唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変 第九 起滅分位門 (6) 五位無心 (4)

2016-12-12 21:26:39 | 第三能変 第九・起滅...
 

 無想天 第二師の説 ― 初中無心義  ― について考えてみます。
 「有義は、彼の天にして命終せむと将する位には、要ず転識を起こして然して後に命終す。彼こには必ず下の潤生の愛を起こすと云うが故に」(『論』第七・十左)
 (意訳) 第二師の説は、初生は無心ということは、第一師の説と同じである。凡夫は顕在的な煩悩と潜在的な煩悩とを以て、惑を起こして生存を潤し、それを相続せしめる働きをもつ。表層の行為が深層の阿頼耶識の中の種子を潤して種子を成育せしめる。『対法論』第五に「諸の異生の九種の潤生する心は、必ず現の愛を起こす」と説かれている。彼の無想天にして命終せんと欲する位には、要ず、欲界にて定を起こし後に色界第四静慮において無想果を得るのである。
 教証が挙げられます。
 「瑜伽論に後に想生じ已りて是の諸の有情いい彼より没すと説けるが故に」(『論』第七・十左)
  参考文献 『瑜伽論』
 「問依何分位建立無想定滅盡定及無想天。此三各有幾種。答依已離遍淨貪未離上貪出離想作意爲先。名滅分位。建立無想定。此復三種。自性者唯是善。補特伽羅者在異生相續。起者先於此起。後於色界第四靜慮當受彼果。依已離無所有處貪止息想作意爲先。名滅分位。建立滅盡定。此復三種。自性者唯是善。補特伽羅者在聖相續。通學無學。起者先於此起。後於色界重現在前。託色所依方現前故。此據未建立阿頼耶識教。若已建立於一切處皆得現前若已建立於一切處皆得現前。依已生無想有情天中名滅分位。建立無想此亦三種。自性者無覆無記。補特伽羅者唯異生性。彼非諸聖者。起者謂能引發無想定思。能感彼異熟果。後想生已是諸有情便從彼沒。」(『瑜伽論』巻第五十六・正蔵30・607b)
 「問う。何れの分位(ぶんい)に依りて無想定・滅尽定及び無想天(無想果)を建立するや、此の三に各々幾種ありや。答う。已に遍浄(天)の貪を離れたるも、未だ上貪を離れずして出離想の作意を先と為るに依りて無想定を建立す。此れに復三種有り、(1)自性は唯是善なり、(2)補特伽羅(ぷとがら)は異生(位)に在れて相続し、(3)定を起こす者は先づ此の(欲界)に於いて起こし、後色界の第四静慮(だいしじょうりょ)に於いて、当に彼の果を受く。已に無所有処の貪を離れ、止息想の作意を先と為るに依って滅の分位と名づけ、滅尽定を建立す。此れに復三種あり、(1)自性は唯是善なり、(2)補特伽羅は聖(位)に在りて相続し学無学に通ず、(3)(定を)起こす者は、先づ此の(欲界)に於いて起こし、後色界に於いて重ねて現在前す、色に託して所依(の色身)方に現前するが故なり。此れは未だ阿頼耶識の教えを建立せざるに拠る、若し已に建立せば、一切処に於いて皆現前することを得。已に無想有情天の中に生ぜるに依りて滅の分位と名づけ、無想(果)を建立す。此れに亦三種あり、(1)自性は無覆無記なり、(2)補特伽羅は唯異生なり、彼に生ずるは諸の聖者には非らず、(3)(定)を起こす者は謂く、能く無想定の思を引発し、能く彼の異熟果を感じ、後想生じ已るや是の諸の有情は便ち彼より没す。
 • 遍浄 - 第三静慮の最高天に在るとされる。
 • 出離想 - 外道の解脱涅槃。色界の第四静慮の最後の遍浄天の貪を伏し、いまだ第四静慮以上の貪を伏していない外道や凡夫が、第四静慮にある無想天を真の解脱と考えて、そこに出離しようと願って起こす想い
 • 補特伽羅 - 衆生の異名
 • 止息想 - 聖者が前七識の染汚の心・心所を止息しようとする想。寂静の心境になろうとする想い。無色界の有頂天において滅尽定に入る。出離想によって色界の第四静慮出離想で無想定に入ることに対する。
 『瑜伽論』巻の第五十六の記述に「定を起こす者」と。此の欲界に於いて無想天に生まれようとして無想定を起こすわけです。(欲界の異生は色界第四静慮を出離と考え、そこでは意識活動が停止するということが解脱だと思いこんでいる)そして、無想定を修して後に無想果を受けるといわれます。そこに「無想定の思を引発(いんぽつ)し」と。思とは、行為を起こす意志の働きですね。初めは審慮思といわれます。何を為すかと欲する意志です。次に為そうと決定し行動に移しますね。決定思・動発思です。無想天に生まれようとする意思決定が定を引き起こすのでしょう。そして無想果という異熟果を感じて、後に出離想が成就して諸の有情は諸の色根を滅するのである、と説かれている。このような理由に由って無想天には不恒行の意は存在しない、無心なのであるということになります。
 今日はここまでにします。

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