スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&第二部定理二四証明

2013-01-07 19:17:52 | 将棋
 将棋界にとっては2013年最初の大一番といえる第38期棋王戦挑戦者決定戦変則二番勝負第二局。
 振駒で今度は渡辺明竜王が先手に。羽生善治三冠が追随して相矢倉。先手は脇システムを採用。駒組が飽和状態となったところで先手から角交換して棒銀。端から攻めて角香交換の駒損の攻めが継続できるかが焦点と思われました。ところが後手が受けに回らず攻め合いを選択。
                         
 ここでいきなり△8六飛と切っていきました。第1図は一局だけ前例があり,この強襲は新手とのこと。▲同歩に△6九馬と入り,先手は▲3七桂と跳ねました。馬取りですから後手は攻め続けるほかないですが,長考して△8七歩と打っていますので,この桂跳ねは好手だったのだろうと思います。そこから▲同王△7九角成▲6八飛△7八馬右▲同飛△同馬▲同王△3八飛▲6八香△8七歩▲同王△3七飛成と進んだ局面での控室の見解は先手優勢。この手順は先手が受けに徹したといえると思うのですが,その判断が正しかったということなのでしょう。先手は読みを入れて▲1五角の攻防手を放ちました。
                         
 第2図から△7五桂▲同歩△7六銀▲同王△7五銀▲8七王△7六金▲8八王△8七歩▲7九王まで棋譜コメントから考えて一本道。
                         
 この局面は後手には勝ちがないようです。以下,数手で後手の投了となりました。
                         
 勝った渡辺竜王が挑戦権獲得。王将戦に平行しての挑戦となります。

 さらにもうひとつ,佐藤拓司が『堕天使の倫理』の中で採用している論拠があります。それは第二部定理二四のスピノザによる証明です。ここでもそれを詳しくみてみましょう。
                         
 まず,前提となるのは岩波文庫版113ページの第二部自然学②定義です。実際にスピノザもこれをこの論証の冒頭に用いています。ただし,今の時点はこれに関してはその点だけに言及しておくにとどめます。後に振り返ることになるからです。
 次に,人間の身体は第二部自然学②要請一により,きわめて複雑な組織の物体です。そしてその部分は,第二部自然学②補助定理四により,身体の本性あるいは形相を変ずることなく身体から分離するということが起こり得ます。そこで今,実際にそうしたことを起こす物体があるとして,これをXとします。
 第二部定理三により,Xの観念は神のうちにあります。そしてXは物体ですから,第二部定理九の仕方で示されるようなあり方として神のうちにあるのでなければなりません。いい換えるなら,そうして説明される限りにおいて,Xの観念は神のうちで十全であるということになります。このことから,人間の精神が自分の身体の部分に関してそれを十全に認識することはないということは,第二部定理一一系の新しい意味から明らかであるといえるでしょう。つまり第二部定理二四はこれで証明されたことになります。
 第二部定理二四自体は,人間の精神が自分の身体を組織する部分を十全には認識しないということだけを示せば十分ですから,これ以上のことは不要であるといえます。ただ,現状の僕の考察に関連させるなら,これだけでは不十分でしょう。なぜなら,ここで探求するべき事柄は,人間の精神の本性を構成すると説明される限りでの神のうちに,この人間の身体の部分の観念,つまりXの観念が神のうちで十全であるかどうかを精査することではないからです。むしろXそのものの観念と,Xのうちに何かが起こるとき,その何かの観念が,人間の精神の本性によって説明される限りでの神のうちにあるのかどうか,またあるのならそこには何か条件が必要とされるのかというふたつの点なのです。
コメント
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