老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

コロナパンデミック以降の世界情勢展望(1)

2021-10-01 10:29:59 | 政治
〔1〕共同幻想を確認する儀式=自民党総裁選(保守と似非保守のせめぎ合い)

日本では、自民党総裁選の田舎芝居が閉幕を迎えた。岸田文雄氏が決選投票で河野太郎氏を抑え、自民党総裁に選出された。先に指摘したように、4人の候補者の誰がなっても、自民党は変われない。

ロラン・バルトが「表徴の帝国」の中で、皇居を以下のように書いている。

「わたしの語ろうとしている都市(東京)は、次のような貴重な逆説、≪いかにもこの都市は中心をもっている。だが、その中心は空虚である≫という逆説を示してくれる。禁域であって、しかも同時にどうでもいい場所、緑に蔽われ、お濠によって防禦されていて、文字通り誰からも見られることのない皇帝の住む御所、そのまわりをこの都市全体・・・・」

日本の権力の中心は、「空虚」という評は、日本の権力の様態を見事に言い当てている。

今回も、毒にも薬にもならない、煮えたか沸いたか分からない、岸田文雄を選出した。権力の中心が、【空】に近いほど、座りが良くなる、というのが、日本の権力の特質。安倍や菅などという【空】ではない権力の限界を悟った自民党流の先祖返りの総裁選だった。

今回選出された岸田氏は宏池会出身。宏池会は自民党リベラル派。池田勇人や宮澤喜一を輩出した自民党保守本流と言っても良い。

メディアでは、安倍氏などを保守と言っているが、それは違う。安倍氏などが属する清和会は、保守と言うより、右派(右翼と言っても良い)に分類したほうが良い。今回選挙に出た高市早苗(彼女は元清和会だが)のようなごりごりの右派集団で、宏池会の保守とは明確に違う。私から言わせれば、「保守」ではなく「似非保守」で、その真の姿は、右派(右翼と言って良い)そのものである。

「保守主義」を最初に唱えたエドモン・パークは、以下のように定義している。

①具体的な制度や慣習を保守し、
②そのような制度や慣習が歴史のなかで培われたものであることを重視するものであり、さらに、
③自由を維持することを大切にし、
④民主化を前提にしつつ、秩序ある漸進的改革を目指す

※「保守主義」は、「進歩主義」に対する対抗概念として提唱されている。
ここで言う「進歩主義」は、社会主義的進歩主義を指しているわけではない。
※「進歩主義」とは、描いた理想に向かって、直線的に、飛躍して社会を変革しようという思想。

しかし、『社会を変革する』のが、常に正しいとも限らないし、良い事だけとは限らない。これは、小泉政権以降の「新自由主義的改革」を見れば一目瞭然。小泉純一郎はじめ安倍晋三などが異口同音に唱えたのが【改革】。彼らのイデオローグ竹中平蔵などは、口を開けば、「改革」と叫んでいた。まして、小泉以降の改革のように、改革がラディカルであればあるほど、困る人間が大量に生まれる。(貧富の格差拡大、正規労働者の激減、派遣労働者の激増など)

このようなラディカルな改革に対して、「本当に大丈夫なのか」という疑問を差しはさみ、他の方法がないのかを問い続けるのが、本当の意味での【保守主義】。

本来の保守主義とは、このような「漸進主義」的思想であり、小泉政権以降、安倍政権で加速した急進右派的改革(日本の雇用関係を壊し、平和主義的国のスタンスを壊し、憲法をないがしろして、憲法改悪を唱えるという矛盾した主張を平然と行い、国会をないがしろにし、説明責任を放棄するなど)とは、決定的に異なる。

英国流の「歩きながら考える」という漸進主義的方法論を本来の保守主義と言う。

ところが、「保守本流」の思想の持ち主であるはずの岸田文雄は、本来の保守的思想を堅持しては、政権は取れなかった。逆に、安倍流の新自由主義的、右派的「急進改革路線」にすり寄る事でしか、権力を奪えなかった。

逆に、河野太郎が権力を奪えなかったのは、彼が醸し出す「徹底的で急進的な新自由主義的改革」路線の過激さが、嫌われたのであろう。

河野太郎は、自民党の長老たちの人間関係に配慮したあいまいな【改革】は嫌いである。そういうしがらみを断ち切って、科学的合理性、経済的合理性のみに依拠した急進的改革論者が河野太郎の本質。その意味で彼は小泉純一郎と酷似している。こういうタイプの人間は、本質的に守旧派には、受け入れられない。結局、彼はその守旧派の壁に阻まれたのであろう。

さらに、分かりやすく言うと、「新自由主義的」改革は、米国の強烈な圧力のもとに断行された。これにアンチを唱えた田中角栄、民主党政権などは、結局潰された。福田康夫政権も似たような運命を辿った。

日本の戦後政治を担ってきた保守本流政治から権力を奪いたい「清和会」は、米国に迎合し、米国の要求「日本の新自由主義的改革」を急進的に行った。

結果、小泉政権以降、安倍政権の7年半で、日本は見事に後進国へ転落した。日本を政治的にも経済的にも、米国の「隷従国家」として飼っておきたい米国の下僕としての日本の役割が固定化された。

この結果は、珍しい話ではない。米国の下請けとして生きる道を選択した国家の辿る道だと考えれば、前例はいくらでもある。中南米の多くの国家は、日本と同じ運命を辿っている。アルゼンチンにしろ、メキシコにしろ、ベネズエラにしろ、いくらでも事例はある。ただ、日本人の多くが現実に目をつぶり、いまだに「先進国幻想」に酔っているだけである。

また、永田町には、「米国に逆らうと、田中角栄や小沢一郎や鳩山由紀夫のようになる」という恐怖心が蔓延し、米国の意向に逆らうなどと言う発想は、何一つ生まれなくなった。米国と言う存在は、永田町では、超法規的存在であり、すべてに超越する【タイラント】的存在になった。

本来、日本の右翼は、【反米愛国】が主張だったが、安倍政権成立以降、「隷米反日」に転向したようだ。今や、反米的な言辞を弄する知識人や文化人、学者に対して、猛烈な攻撃を仕掛けるのが、右翼の仕事になったようだ。同時に、日本の国益を売るような様々な政策が強行され、日本売りが加速している。

人間の思考は不思議なもので、自分が身を置いている集団の思考から極端に違う発想や思考は取りにくい。吉本隆明は、こういう人間の思考のありようを【共同幻想】と呼んだ。村社会ほどこの「共同幻想」の束縛が強い。

改革者としてもてはやされている河野太郎にしても、持論の原発廃止を封印。安倍政権下での「もりかけ問題」「桜を見る会問題」などの追及は封印。骨のあるジャーナリストが提出したこれらの問題を問いただす質問書は受け取らない。永田町の「共同幻想」にひれ伏す姿勢だ。

読売、電通が仕切る大手メディアも同様。何ら生産性のない自民党総裁選のニュースを全TV局で垂れ流す。(総裁選は、自民党党員党友だけが投票権がある。一政党の内部選挙。)オリパラと同じ。朝から晩まで自民党総裁選のニュース。これでジャーナリズムの責務が果たせるのか、という自己批判さえない。

このあり様を見ていると、日本のメディアが、永田町流の【共同幻想】にがんじがらめに絡めとられている現状が良く見える。この現状がジャーナリズムの死を意味している、という認識すら無くなっているのだろう。

改めて、「もはや日本のジャーナリズムは死んだ!」と言う地点から出発せざるを得ないという現状を再確認せざるを得ない。

ところで、日本では悪口しか書かれない現在の中国習近平政権は、何を考えているのだろうか。日本と比較して彼らの方向性を検討するのは大変意味がある。

米国が、狂奔している「中国封じ込め」政策のお先棒を担いで、日本に何のメリットがあるのか。対米隷属が国是の日本人には、考えもつかないが、21世紀の世界をリードしようという中国の姿勢が良く見える。

せめてこの程度の議論が自民党総裁選で聞こえてくれば、多少日本にも希望が見えたのだが、所詮ぬるま湯に浸った【ゆでガエル】の議論しか聞こえなかったのが残念である。


〔2〕コロナ以降を見据えた中国の戦略

評論家田中宇氏は、2020年にきわめて興味深い論文を書いている。「コロナ時代の中国の6つの国際戦略」と題された論文は、きわめて示唆に富んでいる。以下にその梗概を簡単に紹介しておく。

2020年6月、中国社会科学院の学術誌「中国社会科学報」に「国際情勢の変化に積極的に対応する」と題する論文が発表された。この論文は、対外連絡部が中共中央に命じられ、今後の世界情勢の変化とその対策を6か条にまとめたものだ。

この論文は、今後の「コロナ時代」の中共の国際戦略の要諦として用意された重要文書だ。この論文に書かれた6か条が今後の中国共産党の基本方針だと読まなければならない。

(1)米国の中国敵視政策⇒トランプ政権以降の敵視策は、全面的で、バイデン政権でも続く。
   ↓ 米国の敵視政策(人的交流制限、最恵国待遇はく奪、ファーウエイの犯罪捜査など)
  デカップリング政策(中国を米国から、経済的・政治的に切り離す)⇒米国の敵視政策を軽視しない。適切な防御策を講じる。
(2)新型コロナ対策⇒都市閉鎖・経済・交通の停止(世界的に続く)⇒世界市場の縮小
   ↓
  世界的な輸出⇒中国国内と周辺地域での経済発展に転換⇒世界的な流通網の立て直し
(3)新型コロナの感染拡大は長期化する。人類はコロナとの長期共存を余儀なくされる。第2波、第3波がくる。
(4)米国(米ドルが世界の決済通貨を利用)⇒経済制裁⇒SWIFT※などのドルの決済システムから中国を締め出す。
   ↓
  防御策⇒人民元の国際化を急ぐ。⇒人民元で決済できるようにする。⇒ドルの単独覇権を壊す
   ↓
  ドルの将来⇒米連銀(FRB)のQE策が行き詰まった時、ドルの価値は下がる。
   ↓
  人民元の国際化=人民元での決済を出来るようにするのが有利

※ SWIFT  https://www.swift.com/

(5)世界的な食糧難が起きる
   ↓
  コロナ危機・イナゴ大発生(世界の食糧生産は30%減)
   ↓
  トーモロコシ、大豆、小麦の国際価格⇒30~50%値上げ
   ↓
  中国 世界最大の大豆の輸入国⇒影響大
   ↓
  中国国内と国際的な農業や食料の流通備蓄の改善が必要

(6)コロナ渦で世界的にテロ防止策が棚上げ
   ↓
  IS(イスラム国)やアルカイダといった国際テロ組織が再勃興してくる
   ↓
  イスラム過激派⇒中国への敵視強める⇒上海機構、BRICS、ASEANの枠組みでテロ対策強化

🔶米国との関係をどう見るか。

問題はこの6つの方針が示されたのが、2020年6月と言う時期である事。中国は1年以上前から、コロナ後を見据えた戦略を練っていた。覇権国家である米国との確執、特に、トランプ政権との関係性は、危機的状況だった。中国は20年6月段階では、トランプが大統領選に勝利すると考えており、その長期的対策を(1)で書いている。

元々、中国は覇権国家米国の方向性にそれほど逆らうつもりはなかった。中国共産党の中にもリベラル派と呼ばれる親米的傾向の強い幹部がいた。その為、中国は、米国の方向性にかなり妥協的政策を採っていた。

しかし、トランプ大統領の中国敵視政策は、徹底的なもので、中国も腹をくくる必要性が生まれた。これが、【デカップリング】政策である。政治的にも経済的にも米国から中国を引き離すという政策は、中国が覇権国家であろうとする意志の表明だと考えてよい。

元々、「デカップリング」政策は、トランプ政権が続くという前提で作られたものなので、もしバイデン政権が国際協調路線に転じ、従来の中国との融和政策を復活させる方針に転換したら、中国国内のリベラル派が息を吹き返し、習近平執行部はかなり窮地に陥ったかもしれない。

しかし、バイデン政権は、対中敵視路線を引き継いだ。このため、中国は「デカップリング」政策を継続し、米国との対立関係を継続せざるを得ない。習近平指導部の強硬路線が力を持たざるを得ない構造になった。習近平指導部の基本的方向性(対米自立)が確定したと言って良い。

同時に、米中の関係の悪化は、日本の立ち位置をきわめて難しくした、と考えなければならない。それが(2)の政策、世界市場の縮小にどう対処するか、に如実に表れる。

これまでの関係は、以下のような形で行われてきた。
〇米欧→資金(中国)→中国は工場建設→輸出(米欧)→中国はその儲け→米国債など債券金融システムに投資(米国中心)→米金融界が繫盛・・・・・【米金融覇権体制の核】

コロナによる世界経済の縮小+中国の「デカップリング」政策
 ↓
〇中国は【内需拡大】と【一路一帯】政策による経済拡大で食っていく
●米国→トランプ・バイデンの中国敵視政策→中国経済に入っていけない。→中国から撤退せざるを得なくなる。
★日本(欧州)→米中対立を無視する形で、ひっそりと中国市場に残る。→基本的には、中国の対米自立政策についていかざるを得ない。←米国からの脅しがくる(中国封じ込め)

(3)に示されている、20年の6月段階でのコロナに対する見通しは、さすがと言わなければならない。この基本的な方針に基づき、内需拡大などの基本的な経済政策、安全保障政策などが策定されている。中国政府の政策決定の方針は、常に10年、20年、時には100年先までの長期的見通しに基づいている。

中国共産党が一貫して権力を保持しているため、他の民主主義国のように短期的成果を求める必要がない。(3)に示されているのは、中国の国家体制の優位の部分であるという乾いた認識が必要である。

(4)の問題は、現在の世界経済の決済システムの大変革につながる。中国政府中央に近い筋が、QE(量的金融緩和政策※)のやり過ぎで、ドルが破綻すると予測している。
〇ドル崩壊への対応策⇒人民元の国際化⇒基軸通貨の多様化
〇ドルを基軸通貨として認める⇒米国の覇権を認める
〇基軸通貨の多様化⇒覇権の多様化

※量的金融緩和政策(りょうてききんゆうかんわせいさく、英: Quantitative easing、QE)とは、市中銀行が保有する国債を準備預金に交換する政策のことで、銀行から見れば政府への定期預金(国債)を日銀への普通預金(準備預金)に置き換えることになる。金利の引き下げではなく市中銀行が保有する中央銀行の当座預金残高量を拡大させることによって金融緩和を行う金融政策で、量的緩和政策、量的緩和策とも呼ばれる。・・・ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96

(5)の食糧危機への対処
 コロナ危機の長期化⇒国際流通網脆弱化(食肉・穀物など)・発展途上国の経済難(長期化)
 ⇒極貧者増加 世界的に言えば、食糧難の国は、まだら模様で表れる。
●米国⇒金を出さない。日本も同様。 中国⇒途上国への食糧支援、農業支援を強化する可能性が高い。
〇中国の覇権戦略
日本が軽視している世界食糧危機を中国が重視して、発展途上国の支持を取り付ける。

(6)対テロ戦略
(テロに対する基本的認識) ⇒日本は、この基本認識が決定的に違う。
〇IS・アルカイダの最大の支援者⇒米国の軍産・諜報界
  ↓
 米国の中東撤退→ISやアルカイダ縮小←IS・アルカイダを討伐 (ロシア・中国・イラン)
               ↓
           トルコ・サウジアラビア(IS・アルカイダの後始末をしている)
〇中国の【これからのテロ対策】
 ★米国に代わって中国が中東・アフリカのテロ対策の主導の一翼を担う
   ↓
 ★中国の国際影響力の拡大、金儲けの拡大

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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