唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

唯識入門(33)

2020-07-12 10:25:58 | 『成唯識論』に学ぶ
 おはようございます。先週で簡単ではありますが、認識の在り方について四分義を考察いたしました。
 今回より、第八識阿頼耶識(心王)は、どのような心所(心所有法)と相応するのかを考えてみたいと思います。選註本の『成唯識論』ではP45から始まります。ここで巻第三にに入り、心所相応五遍行が説明されています。
 「此の識は幾ばくの心所と相応するや」と問いをたて、「常に触・作意・受・想・思と相応す。」と答えています。
 阿頼耶識は、始めなきいのちの始発から今日に至るまで、迷いの境涯は恒にこの五遍行と相応していると説かれています。
 『成唯識論』巻第三・本科段より、巻第三にはいります。『述記』では、第三末・初右。大正43・328a16~より説かれています。
 初めに科段が示され、全体的な釈文の傾向が明らかにされています。
 「此の識は幾ばくかの心所と相応する。」(『論』第三初右)  
 「此れは初に問うなり」(『述記』第三末・初右)と。
 語句の説明ですが、
 心所とは、正しくは心所有法(しんじょうほう・心が所有している法)。心の中心体である心王(八種類)に付属して働く細かい心作用のことなのです。『倶舎論』では、大地法・大善地法・大煩悩地法・大不善地法・小煩悩地法の五種類に分離されていますが、唯識は、さらに細かく、六位五十一の心所を挙げています。即ち、遍行・別境・善・煩悩・随煩悩・不定の六種に分類しています。
 初能変の識を、第八識
 第二能変の識を、第七末那識
 第三能変の識を、前六識
 これらの八識が心王です。この八つの識の具体相が心所になるわけです。心王はある意味抽象的です。理論的に捉えて、第八識は五遍行と相応す、というのは他の心所とは相応しないということが具体相なんですね。心が動いていく具体相が善であり、煩悩であり、随煩悩であるわけで、その心所に五十一数えられています。
 この心所は三能変に付属して存在しますが、どの識がどの心所と相応して働くのかは異なります。第八識の場合は、五遍行と相応するわけですが、ただし捨受のみである。(五遍行と相応して働くのですが、対象をそのまま受け止める、苦もなく、楽もなく、憂いもなく、喜びもない、あるがままをあるがままに受けとめているのが第八識の特徴です。)私たちの心の深層は純粋であると明らかにしているのです。純粋であるが故に傷つき傷つけることが起こってくるのですね。純粋は染められることはあっても、自らを染めることはありません。
 では他に依って染められるのかというと、そうではないのですね。自らが染められてきた歴史がですね、染汚の歴史が種子(有漏種子)となって、純粋である阿頼耶識を染汚してくるわけです。
 阿頼耶識の所縁(相分)は種子(有漏種子)と身体(根を有する身)と世界(大地)ですが、阿頼耶識は無分別に取捨選択することなく平等に受け入れているのです。それが現実の行動として表面化してくる時に我のフィルターを潜って自他の断絶を起こしてくるのです。
 唯識を学ぶのはこの一点に尽きるのですが、我の深さが見えてきませんので縷々説明がされているわけです。
 阿頼耶識は、
 「常に触(そく)・作意(さい)・受(じゅ)・想(そう)・思(し)と相応す。」(『論』第三・初右)と。この五つを遍行(へんぎょう)といいます。
 遍行とは、触(そく)・作意(さい)・受(じゅ)・想(そう)・思(し)の五つです。第八阿頼耶識が動くときには、必ずこの五つと倶に動いている。
 また、遍行とは、どのような認識にも働く基本的なもので五つあります。
 簡単に説明しますと、
 触とは-心を認識対象に触れしめる心作用で、「三和(根・境・識)して変異を分別(ぶんべつ)するぞ。心心所を境に触れしむるを以て性と為し、受・想・思の所依たるを業と為す」心所である。
 作意とは-心を始動せしめて対象に向けしめる心作用で、「能く心を警するを以て性と為し、所縁の境の於(うえ)に心を引くを以て業と為す」心所である。
 受とは-感受作用、「順と違と倶非との境の相を領納(りょうのう)するを以て性と為し、愛を起こすを以て業と為す」心所である。
 想とは-対象が何であるかと知る知覚する心作用で、「境のうえに像を取るを以て性と為し、種々の名言(みょうごん)を施設するを以て業と為す」心所である
 思とは-認識対象に具体的に働きかける意思決定の心作用で、「心を造作せしむるを以て性と為し、善品等のうえに心を役するを以て業と為す」心所である、と説明されています。
 (註)
 心王 ― 八識
 心所 ― 五十一の心所をいう。遍行(5)・別境(5)・善(11)・煩悩(6)・随煩悩(20)・不定(4)
 心心所相応 ― 各識に相応する心所 /前五識…34 ・第六識…51 ・第七末那識…18 ・第八阿頼耶識…5  
 また説明します。

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