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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「12番目のカード(上)(下)」(著:ジェフリー・ディーヴァー/訳:池田 真紀子)

2017-06-18 00:42:57 | 【書物】1点集中型
 前作「魔術師[イリュージョニスト]」を読んでから実に2年経ってしまった。
 リハビリに取り組み出したちょっと前向きなライムの前に現れた新たな事件は、ライムの苦手な「子供」を連れてきた。やりにくそうにしているライムがなかなか新鮮である。かと思えば、捜査の過程でセリットーは思わぬトラウマを抱えることに。

 およそ人間らしい感覚を持たない周到な犯人は、今回も難敵。この犯人自体は読者にはわかっている状況で話が進んでいくが、その動機がわからない。わからないまま、犯人は少女を狙って新たな刺客を放ってくる。黒人の公民権運動、ハーレムに暮らす人々の様子など、ストーリーに重要な意味を持つアメリカならではの文化的な部分も勉強になる。
 ストーリーがそういう、現在の事件と140年前の謎を関連がわからないままに行ったり来たりするので、いつものライムシリーズに比べると展開のスピードは落ち着いて感じる。今までのシリーズ作品とまた違った味わい。上巻は肩慣らしって感じで(笑)、下巻に入って捜査チームに犯人が見えてきてからが本番。とはいえ、意外にあっさりと逮捕となった印象なので、まだまだ転回が待っている……という状況。

 要するに実行犯の後ろに何かがあり、それによってすべてが展開されてきたわけだが、その動機に基づく現在と過去の事件の結びつきの種明かしが最後にして最大の見せ場になった。ストーリー的にはボイドの戦術の緻密さも面白かったが、今回はやはりジェニーヴァの事件が解決してからがディーヴァーならではの大転回本番かと。何よりも、そんなに話が大きくなっちゃうんだ! という点に驚いてしまった(笑)。ラキーシャの話だけがちょっと尻切れトンボだった感じかな?