スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

順位戦回顧&第一部定理一三系

2014-03-15 19:52:43 | 将棋トピック
 第72期順位戦は13日に全日程が終了しました。
 A級展望で最有力と評した羽生善治三冠が優勝し,名人戦の挑戦者に。終ってみれば2位に2勝の差をつけ,今年度も悠々のトップでした。屋敷伸之九段と谷川浩司九段が降級。
                         
 B級1組は展望で,前期は不甲斐ない成績であったと書いた広瀬章人七段と阿久津主税七段が揃って昇級し,八段に昇段。A級でどこまでやれるのか楽しみです。最注目だった豊島将之七段は頭はねの3位でしたが,すぐに昇級できそうです。A級経験者の高橋道雄九段と鈴木大介八段が降級。
 B級2組は有望株とした4人のうちのふたり,佐藤天彦七段と村山慈明六段が昇級で村山六段は七段昇段。この両者もいずれはA級を狙える棋士だと思います。
 C級1組は名前を出さなかった佐々木慎六段と糸谷哲郎六段が昇級。もっとも,若手精鋭の中には入ります。期待した阿部健治郎五段の負け越しは意外でしたし,残念でした。
 C級2組は澤田真吾五段,佐々木勇気四段,大石直嗣六段が昇級し,名前を出した佐々木四段は五段昇段。あとのふたりは同門で,やや変わった将棋を指す印象があり,この将棋でどこまでいくのかは楽しみです。

 第一部定理一三には系があります。
 「これらの帰結として,いかなる実体も,したがってまたいかなる物体的実体も,それが実体である限り,分割されないことになる」。
 『エチカ』の多くの系は,この帰結として,という文章から始まっています。ところがこの系はそうではなく,これらの帰結として,といわれています。この点に関しては岩波文庫版の訳者である畠中尚志が注釈しています。それによれば,この系は第一部定理一三からだけでなく,第一部定理一二からの帰結事項でもあるということです。スピノザが非意図的に,これらの帰結,という筈がないと僕は考えます。するとスピノザ自身の定理や系の配置の意図から察して,畠中が注釈している内容は妥当であろうと僕は解します。
 第一部定理一三証明のうちに,スピノザの戦略性があるかもしれないと僕がいったのは,その訴訟過程により,この系が帰結するようになっているからです。第一部定理一三は絶対に無限な実体をその考察対象に据えていますが,絶対に無限ではなく,自己の類において無限である実体を同じような対象と据えたとしても,成立するような内容となっているからです。
 次に,この系では物体的実体といわれていますが,自己の類において無限であると考えられるような物体的実体が実在するということをスピノザが認めているわけではありません。この直後の第一部定理一四は,実在する実体が神だけであるということを主張しているからです。よってここで物体的実体といわれているのは,いわば名目的な実体なのであり,実在的に解そうとするならば,この物体的実体は神であると理解しなければなりません。ただしこのことは第一部定理一四に進んでから『エチカ』では明らかになるという順序になっているのは事実です。
 僕が物体的実体というのを,神の延長の属性と翻訳しておいたのは,この部分で何らかの混乱を引き起こさないように用心しておくためでした。ただし,属性attributaに関してそれが分割可能であるかどうかを問うことは,デカルトにとってもスピノザにとっても問題とはなっていません。スピノザがここで物体的実体といったのは,明らかにデカルトの哲学を射程に入れていたからだといえるでしょう。
コメント
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