老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

映画「福田村事件」善意は暴走する

2023-09-04 01:32:55 | 社会問題
森達也監督の映画「福田村事件」を観た。

大正12年9月1日に首都圏を襲った関東大震災にに乗じて、千葉県の福田村(現 野田市)で香川から来た薬売り15人の内9人の人間(お腹の胎児を含めて10人という説もある)を集団で虐殺した事件である。

震災が起きる以前、村の人々は窮屈だけれど平和な生活を営んでいた。当時の日本の何処にでもあった風景。しかし少しづつ不穏な空気がただよい始める。

朝鮮から帰って来た日本人夫婦の妻の服装を見て「朝鮮人でなかっぺか?」と囁く女将さんたち。 香川から来た薬売り15人の一行にも、よそ者であるというだけで胡散臭げな眼を向ける農民達。

そして関東大震災が村を襲う。

大災害、倒壊した建物。 生き延びて良かったと思う間もなく、〈不逞朝鮮人〉という言葉が村の中を飛び交う。

軍服に身を包んだ元軍人や村の重鎮達が、「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」「あちこち火を付けまわり狼藉、暴動を働いている」と言う根拠のない話を拡大して、怪しい輩を取り締まると集まりはじめる。

更に根拠も確かでない情報を新聞はセンセーショナルに書きたて、人々の不安や恐怖を煽る。内務省の通達も「国民は自衛せよ」と、根拠のない噂を元にした酷いものであった。

村長はリベラルな意識を持つ人で何とか押し留めようと奔走するが、彼が苦しげに呻いた様に「こうなったら誰にも止められない」事態まで村人達の意識は紛糾していた。

そして薬売り15人を一箇所に集め村人達の尋問と狂気に満ちた大虐殺が始まる。

この映画の監督 森達也は、「善意は暴走する」とインタビューに答えている。

彼が取材を通してオウム真理教の施設に入り信者達と接した時、その優しさや暖かさに驚き、「何故こんな人達が恐ろしい犯罪を犯したのだろう?」と考えた。そしてその背景には、「集団の倫理」と「暴走した善意」があったのではないかと語っていた。

映画でも、「朝鮮の人達に対する恐怖や不安」「日本という国が行って来た彼等ヘの人権無視の行為からくる後ろめたさ」を押し殺し 、「村を守る。女子どもを守る。我等男衆が身体を張って〈不逞朝鮮人〉からこの村を守らなくて誰が守るのだ」と熱り立ち、〈不逞朝鮮人)はその時の彼等にとっては既に人間ですらなくなっていた。

関東大震災から100年の時を経た時代に私達は生きている。だが私とて今何かが起きたら根拠のないフェイク情報に惑わされ右往左往しないとも限らない。そんな時、「パンドラさん少し落ち着いて」とか、「〇〇さん落ち着いて考えてみようよ」とか、お互いに声を掛け合う友人や仲間達がいる事は大切だと思う。

その時少し立ち止まって考えてみよう。そんな情報から距離を置いたら見えて来るものがあるかも知れない。100年前も今も変わらない、 いや、ネット等で情報が瞬時に飛び交う今だからもっとたちが悪くなっているのかも知れない。

だからこそこの映画を一人でも多くの人達に観て欲しい。

そして行商人の親方(永山瑛太が演じていた)が言った最後の言葉「朝鮮人なら殺してもいいのか!」は、あの映画を観ていた私達に向かって言い放った言葉かも知れないと思っている。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ

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