増上こそが根の義であることを検証する。
了自境増上 總立於六根 從身立二根 女男性増上(二)
於同住雜染 清淨増上故 應知命五受 信等立爲根(三)
未當知已知 具知根亦爾 於得後後道 涅槃等増上(四)
(「自境を了する増上に、総じて六根を立つ。身に従って二根を立つ、女と男との性に増上なり。
同住と雑染と清浄とに於て増上の故に、応に知るべし、命と五受と信等とを立てて根とす。
未當知と已知と具知との根も亦爾り、後後の道と涅槃とを得る等に於て増上なり。」)
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「また、眼などの五根は自境を知覚することにおいて、意根はすべての境を識知することにおいて、増上(力すぐれている、の意)である。特に、女たることや男たることにおいて増上でるから、身根より別に女・男根が立てられる。衆同分がそこにとどまることと、雑染と、清浄と、において増上であるから、命根と五受根と五作根とがそれぞれ立てられる。未知當知根は已知根を已知根は具知根を具知根は般涅槃を得ることなどにおいて増上であるから、これら三無漏根が立てられる。」(桜部 建著『倶舎論』p80~81より)
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衆同分(しゅどうぶん) - 同じ種類を成り立たしめる原理的力をいう。
- 未知當知根(みちとうちこん) - 二十二根のなか、四諦の理を知る無漏の根をまとめて三無漏根(未知當知根・已知根・具知根)といい、その中の一つを指す。未だかって知らなかった四諦の理をまさにすべて知ろうと欲する見道における力をいう。未知欲知根ともいう。なお、「根」とは、あるものを生み出す勝れた力を有するものの総称。
- 已知根(いちこん) - 見道においてすでに四諦の理を知り終えているが、、修道においてさらに事に迷う修惑を断じるために四諦の理を知る力をいう。
- 具知根(ぐちこん) - すべての惑を断じ尽くして、もはや学修すべきことがなくなった無学道において、すでに四諦の理を知り尽くしたと智る力(無漏智)を具えている力ある徳性をいう。現法楽住において増上の用があるといわれている。
第一句の「自境を了(別)する」のは六識で、眼等の六根は、その了別の識において増上のはたらきがあるから、眼等の六に根の名を立てるのでる。境はどうか、色等の境も識に対して増上の働きがあるのではないかという疑問ですね、これは簡単に、色等は眼等のように最勝自在の義を持っていないから根ということはない、とされています。第三句の「身に従って二根を立つ」は、男女二根は、身根の一分であるということ。男女二根が男性・女性に於て増上の働きがあるということ。
- 同住(どうじゅう) - 同分が存続すること。同分は衆同分に同じ。
同分の住する位として、存在において命根が増上の働きがり、染汚に対しては楽等の五受が増上の働きがあり、清浄に対しては信等の五根が増上であって、それぞれ根の名を立てる。第九句は「未知當知根は已知根を已知根は具知根を具知根は般涅槃を得ることなどにおいて増上であるから、これら三無漏根が立てられる。」
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