は休ませ,が連れていきました。この日は予約時間が13時半で,やはりこのくらいの時間ですと帰りも遅くはならず,家族としても楽です。
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順位戦展望&クレジットカード

2012-06-15 18:43:58 | 将棋トピック
 第70期名人戦は一昨日までの第六局を制した森内俊之名人が4勝2敗で防衛。羽生善治二冠が今期もA級で戦うことになりました。例年同様,クラス別に展望しておきます。
 A級は昨日のオープニングカードで佐藤康光王将が高橋道雄九段を降してスタート。今期こそは渡辺明竜王に期待したいです。僕は現在の将棋界の第一人者は渡辺竜王であるという考えですが,衆目の一致した見解とはいえないかと思います。挑戦して名人を奪取し,僕の考えが正しいことを証明してほしいという願望込みの予想です。深浦康市九段の残留がなるかどうかも個人的関心のひとつです。
 B級1組は昨日が初戦。ここは年齢の若いふたり,阿久津主税七段と広瀬章人七段に期待。初戦は明暗を分ける形になりましたが,ここは局数も多く,先の長い戦いです。前々期に降級した佐藤王将はあっさりとA級に復帰,前期に降級した藤井猛九段は連続降級。丸山忠久九段の現在の力はこの両者の中間に位置すると思いますので,丸山九段がどういった成績を残すかは,現在のA級とB級1組のレベル差の指標となるように思われ,その点にも注目しています。
 B級2組は21日が開幕。戸辺誠六段,佐藤天彦七段,豊島将之七段が期待の棋士で,3人のうち2人は難しいかもしれませんが,1人は上がってほしいものです。
 C級1組は12日に初戦を消化。ここは若手強豪が揃った屈指の激戦区。中でも稲葉陽六段と中村太地六段の名前をあげておくことにしましょう。
 C級2組は19日に開幕。前期は全勝が3人出たため,1敗で昇級を逃した菅井竜也五段が大本命でしょう。個人的に注目しているのはフリークラスを脱してきた伊藤真吾四段です。

 前回のESTAの申請も僕が代行したわけですから,僕にとっては2度めのことであり,初体験ではありません。前回と同様にアメリカ大使館のホームページに行って,試しにと妹のそれまでの登録番号を入力してみましたが,確かに両方とも期限が切れていると表示されました。なので新たに申請しようとしたのですが,ここで問題が生じました。
 前にESTAを申請したとき,これは無料でした。ところが今回は手数料が必要だったのです。いい換えれば,ESTAの申請には手数料が必須となっていて,それ以前に申請されたESTAに関しては,おそらくすべてが失効していたのだろうと思います。たぶん母と妹のESTAが失効していたのも,無料の時代に申請されたものであったからで,有効期限が切れてしまったということではなかったのだろうと思います。
 手数料自体は高額なものではありません。そもそも渡米するには渡航費用が必要なわけで,それを支払える人にとっては困ってしまうような金額ではありません。だからそれは問題ではありませんでした。では何が問題となったのかといえば,その支払いは指定されたカードで行わなければならないということでした。
 実は母はクレジットカードを持っていませんでした。もちろん妹にもありません。そして僕は,真っ当な社会生活という観点からいうなら,かなり早い段階でドロップアウトした身ですので,クレジットカードは作れずにいたのです。つまり僕も母も,電子マネーは使っている,とくに僕は毎日のように使用していますが,クレジットカードに関しては持っていなかったのです。したがってこの手数料は,金額としてはまったく問題とはならなかったのですが,この時点では支払うことが不可能でした。
 母は,この機に自分でクレジットカードを作ることにしたようですが,作るのに時間が必要で,渡米までに間に合いそうにありませんでした。仕方がないのでこのときは,ロサンゼルスの伯母のカード番号をメールで教えてもらい,そこから支払いました。必要な情報を入力さえすれば,渡航する人間やESTAの申請者のクレジットカードではなくても,支払いが可能だったからです。日本でもクレジットカードは,僕のように持っていない人の方が少ない時代なのかもしれませんが,いかにアメリカがカード社会であるかということをこの件では痛感させられました。
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竜王戦展望&母と妹の渡米

2012-06-11 18:43:12 | 将棋トピック
 今期の竜王戦は決勝トーナメントの出場者が7日に決定。すでにトーナメント表も完成していますので,例年と同様に今年も展望することにします。
 まず左の山ですが,ここは端に並んだ1組の3人が手厚そうです。それ以外の若手3人のだれが勝ち上がっても,これを3タテしなければ決勝には進めないわけで,もちろん可能性がないわけではありませんが,きわめて困難ではないかと思えます。決勝トーナメントのシステムが現行制度に代わって以降,竜王戦ドリームの実現は以前よりもさらに困難になったといえるのではないでしょうか。
 一方の右の山ですが,こちらは混戦必至で,挑戦者決定戦に進出するチャンスがだれにも均等にあるのではないかと思われます。それだけ実力差がないと思えるような面白い組み合わせとなりました。
 タイトルホルダー不在のトーナメントで,挑戦者の予想はきわめて困難ですが,今年は若手の挑戦に期待したいです。ということで豊島将之七段,佐藤天彦七段の名前をあげておきましょう。渡辺明竜王にとっては初めてとなる,年下の相手とのタイトル戦というのを見てみたいという願望込みの予想ではあります。

 2月7日の火曜日は,妹のこども医療センター遺伝科の予約が入っていました。母の吐き気と目眩の症状は,本当にごく一過性のものでしたから,この日も母が連れて行っています。このところの慣例となっていますが,この日は妹は作業所は休みました。内容はいつもと同様の診察で,要するに癲癇の発作を抑制するための薬を処方してもらう目的でした。それ以外に変わったことはなく,ふたりが帰宅したのは午後5時半前くらい。この日は僕はまた長者町に行っていましたが,午後3時半くらいには帰宅していましたから,僕の方がずっと先に帰ってふたりを待っていたということになります。母は出掛ける前に夕食の下ごしらえをしていったようで,この日はカレーライスを食べました。基本的に調味料としてのカレールーというのは熱量が大きいですから,僕は現在はカレーはほとんど食べませんが,こういった場合には仕方ありません。
 その2日後,2月9日の木曜日が,伯母がロサンゼルスへ帰国する日でした。前回の来日時は緊急帰国という形になったわけですが,今回は事前の予定通り,来日前に予約しておいた航空機を利用してのものでした。ただ,これは単に伯母がロサンゼルスに帰国したというだけのことではありません。というのは,これに合わせて,母と妹が一緒にロサンゼルスへと飛び立っていったからです。
 前回の母と妹の渡米は,まだの生前,横行結腸癌であるという診断を受ける直前のことでした。したがっておよそ3年ぶりということになります。それ以前は年に1回くらいはロサンゼルスまで行っていましたから,そういう観点からすれば,久しぶりの渡米であるということになるでしょう。と同時に,これは母の小脳出血が,そこまで順調に回復してきたということの証であるといえるのではないでしょうか。渡米することに関して,母が磯子中央病院の主治医に相談したのかどうかということは僕は知りません。ただ,少なくとも母自身は,渡米しても自分の身体は大丈夫であろうと判断したということになりますから,単に母が肉体的に回復してきたというだけでなく,自分の体力についての自信のようなもの,いい換えれば精神的な面においても,顕著に回復してきたということの証明にはなるだろうと思います。
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将棋大賞&一部の概念

2012-04-03 19:37:16 | 将棋トピック
 昨日,第39回将棋大賞が発表されました。
 最優秀棋士賞は羽生善治二冠。棋聖防衛,王位挑戦,奪取。A級順位戦は全勝で今月からの名人戦に挑戦。日本シリーズ朝日杯将棋オープン,NHK杯で優勝。タイトル数は減らしたものの,記録部門の最多対局賞と最多勝利賞を獲得していますので,納得の受賞とはいえるでしょう。現行制度になったのは第33回からで,その第33回,35回,36回,37回,38回に続き,5年連続6度目。それ以前にも13回獲得しています。最多勝利賞は2年連続で12回目,最多対局賞は第35回以来で9度目の受賞。
                         
 優秀棋士賞はひとりで,渡辺明竜王。王座挑戦,奪取。竜王防衛銀河戦優勝。自身初の二冠達成で,メモリアルな1年となりましたが,最優秀棋士賞には惜しくも届きませんでした。しかしいずれは獲得できるだろうと思います。第33回,36回,38回と受賞していて,2年連続4度目。
                         
 敢闘賞は郷田真隆棋王。棋王挑戦,奪取。自身久々のタイトル獲得が評価されてのものでしょう。初受賞。
 新人賞は最強戦で優勝した菅井竜也五段。これは強敵を連破してのもので,確かに受賞可能な棋士の実績としては,昨年度で最大のものであったと思います。
 記録部門の最多対局賞と最多勝利賞は羽生善治二冠ですが,勝利数は豊島将之六段も同じで同時受賞。第37回でも獲得していて2年ぶり2度目。勝率1位賞は中村太地五段。これは歴代でも第2位となる大記録でした。連勝賞は18連勝の永瀬拓矢四段で,この両者は初受賞。
 最優秀女流棋士賞は里見香奈女流名人。女流王将防衛,倉敷藤花防衛,女流名人位防衛。文句なしです。第37回,38回に続く3年連続3度目。
 女流棋士賞は清水市代女流六段。女流王位挑戦,倉敷藤花挑戦,女流名人位挑戦。女流最強戦優勝。歴代トップで最多対局賞を獲得し,勝利数も歴代のトップでした。当然の受賞ですし,凄い棋士です。
 名局賞は竜王戦第四局。確かにこの将棋の終盤は見事でした。個人的に中継された将棋で最も感嘆したのは,日本シリーズ1回戦の第一局ですが,舞台設定を考えると,こういう将棋が名局賞を獲得するのは難しいでしょう。
 升田幸三賞は佐藤康光王将。この賞は大概は何らかの戦法に贈られるのですが,佐藤王将の将棋という形式での受賞。第34回のときも同じような形で受賞していて,2度め。この賞を2度受賞というだけで大きな価値がありますし,その独創性は大いに称えられるべきだろうと思います。
                          
 横歩取り新山崎流により,山崎隆之七段が同賞の特別賞を受賞しています。山崎七段もまた独創的な棋士のひとり。特別賞という形でなくともよかったのではないかと思います。

 人間の精神が現実的に存在するならば,その精神の一部は共通概念という十全な観念によって組織されることが必然であるということはこれでよいでしょう。そこでもしも,その観念が原因となってその人間の精神のうちに何らかの結果を発生させるならば,そうして発生する結果の観念は第二部定理四〇により十全な観念です。したがって僕の能動の考え方からして,これはその人間の精神の能動であるということになります。そしてそれは第二部定義三説明によってその人間の精神が,結果として発生する観念の対象ideatumを概念しているということになります。
 次に,もしもこうした思惟作用が人間の精神のうちに発生するのであれば,これは第一部公理三によって必然的に発生しているのです。そこで今度の課題は,こうした思惟作用の必然性が,どのような仕方で説明されるべきなのかということ,もっと有体にいうならば,こうした思惟作用が第二部定理九の様式で説明され得るのかということです。
 結論からいうならば,僕は少なくともある種類のこうした概念という思惟作用は,第二部定理九の様式で説明されなければならないと考えます。そしてその理由というのは,その仕方における原因の観念と結果の観念が,それぞれどのような様式で神と関連付けられなければならないのかという観点にあります。もしもそれが,何らかの意味において神の思惟する絶対的な力,いい換えれば神の思惟の属性そのものと関連付けられて説明されなければならないのであれば,それは第一部定理二一ないしは第一部定理二二の様式で発生するということになります。しかしもしもそうでないのであれば,それは第二部定理九の様式で説明されなければならないということになります。
 僕はこうした思惟作用が人間の精神のうちに生じるとき,その一部はもしかしたら神の思惟する絶対的な力と関連付けて説明しなければならないのではないかと考えています。しかし一方で,そうではないような思惟作用もやはりあると考えるのです。これが,僕が少なくともこうした思惟作用の一部は,第二部定理九の様式で説明されなければならないと考えるということの意味です。
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順位戦回顧&本性の永遠性

2012-03-19 18:40:54 | 将棋トピック
 昨年6月に展望した第70期順位戦は,先週金曜のB級1組の一斉対局で全日程を終了。恒例ですので今年も回顧しておきます。
 A級は羽生善治二冠が9戦全勝で優勝。森内俊之名人にリターンマッチを挑むことになりました。本命にはしなかったものの,挑戦自体は驚くような結果ではありません。ただこのメンバーでの全勝は称えられなければならないでしょう。降級は丸山忠久九段と久保利明九段。
                         
 B級1組橋本崇載八段と深浦康市九段が昇級。名前をあげた5人のうちのふたりなので,順当といえば順当な結果に思えます。ただ,橋本八段が1期でここを突破したのは立派だといっていいのではないでしょうか。降級は藤井猛九段と中村修九段。
 B級2組は本命の広瀬章人七段が全勝で昇級。ずっと混戦が続いていたクラスで全勝は特記するべき出来事。もうひとりの昇級は飯塚祐紀七段で,こちらは僕には予想外でした。確かにこってり将棋が順位戦向きというのはあると思います。
 C級1組は大混戦となり,佐藤天彦六段と豊島将之六段で決まりました。佐藤六段の方は名前はあげませんでしたが,若手精鋭のひとりですから,順当な結果のひとつといっていいのではないでしょうか。
 C級2組は阿部健治郎五段,中村太地五段,船江恒平五段が全勝で昇級,名前をあげたひとりの菅井竜也五段は9勝1敗で届きませんでした。このうち船江五段は初参加での昇級で,これは凄いこと。菅井五段にも勝っています。もちろん昇級3人の結果にはケチをつけることができませんが,一応はリーグ戦という体裁を採用しているのですから,全勝が3人も出るというのは制度的に欠陥があることの証明のようには感じます。

 個物がそれが様態化している属性に包含されて存在する場合,その個物はその属性が存在するならば必然的に存在するということになります。そうでなければそれは属性に包含されているということにはなりませんから,これはそれ自体で明白な事柄です。しかるに第一部定理一九により,属性の存在は永遠です。よってこの様式で個物が存在するといわれる場合には,その個物も永遠に存在するといわれなければならないでしょう。いい換えれば,この場合には個物は永遠という観点から認識されなければなりません。よって第二部定理四四系二により,この仕方で個物を認識するということは,実は理性の本性に属するのだと僕は考えます。
 このこと自体は,これは個物に限らず,おおよそ事物の本性というものがどのようなものでなければならないかということを考えることによっても帰結すると僕は考えています。
 たとえば,三角形の本性には,その内角の輪が180°,つまり二直角であるということが含まれています。そしてこのことは,三角形が現実的に存在するか否かということとは関係なしに,真理でなければなりません。いい換えれば,三角形の内角の和が二直角であるということは,三角形が現実的に存在するかしないかということとは無関係なのです。つまり,たとえ三角形が現実的には存在しなくなるということがあったとしても,いい換えれば一切の三角形が一定の持続のうちには存在しなくなったとしても,なお三角形の本性にはその内角の和が二直角であるということが属していなければなりません。このことから分かるように,三角形の内角の和が二直角であるということは,一定の持続のうちの真理であるわけではなく,永遠の真理なのです。
 この三角形の本性に妥当することが,あらゆる事物の本性に妥当すると僕は考えます。よってある個物の本性を認識するということは,永遠の真理を認識していることに等しいのだと僕は考えるわけです。つまり一般に事物の本性を認識するということは,永遠の相のもとにその事物を認識するという意味であると僕は理解します。つまりこの仕方で個物の本性を認識することは,理性の本性に属すると僕は考えるのです。
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知的整理&神との関係

2011-08-12 20:52:03 | 将棋トピック
 たとえばある事柄を認識することに,基礎的なことから複雑なことまで10の段階があるとします。9の段階まで達して10を目指すためには,9だけをクリアしていればよいというものではなく,1,2,3と順にひとつずつクリアしていく必要があります。僕はそうしなければ10に達することはできないと考えています。これは哲学の理解を進めていくにあたって心掛けていることです。ここでは次の段階に至るために前の段階をクリアしていくことを知的整理といっておきます。
 これは知的作業だけでなく,身体の新しい運動技能の習得の場合にもたぶん当てはまります。野球選手がキャッチボールのような基礎的段階を繰り返すのは,それなくしてはさらなる技術の向上は望めないからだと思います。
 たぶん将棋にもこうしたことがあるのです。王位戦第四局はそうしたものだったのかもしれません。僕がこのことに気付いたのは,片上大輔六段がこの将棋を知の整理と表現していたからです。
 9の段階から10の段階を目指すための知的整理は,3の段階にしか達していない者には意味が分かりません。僕がこの将棋を不思議な将棋としか感じ取れなかったのは,そのことが関係しているからです。タイトル保持者同士が知的整理を行う場合,その段階はかなり高度なものである筈です。プロであってもそのことの真意を十全には理解することができない棋士がいたとしても不思議ではありません。そうであるなら僕にそれが理解できなかったのは,むしろ当然だといえます。
 知的整理は知的段階を高めていくための作業としては必要不可欠なもの。そして同じくらい重要なのは,当事者がそのことを意識しているかどうかです。もしもそうした意識なしに,ただ漠然と反復作業を繰り返しているだけならば,知的進歩を望むことはできないでしょう。そしてその作業はもはや知的整理とはいえません。

 いってみればこのあたりのことは基本中の基本に属するわけですが,ここは大事なところなので,もう少しだけ考察を深めておくことにします。『エチカ』では第一部定理一六にあるように,すべてのものは神がなくてはあることも考えることもできないということになっています。したがって事物の認識,すなわち事物の観念について考える場合には,その観念が神のうちでどのように生じているのかということが非常に重要になってくるのです。なお,第二部定理七系の意味,すなわち神のうちにある観念はすべて十全な観念であるということに前もって注意しておいてください。
 再び第一部公理三第一部公理四を援用し,Aが十全な原因となってXが発生する場合,Xの十全な観念はAの十全な観念のみに依存しますから,神はAの観念を有する限りでXを十全に認識することとなるでしょう。ところで,Aの観念というのは,Aの精神にほかなりません。これはAというのをある人間の身体であると仮定すれば,第二部定理一一第二部定理一三から明らかです。よってこれはAの精神のうちにXの十全な観念があるという意味に理解して差し支えないのです。よってAが人間であると仮定すれば,このAという人間の精神のうちにXの十全な観念があるということになります。これがAの能動です。
 一方,AとBがそれぞれ部分的原因となってXが発生するという場合には,Xの観念というのは,AとBの各々の観念を有する限りで神のうちにあるということになります。したがってこの場合に,Aというのをある人間と考え,Aの観念というのをAの精神であると仮定すれば,このAの精神のうちにはXの十全な観念があることはできません。なぜならXの十全な観念は,この場合には,Aの精神の本性を構成するとともに,Bの観念を有する限りで神のうちにあるということになっているからです。したがって,Aの精神というのを神と関連付けずにただそれ自体でみるならば,Aの精神のうちにもXの観念はある,いい換えればAはXを認識はするでしょうが,その観念は十全な観念ではなく,むしろ混乱した観念であるということになります。これがAの受動を意味します。また,同様の方法で説明することにより,これは同時にBの受動でもあるという意味になります。
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順位戦展望&検査結果

2011-06-23 18:41:39 | 将棋トピック
 第69期名人戦は一昨日,昨日の第七局を森内俊之挑戦者が勝って4期ぶりに名人に復位。羽生善治二冠がA級順位戦に「降臨する」こととなり,第70期順位戦の出場者が決まりました。すでに開幕していますが,ここで展望します。
 A級。今期は史上最強なのではないかという気がします。中で僕の本命は渡辺明竜王。もっと早くに名人戦に出場していておかしくなかったと思いますが,いよいよ機が熟したという感じが僕の中にあるのです。
 B級1組。このクラスははっきりとした決め手をもっていると思えるような棋士がいないという意味で混戦という印象。安定感では深浦康市九段と木村一基八段で,まだA級未経験の松尾歩七段,山崎隆之七段,橋本崇載七段,阿久津主税七段といったあたりがどう加わっていくのかといったところでしょうか。
 B級2組。いずれはA級に定着しそうな20代と,かつてはA級にいたベテラン勢が入り混じっての争い。昇級したばかりですがやはり広瀬章人王位を本命に挙げたいです。もうひとりも若い方から戸辺誠六段ですが,1回戦の負けがどう響くか。
 C級1組。若手精鋭が揃ってA級に劣らないくらいの激戦区という印象。そうなれば順位の差がものをいうだろうということで,村山慈明五段と豊島将之六段のふたりを挙げておきましょう。
 C級2組。ここは人数が多く,くじの影響も大きいので例年通り情実的な予想。今期のメンバーで僕が最も期待しているのは阿部健治郎四段。次いで菅井竜也四段。あと,ここのところあと一歩で昇級を逃し続けている横山泰明五段は,悪くいえば勝負弱いということなのかもしれませんが,何とか昇級させてあげたいという気持ちが強いです。

 この日も中央検査室での採尿と採血の検査はガラガラで,すぐに終わりました。一旦は帰宅するのはいつもと同じパターンですが,午後1時前には家に戻ることができています。昼食の後に出直して診察は午後3時からですが,こちらの方はまた非常に混雑していまして,診察が始まったのは3時50分頃でした。
 ここ最近はずっと検査のオーダーの内容と結果がプリントされた検査詳細情報というのをもらっていたのですが,この日はなぜかもらえませんでした。なので詳しい結果というのは,この日の分に関しては分かりません。ただし,問題であったヘモグロビンA1cの値に関しては7.2%と,前回よりは改善し,それ以前の値に近づいていました。このために入院は免れることとなったわけです。前回の検査でHbA1cの悪化が判明して以降,運動療法の改善や食餌療法の改善に取り組んできたわけですが,結果的にはそれが実を結ぶことになったということなのだろうと思います。もちろん,だからといって油断すればまた悪化するであろうということは目に見えているわけですから,こうしたことにはこの日以降も取り組んでいますし,今後も取り組み続けるつもりでいます。
 それからこの日,注射するインスリンの量の配分の変更がありました。この日まで,朝は0.11ml,昼は0.07mlのヒューマログ,すなわち超速効型のインスリンを注射していたのですが,これが翌日から,朝は0.09mlに減らし,昼は0.09mlに増やすということになりました。これは,この間の血糖値の記録を見て,主治医であるМ先生が判断したものです。確かに,夕食前の血糖値が極端に高くなっていることはなかったのですが,それ以前よりはやや高くなっていましたし,何より昼食前に低血糖に近いような値が出てしまうようなケースが増えていたことは事実です。
 検査の後は支払い。みなと赤十字病院の領収証というのは診療費の明細と兼用になっています。この日は検査の点数というのがそれまでより少しだけ低くなっていました。とくに検査の内容に変化があったというわけではありませんので,これはおそらく検査詳細情報をもらわなかった分だと思われます。点数が高くなれば診療費もそれだけ高くはなりますが,詳細情報はやっぱり入手したいところです。
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竜王戦展望&第一部定義四まとめ④

2011-06-20 19:14:35 | 将棋トピック
 渡辺明竜王への挑戦者を決する第24期竜王戦は,17日に1組の3位決定戦があり,本戦トーナメント出場者が決定。今年も展望してみることにします。
 1組から5人が出場できるように制度が改正されて以降は,どうしても1組が手厚くなっています。左の山も3人が並んだ1組がやはり強そう。注目されるのは関西四天王の一角を占める稲葉陽五段と,今年に入って急激に勝ち出している永瀬拓矢四段の勝者がどこまで勝ち上がることができるのかという点ではないでしょうか。
 右の山は1組のふたりがタイトル保持者ですからやはり有力とせざるを得ません。ただトーナメントですからだれが勝ち上がってもおかしくはないと思えるようなメンバー構成になっているとは思います。
 やはり本命は羽生善治名人で対抗が久保利明二冠ということになるでしょうか。今年は右の山から挑戦者が出るような気がしてならないのですが,左の山から深浦康市九段の名前も上げておくことにします。今年も本戦は中継されることになると思いますので,僕自身が注目する対戦に関しては紹介していく予定です。

 スピノザの哲学では虚偽と誤謬とは異なるものであるというのが僕の見解です。よって,仮に人間が,神の属性に関して虚偽を有するということがあったとしても,誤謬を犯すことはないということ,つまり人間の知性による延長の属性ならびに思惟の属性の認識に関する無謬性は,これで明らかになりました。とくに属性の認識という場合には,第一部定理一〇によって,それが虚偽であるのか真理であるのかを判断する材料が,その観念がそれ自身によって概念されているのか,それともほかのものに依拠することによって認識しているのかということだけでも十分です。すなわちたとえば何らかの個物についてその真偽を判定する場合よりも明らかに容易であると考えられますから,この無謬性の確度というものは,その分だけさらに高くなっているといえると思います。
 さらに僕はこの無謬性が完全に確定するような仮説というのを立てました。それはおおよそ以下のようなものです。
 まず,第二部定義一に示されている事柄は,共通概念としてすべての人間の精神のうちにあると考えられます。そして第一部定理一の意味から考えるなら,このことは,延長の属性の十全な観念もまた,すべての人間の知性の一部を構成しているということでなければならないと思われます。
 ところで,第二部定理二六によれば,人間の精神が外部の物体を表象する様式というのは,その人間の身体が外部の物体に刺激されることを通してのみです。しかるに,こうした表象というのが人間の精神に生じるまさにそのとき,共通概念として神の延長の属性がその人間の精神によって十全に認識されていると考えられます。そこでもしも人間の精神による外部の物体の表象の様式がこれだけであるなら,人間の精神による延長の属性の認識の様式もこれだけになるのではないだろうかというのが,僕の立てた仮説の中心部分です。
 もしもこの仮説が正しいとするなら,人間の精神は神の属性,この場合には延長の属性と思惟の属性のふたつだけですが,共通概念としてのみ認識するということになります。つまり十全にのみ認識するのであり,混乱しては認識しないということになります。よって属性の認識に限定するならば,ドゥルーズの論証の方法というのは有効であり,また妥当であるということになるでしょう。
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