唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変 第九 起滅分位門 (17)滅尽定について(2)

2017-01-10 22:15:58 | 第三能変 第九・起滅...
  

 第三能変・起滅分位門・滅尽定について
   ― 末那識の分位行相について ―
 末那識おけるに起滅分位門につづいて、分位行相門が説かれます。この分位の行相について、先ず行相の種類を述べます。
 「一には補特伽羅我見(ふとがらがけん)と相応する。二には法我見と相応する。三には平等性智と相応する。」(『論』第五・六右)
 • 一には補特伽羅我見と相応する末那識である。
 • 二には法我見と相応する末那識である。
 • 三には平等性智と相応する末那識である。
 『論』には、三位(三種類の末那識の別)について、それぞれ説明がされています。
 (雑感)
 親鸞聖人は聖徳太子を和国の教主と仰がれ、生涯、太子の恩徳を謝されていました。 今、唯識において五位無心を学んでいますが、大意は自利利他の問題だと思うわけです。そういえば曇鸞は「声聞は自利にして大慈悲を障う」といわれていました。要するに五位における問題は自利のみという、自己中心的な解脱を目指し、そこに執着するということが問題視されたのではないでしょうか。
 仏陀は自利利他円満の覚者です。そうすれば、私の上に自利利他円満するということは、私が仏陀にならなければ成就しないということになります。それでは、大乗仏教の旗印である「上求菩提・下化衆生」は名目だけに終わってしまうのでしょうか。そうではありませんね。仏教の歴史は自利利他円満成就する道を模索してきたのではありませんか。親鸞聖人もその課題をもちつづけながら比叡山での修行に二十年の歳月を費やされたのでしょう。六角堂から上の太子の聖徳太子の御廟に足を運ばれ、三宝に帰することの意味を尋ねられたのではないのかと思うのです。そして師、法然上人に邂逅されたのですね。「しかるに愚禿釈の鸞、建仁辛の酉の暦、雑行を棄てて本願に帰す。」と『教行信証』の結びに記されています。「本願に帰す」ることにおいてのみ、自利利他円満成就の道があるという感慨を記されたのではないでしょうか。ここに大乗仏教が大乗仏教として成就する道が、すでにして開かれていたことを開示されたのですね。そうとすれば、如来の本願は阿頼耶識と一つのものといえますね。命と共に歩み続けるものが阿頼耶識であり、そこに如来の本願が働き続けているのではないでしょうか。如来の本願は夢物語ではなく、私が生きていることの根底に働き続けている命の事実ではないかと思います。
 参考文献
 「「建仁第三の暦春のころ 聖人二十九歳 隠遁のこころざしにひかれて、源空聖人の吉水の禅房に尋ね参りたまいき。是すなわち、世くだり人つたなくして、難行の小路まよいやすきによりて、易行の大道におもむかんとなり。真宗紹隆の大祖聖人、ことに宗の淵源をつくし、教の理致をきわめて、これをのべ給うに、たちどころに他力摂生の旨趣を受得し、飽まで、凡夫直入の真心を決定し、ましましけり。」(真聖p724.『御伝鈔』)
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 分位行相の種類は並存的に一人に並び立つという意味ではなく、修行の階位に応じてその範囲に相違があるということになります。
 (一に補特伽羅我見と相応する) - 人我見の末那識といわれますが、特に補特伽羅(プトガラ)と云われる意味は、生死をくりかえす存在、生命的存在を指し、人と限定されないという意味があります。『瑜伽論』巻八十三に「補特伽羅とは、謂く能く数数(シバシバ)諸趣(五趣のこと)に往収して厭足(オンソク)すること無きが故なり。」と。
 補特伽羅我見と相応する位を説明しますが、ここが二つに分かれ、初は執と相応する末那識の位を説き、後半は所縁の境が説明されます。
 「初のは、一切の異生に相続すると、二乗の有学と、七地以前の一類の菩薩との有漏心の位とに通ず。」(『論』第五・六右)
 (最初に説かれる「補特伽羅我見と相応する」末那識は、すべての異生に相続し、二乗の有学と、七地以前の一類の菩薩との有漏心の位とに通じて存在する。)
 『述記』にも、人我見と相応するということは、「正しくは補特伽羅と云うは五趣に通じて摂したり。唯、人のみには非ざるが故に」と説明されています。

 二に所縁の境が説明されます。
 「彼は阿頼耶識を縁じて補特伽羅我見を起こす」(『論』第五・六左)
 (補特伽羅我見と相応する末那識は、阿頼耶識を縁じて補特伽羅我見を起こすのである。)
 阿頼耶識を認識対象とし、阿頼耶識を実体的な我であると錯誤して我執を起こしているのですね。 
 次科段において、第二、法我見と相応する位について説明されます。 

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