老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

国連の「日本は死刑減らすべき」の指摘に対する日本の対応

2008-10-20 20:57:23 | 民主主義・人権
10月17日の日経ネットは、15、16日の国連の自由権規約委員会に於いて、国連欧州本部で死刑の抑制などを定めた同規約を日本が順守しているかが審査され、委員からは「世界的には死刑制度を廃止する方向にあり、日本は死刑の執行数を減らすべきだ」といった指摘が相次ぎ、これに対し、日本政府は「国民世論は極めて悪質な犯罪は死刑もやむを得ないと考えている」などと反論したが、委員の賛成は得られなかった、と報じている。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081017AT1G1700917102008.html

国連の自由権委が日本の「死刑の執行数」を指摘したので、日本政府は「国民世論」を楯に反論したのであろうが、国連の指摘も日本政府の反論も、「日本の死刑を減らす」ための本質を突いてはいない。問題の本質は、死刑判決の増大とその前提になっている凶悪殺人事件の増加と背景であり、それに加えてメディアの被害者家族の感情に偏った殺人事件の採り上げ方の問題があるのではないだろうか。

死刑判決を下すのは裁判官である。2007年度の日本の裁判官数は約3400人らしいが、国連の自由権委の「日本は死刑の執行数を減らすべきだ」との批判を、裁判官はどのように受け止めているのであろうか。先ずは世界の死刑廃止、執行廃止の流れに逆行している日本の現状を冷静に考えて欲しい。

今回国連の自由権委が指摘しているのは、死刑の執行数の問題であり、日本政府(法務省)の死刑執行の在り方の問題である。しかし死刑判決が増えればそれを執行せざるを得ない一面があることも事実であろう。それにしても、国連の指摘に対して、「国民世論は極めて悪質な犯罪は死刑もやむを得ないと考えている」との反論は、主務官庁として主体性に乏しくし情けない。

犯罪白書は何のために毎年作成しているのか。犯罪原因を分析して犯罪件数を減らす為では無いのか。今の日本では殺人事件の要因は個人の問題だけではなく、家庭環境、社会環境、引いては政治政策に起因しているケースもあるはずである。例えば秋葉原の通り魔殺人事件の背景には、派遣労働制度と云う不安定な労働環境が小泉政権で作られたことがある、との見方が世論の大勢である。その証拠に政府与党も派遣法の改正へ素早く動き出している。

法務省は死刑の執行数を減らすに越したことはないが、むしろ犯罪発生原因を素早く掴み、内閣にその対策を促し再発防止を社会に及ぼすことが肝心である。そうすれば殺人事件も減少し、裁判での死刑判決も減少することは自明である。現状は無差別殺人事件や家族間殺人事件が一向に減る様子がなく、裁判所や検察は厳罰を科すことで犯罪を減らすことに汲々として、一方法務省は真の犯罪防止施策には無策・不作為ではないかと疑わざるを得ない。

http://www.moj.go.jp/index.html
http://www.moj.go.jp/TOUKEI/index.html

最後に、日本政府の国連への言い訳は、メディアの殺人事件の採り上げ方にも影響を受けていると思われる。メディアは視聴率を上げるために競って事件を話題にしているが、例えば光母子殺人事件の場合、テレビ番組で計33回、計7時間半も採り上げられている。更に殺害された母子の写真が何回も映し出された上、遺族が「死刑を望む」とのコメントまで報道されれば、視聴者の「目には目を」の報復感情を掻き立てかねない。

それが世論を形成し、まさに日本政府自身がメディアに煽られ「国民世論は極めて悪質な犯罪は死刑もやむを得ないと考えている」と釈明しているようなものではないだろうか。その後光母子殺人事件の報道には偏向があったことをBPO(放送倫理検証委員会)も認めて反省しているとおりである。

http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/

たまたま秋葉原通り魔事件は社会環境や家庭環境も事件との関連でクローズアップされているが、赤ちゃんの寝顔や保育園で無心に戯れる園児を見て、誰が将来殺人事件を引き起こすと想像できようか。生まれてから一定年齢までは、誰もが純粋無垢である。それが何によって変わるかと云えば、家庭であり、学校であり、社会環境、政治政策である。また先天的な発達障害等でその環境になじめない場合もある。

秋葉原事件後も無差別殺人事件や家族間殺人事件もいくつか発生しているが、誰も自分の家族や親戚からこのような事件が発生するとは想像すらしていなかったはずである。しかし今の日本の社会を見ていると、他人事ではなく、いつ自分の身内から犯罪者や被害者が生まれても不思議でない社会環境ではないだろうか。

今政府が犯罪発生防止策としてすべきことは、事件の背景にある家庭環境や社会環境問題を掘り下げ、対策を練ることであり、「国民世論は極めて悪質な犯罪は死刑もやむを得ないと考えている」と云うような悠長な、傍観者であって欲しくはないものである。

「護憲+BBS」「裁判・司法行政ウォッチング」より
厚顔の美少年

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