唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変 第四 随煩悩の心所について (7) 結前生後 頌曰 (1)

2015-05-30 15:28:58 | 第三能変 随煩悩の心所
 「煩悩の分位差別・等流性なるが故に随煩悩と名づく」   
 前を結んで後を生ず。
 十煩悩の諸門分別が已わりまして、十煩悩に付随して起こってくる煩悩について説かれてまいります。
 「已に根本の六の煩悩の相をば説きつ。諸の随煩悩の其の相云何。」(『論』第六・二十三右)
 第三能変に入りまして、六位の心所の中、遍行・別境・善・煩悩が説かれまして、本科段から『論』巻第六の末尾に至るまで、随煩悩が説明されます。概略でも示しておりますが、随煩悩は三種類に分けて説明されます。大・中・小の三種類ですね。これが『頌』によって明らかにされます。
 「頌に曰く 随煩悩と云うは、謂く忿(フン)と恨(コン)と覆(フク)と悩(ノウ)と嫉(シツ)と慳)(ケン)と、誑(オウ)と諂(テン)と害(ガイ)と憍(キョウ)と、無慚(ムザン)と及び無愧(ムキ)と、掉挙(ジョウコ)と惛沈(コンジン)と、不信(フヒン)と並びに懈怠(ケダイと、放逸(ホウイツ)と及び失念(シツネン)と、散乱(サンラン)と不正知(フショウチ)となり。」(『論』第六・二十三右))
 随煩悩には、二十の心所が数えられます。本頌には随煩悩の種類のみが挙げられていますが、大・中・小の随煩悩を分けて説明するのは、ひとえに護法菩薩の功績になります。
   六位の心所を図式で示しますと、
 遍行 ― 作意 ・触 ・受 ・ 想 ・思
別境 ― 欲 ・勝解 ・念 ・定 ・慧
善 ― 信 ・慚 ・愧 ・無貪 ・無瞋 ・無癡 ・勤(精進)・安 (軽安)・不放逸 ・行捨 ・不害
煩悩 ― 貪 ・ 瞋 ・ 癡 ・慢 ・疑 ・悪見
随煩悩  
  小随煩悩 ― 忿 ・恨 ・覆 ・悩 ・嫉 ・慳 ・誑 ・諂 ・害 ・憍
  中随煩悩 ― 無慚 ・無愧
大随煩悩 ― 掉挙 ・惛沈 ・不信 ・懈怠 ・放逸 ・失念 ・散乱 ・不正知
不定 ― 悔 ・眠 (睡眠)・尋 ・伺
となります。
次に、随煩悩とはどういうものなのかが説明されます。(第四段・第五の位を明らかにする。)
 「論に曰く、唯だ是は煩悩の分位差別なり。等流性なるが故に随煩悩と名づく。」(『論』第六・二十三右) 論に説かれる。ただ是れ(随煩悩)は、煩悩の分位の差別である。随煩悩は煩悩の等流生である為に随煩悩と名づけられるのである。
 本科段は、煩悩の分位の差別を明らかにしています。具体的に色々な形を持って現れてくる、根本煩悩の区別されたいろいろな面、忿であるとか、恨であるとか、覆であるとかですね。縁によって時と共に区別される煩悩の形を分位差別として、等流性である。つまり性質を変えないで斉しく流れ出てくるものという、分位差別と、等流性という二面をもって、煩悩に附随しながら具体的に働いてくる煩悩を随煩悩と呼ぶんだ、ということになるのでしょう。
         分位の差別(分位仮立法)
  随煩悩 {
         等流性
 「述して曰く。長行に於て二と為す。初に体と業との等き相を釈す。後に諸門を以て釈す。初門に六有り、初に得名(随煩悩の名の由来)を釈し、二に束ねて三位(三種類)と為す。三に体と業とを釈す。四に頌の中の「与」「並」びに「及」の字を解す。五に随の名の通局(ツウキョク)を解す。六に廃立を解す。」(『述記』)
 長行(ジョウゴウ)について二つに分かれて説かれ、随煩悩の心所の性と業について説明される部分と、諸門分別を以て、諸門から随煩悩の心所を分析し、説明される部分とに分けられる、ということです。その初が六つに分けられて説明されてくるわけです。
 本科段はその初になります。 
 

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