デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



白先勇『台北人』(国書刊行会)読了。訳者は『講座台湾文学』の執筆者および編者の山口守氏である。
『講座台湾文学』のなかで触れられていたいくつかの作品の内、とりわけ印象に残った作品の一つが、白先勇の『台北人』という"台北にやってきた人たち"が主人公となっているノスタルジアをテーマにした作品だった。
この作品、私にはかなり難しかったと思う。書いてある内容は理解できるのだが、作中の登場人物たちの人間模様や個々人の望郷の念のすさまじさに心底共感し得なかったゆえの難しさというべきだろうか。
とにかく、台湾現代史や台湾文学についての本を読んで少し台湾の歴史を知ったところで、『台北人』に描かれる失われてしまった故郷への絞めつけられるようなノスタルジックな思い、喪失の思いを到底理解できないという感じは私の中で強くのこった。
さらにいうなら、文芸作品でこれまで特異性がありリアリティー溢れる「ノスタルジー文学」をまともに読んだことがなかったのではないかとさえ思った。逆に言えば、私がこれまで読んできた主な西洋の小説に出てくる「ノスタルジア」はどこか遠い国の絵空事にすぎなくて、台北という都市が日本と地理的に非常に近いというだけでなく、現代の歴史も共有していることを意識させられる文芸作品でもってようやく、望郷や今や存在しない故郷や新たな土地に住んだ人たちの子孫(二世)が直面する「アイデンティティ・クライシス」について考えるきっかけになるのではないかという気がする。

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