「艶歌」が歌謡曲の主流だった時代、売れる歌手を見つける一つの法則があった。
『不幸の味』・・・どんなに素晴らしい歌手であっても、売れるためには、どこかしら『不幸の味』がしなければならない。大衆はその「味」を敏感に嗅ぎ分ける。その歌手がどんなに歌がうまくても、どんなに美人であっても、それだけでは売れない。どこかに『不幸』の匂いがする歌手が売れる。・・・五木寛之の説である。
そう言えば、美空ひばりもそうだし、藤圭子もそうである。わたしはこの二人を戦後を代表する女性歌手だと考えているが、どちらにも常に『不幸の匂い』がつきまとっていた。
『不幸の味』は女性歌手に似合う。演歌が大衆の“生きる悔しさ”に対する応援歌だとすると、美空ひばりも常に家族の悩みを背負って生きてきた。美空ひばりは幸せな結婚生活を送れなかった。藤圭子もしがない旅の浪曲師だった家族の影を背負い続けていた。
二人にまとわりついて離れないこの「不幸の味」が大衆の心をつかみ、それが彼女たちを不世出の歌手にした。『生きるって辛いんだよね!』どんなに売れて、どんなにお金持ちになっても、大衆はこの二人の歌声から常にこの匂いを感じ取っていた。
美空ひばり、藤圭子。・・・この二人に、わたしは、「ちあきなおみ」を加えたい、と思う。
美空ひばりが作曲家、作詞家の思いや狙いを見事に表現し尽くす天才だとすれば、藤圭子は、その顔や表情と歌う声のギャップの凄さが大衆の心を掴んだ。
それに対して、ちあきなおみは、作曲家・作詞家の思いや狙いをはるかに超えた自らの情念を歌の世界に託して演じきった天才である。
【歌を演じる】・・・ちあきなおみの歌は、溢れんばかりの『情念』がほとばしり、鬼気迫る表情で歌を演じている。
彼女に匹敵する男性歌手は美輪明宏以外ないだろう。ただ、美輪明宏の歌は、何となく作られた匂いがするが、ちあきなおみにはそれがない。理由は単純。彼女が本物の女性だからだろう。
『歌を演じる』彼女の代表作が、【朝日のあたる家=The House Of Rising Sun】 。(あさひのあたる いえ、英: The House of the Rising Sun)は、アメリカ合衆国の伝統的なフォーク・ソング。
“Rising Sun Blues”とも呼称される。娼婦に身を落とした女性が半生を懺悔する歌で、暗い情念に満ちた旋律によって注目された。"The House of the Rising Sun" とは、19世紀に実在した娼館、または刑務所のことを指すという説があるが、確証はない。「朝日楼 / 朝日樓」とも表記する。 ‥ウィキペディア
この歌は、多くの歌手がカバーしている。その中でちあきなおみの歌がいかに凄いか。下にいくつか代表的な歌手のカバーを列挙しておくので、比較してみてほしい。
(米国などの歌手)
元々、米国の民謡をアニマルズが歌って、世界中にブレイクした。
https://www.youtube.com/watch?v=w4DgaTAUAbI
わたしたちには懐かしいジエーン・バエズも歌っている。
https://www.youtube.com/watch?v=rD80eZ6Gxz0
年取ったバエズの演奏はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=XopwrdwkFaI
ボブ・デイランの歌はこちら
http://www.magictrain.biz/wp/blog/2010/07/21/%E3%80%8C%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%9F%E3%82%8B%E5%AE%B6%E3%80%8D%E3%83%9C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%EF%BC%9Ahouse-of-the-rising-sun-bob-dylan-1962/
Odettaの歌はこちら
Odetta→日本ではオデッタ・ゴードンの名で知られている。フォーク歌手。人権活動家。
https://www.youtube.com/watch?v=Aaya8jYZBO8&list=RDAaya8jYZBO8&start_radio=1&t=31
(日本)
浅川マキ(彼女は“朝日のあたる家”を翻訳している。ちあきなおみも彼女の翻訳で歌っている)
https://www.youtube.com/watch?v=cqMjPghOKXQ
内田裕也
https://www.youtube.com/watch?v=kwOA2WQgaNM
モップス
https://www.youtube.com/watch?v=nOwNbWQQ3i0
山口百恵
https://www.youtube.com/watch?v=H5ALdlEoyJg
最後にちあきなおみの【朝日のあたる家】
※https://www.youtube.com/watch?v=8wydnzOt2OU
わたしの母の田舎では、60年に一度「荒神神楽」という神楽の中でも特殊な神楽が舞われていた。(現在では人口減少で行われていない。わたしも一度だけ見たことがある。)その時、村人の中から霊感の強い人間が選ばれて、【神や神や】(ごうやごうや)と叫んで神が下ってくるのを待つ儀式がある。
※比婆荒神神楽
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/05_vol_103/feature03.html
学問的に言えば、比婆荒神神楽は中国山地に秘匿された神懸かり(託宣の古儀)を伝承する古風な神楽で民俗学的に価値の高いものとして評価されている。
その時に選ばれた人間は、本当に口から泡を吹いて、まるで憑き物が付いたような状態になる。いわゆる【憑依】というものである。
神楽は夜行われる。田舎の神社は大方が大きな木々に囲まれている。周りは漆黒の暗闇で、かがり火の中でこの【憑依】した人を見た時は、背筋がぞっとした。この時の経験は忘れられない。
ちあきなおみの【朝日のあたる家】を聞いた時、わたしはこの時の感覚を思い出した。ある人が「アングラの一人芝居」を観たような気分だ、と書いていたが、同感である。まるで一本の映画を見終わったようなぞくぞくっとした充足感に襲われる。
こんな歌手は後にも先にも「ちあきなおみ」以外いない。彼女が憑依したのではない。主人公の女性に憑依し、それを演じきったのである。
こんな歌手は疲れるだろう。おそらく、彼女の一曲歌うごとの疲労感は、他の歌手の何倍にもなったのではないか。
夫の死後、彼女が華やかな舞台から身を引いてもう30年以上たつ。一体、彼女に何が起こったのか。
・・・
彼女の夫、郷鍈治は、俳優宍戸錠の弟。わたしも彼の出演した映画は何本も見た。2人は1973年ごろに出会い、78年に結婚。郷は92年9月11日に55歳の若さで他界したが、約20年も「相思相愛の仲」だった。
二人の合言葉は、「好きな歌、好きな芝居、好きな仕事だけ」。郷鍈治は、ちあきなおみの生き方に強烈な影響を与えた。
※郷鍈治の画像
https://www.bing.com/images/search?q=%e9%83%b7%e9%8d%88%e6%b2%bb%e3%81%ae%e6%98%a0%e7%94%bb&qpvt=%e9%83%b7%e9%8d%88%e6%b2%bb%e3%81%ae%e6%98%a0%e7%94%bb&form=IGRE&first=1&scenario=ImageBasicHover
ちあきは「父親は死んだ」と聞かされて育ったが、父親は生きており、彼女が有名になるにつれ、しばしば金の無心に現れた。郷鍈治と結婚してからも、金の無心は止まらなかったが、そんな彼女を郷鍈治は最後まで守り通し、決して父親に会わせなかった。
ちあきなおみは本当に郷鍈治を愛していたのだろう。郷の遺言「もう無理して歌うことはないんだよ」を頑なに守り、歌を忘れたカナリアになった。
ちあきは母親が亡くなると都内に墓碑を建て、郷さんもそこに眠る。2000年には墓から近いマンションに移り、生涯、母と夫を供養する覚悟で生活しているそうだ。
・・・・
https://www.zakzak.co.jp/ent/news/190712/enn1907120001-n1.html
(上の記事をわたしなりにまとめたもの。)
今のちあきなおみの心情に近いと思われる歌を彼女は歌っている。
「冬隣」。吉田旺作詞、杉本真人作曲
※https://www.bing.com/videos/search?q=%e3%81%a1%e3%81%82%e3%81%8d%e3%81%aa%e3%81%8a%e3%81%bf%e3%80%80%e5%86%ac%e9%9a%a3&&view=detail&mid=7CB1C2D63677C59332547CB1C2D63677C5933254&rvsmid=D8C2BB818D5476863AF8D8C2BB818D5476863AF8&FORM=VDRVRV
あなたの真似して お湯割りの
焼酎飲んでは むせてます
つよくもないのに やめろよと
叱りにおいでよ 来れるなら
地球の夜更けは さびしいよ
そこからわたしが見えますか
この世にわたしを置いてった
あなたを怨んで飲んでます
写真のあなたは若いまま
きれいな笑顔が憎らしい
あれからわたしは冬隣
微笑む事さえ忘れそう
地球の夜更けはせつないよ・・・
そこからわたしが見えますか
見えたら 今すぐ すぐにでも
わたしを迎えにきてほしい
地球の夜更けは さみしいよ
そこからわたしが見えますか
この世にわたしを置いてった
あなたを怨んで飲んでます
「不幸の味」を売り物にしなければならない宿命に疲れ果てた「ちあきなおみ」が、はじめて見つけた、夫郷鍈治との幸せな生活。彼女にとっては何物にも代えがたいものだったのだろう。
夫の死後から23年たった彼女の姿が、撮られている。
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/1612324/
夫の墓前で祈る老いた彼女の姿は、時の流れの無情さを感じさせるが、彼女の心の時間は、夫との別れで止まっているのだろう。こんな風に愛された郷治はさぞかし幸せだろう、と思える。
夫との死別後、何十年も、心の中の夫との生活に生き続けられる女性などそんなにはいない。彼女は最後まで、心の底から憑依できる歌手であり続けているようだ。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
流水
『不幸の味』・・・どんなに素晴らしい歌手であっても、売れるためには、どこかしら『不幸の味』がしなければならない。大衆はその「味」を敏感に嗅ぎ分ける。その歌手がどんなに歌がうまくても、どんなに美人であっても、それだけでは売れない。どこかに『不幸』の匂いがする歌手が売れる。・・・五木寛之の説である。
そう言えば、美空ひばりもそうだし、藤圭子もそうである。わたしはこの二人を戦後を代表する女性歌手だと考えているが、どちらにも常に『不幸の匂い』がつきまとっていた。
『不幸の味』は女性歌手に似合う。演歌が大衆の“生きる悔しさ”に対する応援歌だとすると、美空ひばりも常に家族の悩みを背負って生きてきた。美空ひばりは幸せな結婚生活を送れなかった。藤圭子もしがない旅の浪曲師だった家族の影を背負い続けていた。
二人にまとわりついて離れないこの「不幸の味」が大衆の心をつかみ、それが彼女たちを不世出の歌手にした。『生きるって辛いんだよね!』どんなに売れて、どんなにお金持ちになっても、大衆はこの二人の歌声から常にこの匂いを感じ取っていた。
美空ひばり、藤圭子。・・・この二人に、わたしは、「ちあきなおみ」を加えたい、と思う。
美空ひばりが作曲家、作詞家の思いや狙いを見事に表現し尽くす天才だとすれば、藤圭子は、その顔や表情と歌う声のギャップの凄さが大衆の心を掴んだ。
それに対して、ちあきなおみは、作曲家・作詞家の思いや狙いをはるかに超えた自らの情念を歌の世界に託して演じきった天才である。
【歌を演じる】・・・ちあきなおみの歌は、溢れんばかりの『情念』がほとばしり、鬼気迫る表情で歌を演じている。
彼女に匹敵する男性歌手は美輪明宏以外ないだろう。ただ、美輪明宏の歌は、何となく作られた匂いがするが、ちあきなおみにはそれがない。理由は単純。彼女が本物の女性だからだろう。
『歌を演じる』彼女の代表作が、【朝日のあたる家=The House Of Rising Sun】 。(あさひのあたる いえ、英: The House of the Rising Sun)は、アメリカ合衆国の伝統的なフォーク・ソング。
“Rising Sun Blues”とも呼称される。娼婦に身を落とした女性が半生を懺悔する歌で、暗い情念に満ちた旋律によって注目された。"The House of the Rising Sun" とは、19世紀に実在した娼館、または刑務所のことを指すという説があるが、確証はない。「朝日楼 / 朝日樓」とも表記する。 ‥ウィキペディア
この歌は、多くの歌手がカバーしている。その中でちあきなおみの歌がいかに凄いか。下にいくつか代表的な歌手のカバーを列挙しておくので、比較してみてほしい。
(米国などの歌手)
元々、米国の民謡をアニマルズが歌って、世界中にブレイクした。
https://www.youtube.com/watch?v=w4DgaTAUAbI
わたしたちには懐かしいジエーン・バエズも歌っている。
https://www.youtube.com/watch?v=rD80eZ6Gxz0
年取ったバエズの演奏はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=XopwrdwkFaI
ボブ・デイランの歌はこちら
http://www.magictrain.biz/wp/blog/2010/07/21/%E3%80%8C%E6%9C%9D%E6%97%A5%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%9F%E3%82%8B%E5%AE%B6%E3%80%8D%E3%83%9C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%B3%EF%BC%9Ahouse-of-the-rising-sun-bob-dylan-1962/
Odettaの歌はこちら
Odetta→日本ではオデッタ・ゴードンの名で知られている。フォーク歌手。人権活動家。
https://www.youtube.com/watch?v=Aaya8jYZBO8&list=RDAaya8jYZBO8&start_radio=1&t=31
(日本)
浅川マキ(彼女は“朝日のあたる家”を翻訳している。ちあきなおみも彼女の翻訳で歌っている)
https://www.youtube.com/watch?v=cqMjPghOKXQ
内田裕也
https://www.youtube.com/watch?v=kwOA2WQgaNM
モップス
https://www.youtube.com/watch?v=nOwNbWQQ3i0
山口百恵
https://www.youtube.com/watch?v=H5ALdlEoyJg
最後にちあきなおみの【朝日のあたる家】
※https://www.youtube.com/watch?v=8wydnzOt2OU
わたしの母の田舎では、60年に一度「荒神神楽」という神楽の中でも特殊な神楽が舞われていた。(現在では人口減少で行われていない。わたしも一度だけ見たことがある。)その時、村人の中から霊感の強い人間が選ばれて、【神や神や】(ごうやごうや)と叫んで神が下ってくるのを待つ儀式がある。
※比婆荒神神楽
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/05_vol_103/feature03.html
学問的に言えば、比婆荒神神楽は中国山地に秘匿された神懸かり(託宣の古儀)を伝承する古風な神楽で民俗学的に価値の高いものとして評価されている。
その時に選ばれた人間は、本当に口から泡を吹いて、まるで憑き物が付いたような状態になる。いわゆる【憑依】というものである。
神楽は夜行われる。田舎の神社は大方が大きな木々に囲まれている。周りは漆黒の暗闇で、かがり火の中でこの【憑依】した人を見た時は、背筋がぞっとした。この時の経験は忘れられない。
ちあきなおみの【朝日のあたる家】を聞いた時、わたしはこの時の感覚を思い出した。ある人が「アングラの一人芝居」を観たような気分だ、と書いていたが、同感である。まるで一本の映画を見終わったようなぞくぞくっとした充足感に襲われる。
こんな歌手は後にも先にも「ちあきなおみ」以外いない。彼女が憑依したのではない。主人公の女性に憑依し、それを演じきったのである。
こんな歌手は疲れるだろう。おそらく、彼女の一曲歌うごとの疲労感は、他の歌手の何倍にもなったのではないか。
夫の死後、彼女が華やかな舞台から身を引いてもう30年以上たつ。一体、彼女に何が起こったのか。
・・・
彼女の夫、郷鍈治は、俳優宍戸錠の弟。わたしも彼の出演した映画は何本も見た。2人は1973年ごろに出会い、78年に結婚。郷は92年9月11日に55歳の若さで他界したが、約20年も「相思相愛の仲」だった。
二人の合言葉は、「好きな歌、好きな芝居、好きな仕事だけ」。郷鍈治は、ちあきなおみの生き方に強烈な影響を与えた。
※郷鍈治の画像
https://www.bing.com/images/search?q=%e9%83%b7%e9%8d%88%e6%b2%bb%e3%81%ae%e6%98%a0%e7%94%bb&qpvt=%e9%83%b7%e9%8d%88%e6%b2%bb%e3%81%ae%e6%98%a0%e7%94%bb&form=IGRE&first=1&scenario=ImageBasicHover
ちあきは「父親は死んだ」と聞かされて育ったが、父親は生きており、彼女が有名になるにつれ、しばしば金の無心に現れた。郷鍈治と結婚してからも、金の無心は止まらなかったが、そんな彼女を郷鍈治は最後まで守り通し、決して父親に会わせなかった。
ちあきなおみは本当に郷鍈治を愛していたのだろう。郷の遺言「もう無理して歌うことはないんだよ」を頑なに守り、歌を忘れたカナリアになった。
ちあきは母親が亡くなると都内に墓碑を建て、郷さんもそこに眠る。2000年には墓から近いマンションに移り、生涯、母と夫を供養する覚悟で生活しているそうだ。
・・・・
https://www.zakzak.co.jp/ent/news/190712/enn1907120001-n1.html
(上の記事をわたしなりにまとめたもの。)
今のちあきなおみの心情に近いと思われる歌を彼女は歌っている。
「冬隣」。吉田旺作詞、杉本真人作曲
※https://www.bing.com/videos/search?q=%e3%81%a1%e3%81%82%e3%81%8d%e3%81%aa%e3%81%8a%e3%81%bf%e3%80%80%e5%86%ac%e9%9a%a3&&view=detail&mid=7CB1C2D63677C59332547CB1C2D63677C5933254&rvsmid=D8C2BB818D5476863AF8D8C2BB818D5476863AF8&FORM=VDRVRV
あなたの真似して お湯割りの
焼酎飲んでは むせてます
つよくもないのに やめろよと
叱りにおいでよ 来れるなら
地球の夜更けは さびしいよ
そこからわたしが見えますか
この世にわたしを置いてった
あなたを怨んで飲んでます
写真のあなたは若いまま
きれいな笑顔が憎らしい
あれからわたしは冬隣
微笑む事さえ忘れそう
地球の夜更けはせつないよ・・・
そこからわたしが見えますか
見えたら 今すぐ すぐにでも
わたしを迎えにきてほしい
地球の夜更けは さみしいよ
そこからわたしが見えますか
この世にわたしを置いてった
あなたを怨んで飲んでます
「不幸の味」を売り物にしなければならない宿命に疲れ果てた「ちあきなおみ」が、はじめて見つけた、夫郷鍈治との幸せな生活。彼女にとっては何物にも代えがたいものだったのだろう。
夫の死後から23年たった彼女の姿が、撮られている。
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/1612324/
夫の墓前で祈る老いた彼女の姿は、時の流れの無情さを感じさせるが、彼女の心の時間は、夫との別れで止まっているのだろう。こんな風に愛された郷治はさぞかし幸せだろう、と思える。
夫との死別後、何十年も、心の中の夫との生活に生き続けられる女性などそんなにはいない。彼女は最後まで、心の底から憑依できる歌手であり続けているようだ。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
流水