唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第二能変  第二・ 二教六理証 その(43) 第二、六二縁証 (⑫)

2012-04-23 22:15:55 | 心の構造について

 第四に、総じて前後の説を論破する。

 「此の理趣に由って、極成の意識は、眼等の識の如く、必ず不共なり、自の名処を顕し等無間に摂められず、増上なる生所依有るべし、極成の六識に随一に摂めらるるが故に。」(『論』第五・十二右)

 (この理趣(道理)によって、第六意識は、眼等の識のように、必ず不共であり、自の名処を顕して、等無間には摂められず、増上である生所依があるであろう。極成の六識の随一に摂められるからである。)

 この科段は先に論破してきた三説を、まとめて論破します。極成とは、一般に承認されていることをいいます。小乗と大乗ともに承認している事柄です。第六意識は小乗も大乗も承認しているという意味です。この一文は『国訳』では「三支を釈す」と注釈がされています。『述記』本文から、所別不極成の過失が述べられています。第六意識が大・小乗共に承認されていることから、第六意識も他の五識と同じように、「不共」・「等無間には、摂められず」・「生所依が有る」という条件を満たしているので、第六意識の根、所依は末那識であることを論証しているのです。従って小乗諸部派の説は誤りであるとして論破しています。

  • 第六意識には不共の所依がある。(共依である阿頼耶識を除く)
  • 第六意識の所依が、「自の名処をあらわして」という。十二処中の意処に属することを指す。
  • 第六意識は、「等無間には摂められず」、等無間縁を除く。
  • 第六意識は、「増上である」、増上縁依を示し、因縁依を除く。
  • 「生所依である」、染浄依としての末那識ではなく、もっとも密接な関係での所依で、第六意識に対しては末那識が生所依である。

 『述記』の注釈を見てみましょう。少し長いですが記述します。

自下第四爲總破前・後説量云 論。由此理趣至隨一攝故 述曰。極成意識。是有法。言極成者。簡諸部計最後身菩薩有漏不善意識。及他簡自他方佛意。若倶立此一切意。宗便有他・自所別不成過。故今簡之 次論復言必有不共顯自名處等無間不攝増上生所依是法。不共者簡現第八識。以是共依故。非親生故。非相近故。今對五轉識生所依説故。但言不共。若不簡之。便成有共依。所立不成過。又無同喩。他不許五依第八故。設許五喩。所立不成 顯自名處者。此即顯是十二處中意處所攝。簡上座部胸中色物以爲意根。彼是法處。非意處故。唯第六識得*微細之色。法處所收。此理不爾應外處攝。爲簡外處故置。顯自名處所攝。意言顯是意處所攝。恐無同喩但可總説顯自名處。彼非所立。違自宗故。對上座師立已成故 等無間不攝。簡次第滅意等無間縁。今成倶有依。若不簡者便非所立。立已成過。過去之意一切小乘皆許有故。増上者簡因縁即種子依。若對餘宗便非所立。若對經部便立已成。若擧五識以爲同喩。所立不成 生所依者。簡第七識與八・五識爲依。是八染淨依。非親生故。非相近故。是五染淨依。非生依攝。今顯第七爲六生依。以近勝故。又簡倶時心所亦第六識依故。前無同喩過。後立已成過又所依言。簡餘依法。彼但是依非所依故。立已成過。此中一一互相簡略然思可知。故不可説 因云極成六識隨一攝故。此簡如前。如極成眼等識喩。此上宗中極成之言通下喩故 此中問曰。五根別有體。意別立第七。五塵體實有。法亦實有耶 答經云從六二縁。不言有體無體故 問法雖無體亦意得生。爲例不成者。亦應從二縁生。根現無體亦得成。以過去意而爲意故答不然。根能順生。同世一處有力故現。無體故即不成。法但爲境即生心故。法無時不例五。此如五十二中説。問難大好。」(『述記』第五末・二十七右。大正43・412a~b)

 (「述して曰く。極成の意識と云うは、是れ有法なり。極成と言うは、諸部の最後身の菩薩の有漏の不善の意識を計するを簡ぶ。及び他においては自の他方の仏意を簡ぶ。若し倶に此の一切の意を立てば、宗に便ち他と自との所別不成の過有り。故に今は之を簡ぶ。」)

 何故、極成の意識というのか。有法についての大乗側からの問いです。一切の意識と限定するならば、大乗側と小乗側の解釈が違うのです。これを所別不成の失という。極成というのは、最後身の菩薩の有漏の不善の第六意識は大乗側は承認していないので除外し、他方世界の仏土の仏の第六意識は小乗側は承認していないので除外することを意味しているのです。意味するところが違うので、一切の意識というのであれば、自(大乗側、主張を立てた側)からは自所別不成となり、他(小乗側、相手)からは他所別不成となる。宗について、「意識は」というのは極成の意識を指し、一切の意識という意味ではないことをあらわしています。       (つづく)

 


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