田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ミイマ特製バラ手裏剣受けてみよ!!/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-11-12 10:29:16 | Weblog
5

「アイツラをこのまま見過ごすのか」
GGの声はひんやりとたものだった。
冷たい棺に横たわっているイメージにまだ支配されている。

「だったら、駅前通りの方にさそいこもう」
麻衣が低い声で応えた。
西武新宿駅前通りのほうで戦おうということだ。
花道通りを脱兎のごとく走る。
吸血鬼は血のしたたる口をあけて「おらぁ、おらぁ」と追いかけてくる。

麻衣たちはなれたもので、キャァ!!!!! こわい。
と黄色い声をあげて逃げていく。
GGは息を切らせながら追いかける。
そのGGを吸血鬼が調子にのって追いたてる。
めざすは、駅前通りの先の暗がりだ。
大久保方面に数分走った。
クノイチ48ガールズが走りこんだのは……。

麻衣はガールズが増えたのでGGの護衛についている。
GGと伴走している。
「けがさせるとミイマにしかられるから」といって、
舌をぺろりとだした。

解体中の雑居ビル。その駐車場。
「あんたたちは、おれたちをここにさそいこんだと勘違いしているよな。ここに追い立てられてきたのは、あんたらんなんだよ。わかるかな」
霊園でたたかったテツとトオルのコンビだった。
「おれたちの軍師、信行さまを滅ぼしたではないか。なにが共存共栄だ。ミイマにうまくだまされるところだった」

雑司ヶ谷霊園の前で、戦ったときよりふたりとも逞しくなっいいる。
この新宿の頭上に君臨する魔王の巨大な力が、権威が、彼らを強靭な吸血鬼に変えたのか。
テツのナイフのように長大な鉤爪がおそってきた。
「あまり、爪を長くするとろくなことはないぞ」
GG鬼切丸を抜き放った。
あらくれた悪鬼がいっせいに襲ってきた。
ガールズが苦戦している。
神代寺バラ園で戦ったときには。
翔子と純がいた。
ミイマがいた。
神代寺MV族の始祖とその一族がいた。
ボスの百子もいたではないか。
ガールズだけではかなりヤバイ。
得意の敵陣かく乱戦法もうまくいかない。

突然大地に伏せる。姿が消えたようだ。
中空に跳ぶ。うえから敵を襲う。
走る。その素早さ。分身の術、敵を幻惑する。
伏せる。
跳ぶ。
走る。
斬る。
斬る。
跳ぶ。
伏せる。
走る。
その技が効果が上がらない。
手の内を吸血鬼に読まれている。

GGは剣を地面に立てた。
 
麻衣だけはしっていた。
非常事態なのだ。
GGはわたしたちを救うために決断した。
あれを使う気だ。
麻衣にはわかっていた。GGがいつも腰にさげているサイドバック。
詰め込んであるものの正体が。
それは、ミイマがもしものときの、GGの防御にと心血をそそいで作ったものだ。

ミイマ手製のバラ手裏剣。
吸血鬼必殺のバラ手裏剣。

それがいまGGの手からガールズに迫る吸血鬼にむかって投げられた。
バラ手裏剣は吸血鬼の体に食いこむと、棘が成長する。
吸血鬼の血をすったバラの棘はのびるのだ。
だからいちど刺さると、ぬくことができない。

「なんだこれは」
吸血鬼が絶叫する。

ジイッと溶解音をたてて吸血鬼が消えていく。
ジイッと妖怪が音をたてて溶けていく。
あたりは悪臭が立ちこめ、息苦しい。
GGはバラ手裏剣にミイマが心血を注いだという理由を理解した。
手裏剣には、ミイマの血が塗られていたのだ。
ミイマはじぶんが不在でもGGを守る手段を施しておいたのだ。
同族の血を吸収した吸血鬼は溶けてしまう。


悪臭の満ちる廃ビルの広がりの中でGGは感動していた。

あらくれてた悪鬼がたじたじとしている。

ガールズが戦機をとらえて反撃に出た。





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鹿沼にイノシシが出た。クマが出た/麻屋与志夫

2010-11-12 07:59:17 | Weblog
11月12日 金曜日

●「イノシシがでたよ」
第一報は小学生のクラスでツルちゃんからもたらされた。
イノシシがでたよ! イノシシがでたよ!! それからがたいへんだった。そのあとのクラスでも、イノシシの話題でもちきり。

●ホントかな?
鹿沼市として考えたら、クマが出ようが、イノシシがでようが、鹿がでようが、おどろかない。驚かない。

●鹿沼にもどってくるのは、塾の講義があるからだ。
もどってきても外にはでない。
食料を買いだしに小柄なカミサンのおともをしてベニマルまでいくくらいだ。
そのついでに、黒川の清流を眺めながら川べりを散歩する。たのしい。

●その鹿沼の郡部ならともかく街にでたというのだ。
ええ、ほんとかよ。そうだ、困ったときにはパソコンだぁ。

●ヒット。ヒットしました。ヤッパわが愛しのPC、ハルちゃんはすごい。

●上田町にイノシシが出た。出た。出た。
わが家から200メートルと離れていない。
原さんが。9日9時半頃、自宅近くの空き地で花の手入れをしていたところ、約2メートルはなれたところにイノシシが突然出没……

●これはたいへんなことだ。
のちのちまで語り継がれるような鹿沼の都市伝説になるぞ。
コレで死人でもでたら、さらにさらに、たいへんだ。
でも街のどまんなかにイノシシがでるまで。
ほかには目撃者はいなかったのだろうか。ね。

●こんどはクマがでたという。クマだ。サルだ。
もう、こうなったら街中、動物園になったような大騒動となっています。

●外には出ない。
これでは、出られないわたしの耳にもきけてきます。
消防で乾燥注意を車で呼びかけている。
イノシシがでたから注意してください。
とも言っているようにきこえてくる。
この問題どう決着がつきます事やら――。

●おバカな小説家は、これで吸血鬼がでたら!!……
ホラーな話でなく。ホラ話しですよね。

●「玄関を開けたら吸血鬼がいた」
短編の出だしとしては面白そうだ。
みなさんの騒ぎをよそに、世間知らずのおバカ作家は考えたものだ。
ほんとバカですよね。なんでもかんでも、小説のネタにしてしまいます。


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歌舞伎町の吸血鬼/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-11-11 07:34:50 | Weblog
4

「ほんとうなの、パパ」
「公安から連絡が入った。日名子さんの失踪はみずからのもので、原因はどうも家庭にあるしい」
品川にあるペンタゴン日本Vセクション支局長のプライベートルームだ。
翔子は父と向かい合っていた。純もいた。
「さらにおどろいたことには、テロが絡んでいる」
「それは? 」
「テロ組織の暗躍があるという推察は、わたし達のソシキの見かただ」
「アメリカはテロ被害の先進国だものね。わたしたちにはテロといわれてもあのオウム真理教が起こした事件くらいしか思い当たらないものね。敵はアルカイダみたいな組織?」
「わからない。いままでの吸血鬼がらみの刺殺事件はこれからもつづくだろうがな……」

若者が、なにも知らずにいる。
男が髪型に悩んでいる。それもいい。
男がやファッションに悩んでいる。悪くはない。
男がガールフレンドへのプレゼント。
彼女の歓心を捕らえようと必死だ。
いいなぁ。平和すぎる。
でも国の未来に心をはせるものはいないのか。
平成の竜馬はいないのか。
正義に生きる。
信念にいきる仲間はいないのか。
純は元先生、いまはVセクションの室長。
勝則の言葉を聴いて思った。

翔子の携帯が鳴った。
麻衣からだった。
GGがいまは、酔いから覚めたが、バイクのうしろにはまだ乗せられない。
大立ち回りしたあとだから疲れてるみたい……。

「純の車でいくね。歌舞伎町交番。百目鬼さんのとこね」

宵の街。
このところめっきり冷え込んできた。
交番をでると魔界だった。
酔いの冷めたGGは交番にじっとしていられなかった。
酔っていた。
かつての親友ジャズマンの沼尾聖のことをあの刹那。
想いだしていた。
フラッシュバックのようだった。
沼尾は遠いむかし、湾岸道路がてぎたころバイクで自爆していた。
ダンプとの衝突事故だった。
木馬だって、廃業している。
GGの青春がいっぱい詰まったジャズ喫茶だ。
沼尾と別れたのもここだった。
沼尾とは故郷の北小学校で一緒だった。
おれはまだ沼尾の伝記を書いていない。
沼尾との約束を果たしていない。
GGはまた、年寄の感傷にひたっていた。
「早く戻ってこいよ」と別れ際に沼尾がいった。
おれは確かにもどってきた。
この街に。
だが……もう聖ゃんはいない。
あれから何年過ぎていると思うのだ。
歌舞伎町を歩きだしていた。
麻衣たち、ガールズがひそかに影護衛をつとめていた。
いまなら見える。
死神が。
吸血鬼が。
若者の新鮮なエネルギーを吸い取る。
文字通り生き血を吸うようなヤツらがいる。

「おれたちが見えるのか? おれたちがみえるのか」

ここは魔界だった。
あの頃見えていれば。
沼尾のそばにいれば。
死神が見えていれば。
事故は未然に止められていた。
なにも見えていない。それが若さだ。羨ましい。
見えないほうがいいこともある。

「おれたちが、みえているのか」

学生だ。酔って早稲田の応援歌を喚いている。
野球と駅伝のダブル優勝で盛り上がっているのだろう。
スクラムを組んでさわいでいる。

その背後に声の主はいた。
「おれたちが、みえるのか」
「よせ!!」
GGは絶句した。止めるには遅かった。

スクラムを破るように暴漢が学生に体当たりをした。
ナイフを手にしている。
ナイフから血がしたたっている。
学生のわき腹から抜いたナイフだ。
男は明らかに憑かれていた。
憑依されている。

GGの目前での殺傷事件だ。
刺殺魔は虚ろな目をしている。
GGに声をかけていたモノたちの姿。
浮き出てきた。さらに鮮明になった。

鮮血をなめだした。
鮮血をすすりだした。
吸いだした。
吸血鬼の群れが学生に覆いかぶさった。
ズルズルと血を吸っている音がする。
見る間に――。
学生の顔から血の気がひいていく。
またしても、止められなかった。
GGは吸血鬼の群れに斬りこもうとした。

「だめ。GGやめて。いまはヤバイよ。ここではヤバイよ。パフォーマンスでした……では、すませられないよ」

麻衣に背後からとめられた。
はがいじめだ。
GGは動けない。
体が急速に冷え込んだ。

冬の棺の中にいるようだった。



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GG歌舞伎町にただよう/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-10 09:23:45 | Weblog
3

おびただしい拍手が起きた。
おびただしい笑い声が湧いた。
おびただしい賞賛の声。

「路上のパフォーマンスかしら」

クノイチガールズがつぎつぎと駆けつける。
観衆にはルシファーの姿は見えない。
GGとクノイチガールズの剣の先に魔王が存在している。
でも、かれらには視認できない。 
必死で魔王との攻防に賭けるガールズとGGの剣にでも彼らは気づいた。

「竹光じゃないみたい」
「摸擬刀じゃないよ」
「キャア。『GG刀エクササイズ』の師範だぁ」
GGの顔をしつている女の子がいた。
「あれ真剣よ」
「わぁ、カッコイイ。サムライだあ」
 もうたいへんな騒ぎになった。
「後日、あいまみえよう」
GGの脳内にルシファーの思念がながれこんだ。
現われるのもふいであった。
さにに見事な消滅。
あとには、なにも残らない。

「これでは、後の追いようもない」
GGはゴールデン街をぬける。
「なんだこれは……?」
歩きだしたらさらに酔いがまわってきた。
酔いは、さめていたはずなのに。
……おかしい。

GGは木馬の階段を下りていた。
(おおい。沼尾いるか。スチールギター弾いているか。聖くん、アソビマショウ。いやちがう、木馬はジャズ喫茶だ。ダダッ広い店内だがライブハウスじゃない。沼尾、聖ちゃん、今君はどこで演奏しているんだぁ)ふいに、ギターの音が起きる。いるじゃないか。おれのすぐそばに、いるじゃないか。死んでなんかいない。うれしくて涙があふれた。
「GG、さあいきましょう。こんな階段で寝てしまってはだめよ」
「GGって泣きジョウゴなの……?」
ああ、むかしはヨカッタ。
ムカシはよかった。
GGはよろよろと歩きだす。
ガールズに両側から支えられて。
歳を重ねることの恐怖。
ジジイになることの不安。
いつか、ミイマとの別離がやってくる。
それがこわい。
それが恐ろしい。
Fとの思いでを断ち切ったミイマは強い女だ。
最強のMVだ。
おれは暗黒魔王に魂をうりわたしてもミイマのそばにいたい。
別れるのはいやだ。
「だったら、GG……ミイマに噛んでもらったら。噛んでもらったら」
麻衣の声がエコーとなって耳もとにひびく。
麻衣の顔が魔王の顔とダブル。
「いまからでも、遅くはないぞ」 
ああ、かぎりない高みから。
あるいはすぐ隣から。
おれに憑けいろうとしているものがいる。
ああ、おれの妄想のよき広がり。
都会の夜よ。
都市伝説よ。
ここに生まれでるのだ。
くるくる変わるイメージと魔王の念波から逃れたとき、GGは歌舞伎町交番にいた。
「そうか、翔子ちゃんのオジイチャンなのだ」
麻衣が恐縮して謝っている。
相手は百目鬼刑事だった。
「日名子さんの事件、やはり誘拐も、こんどの行方不明もじぶんから仕組んだことらしいですよ」
百目鬼が声をひくめた。
GGは一気に酔いがさめた。





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読書会を作りませんか/麻屋与志夫

2010-11-10 00:28:42 | Weblog
プログです。

11月10日 水曜日

●かつての文学仲間Kさんのブログを愛読している。
毎日読めないときは、一週間くらいためて、ゆっくり味わいながら読む。
そんな読み方をしている。
社会、文化、政治、と彼の守備範囲は広い。
特に最近の日本の将来を読み解く論評には感銘している。

●菅さんが首相となり、小沢さんが落選した時にはがっかりした。
マスメディアの選挙中の取り上げ方にも問題があったような気がする。
ともかく金銭問題ばかり表面化させた。
あれでは小沢一郎の印象を悪くする一方だった。
清濁併せのむことのできる最後の政治家。
ぜひとも小沢内閣の実現を見たいと思うのはわたしだけではないようだ。
Kさんの論評がうれしかった。

●Kさんは、いろいろな役職を務めていて忙しい人だ。
コメントを寄せていいものやらと……といつも迷う。
今回だけはあまりに同意見でうれしかった。
コメントをいれた。
その日のうちに、彼のブログてわたしのことに言及してくれた。
あいかわらず、打てば響くような男だな。
うれしかった。

●さて、話はかわる。
地方の抱えている問題は中央で活躍しているひとには理解できないらしい。
過日ある学校で高名な教育評論家の話をきいた。
あまりにこの地方のことを知らないので落胆した。
落胆どころか憤りすら感じた。
文武両道だから学問ばかりしないで運動の好きなお子さんを育ててください。
そんなことを言っていた。
まったくこの地方の実情とは反対の意見だった。
これ以上書くと市民の顰蹙をかうので止めておく。

●わたしはいまプログで「さすらいの塾講師」を連載している。
日本の将来を憂いている(右翼的意味ではなく)。
したがって日本の男性の気概のなさ、とくに若者の気骨のなさには絶望している。
そこで女の子、クノイチガールズの活躍を書いている。

●気骨とか国の将来を担う勇気は、読書によって養われる。
一冊の本も読まないで大人になっていく学生がいる。


●インターネットで人とつながっている。北関東の小さな田舎町に住んででいても、こうしてひとびととつながっている。と感じている。でも間違ってはいけない。もちろんわが愛するPC、ハルちゃんの恩恵にあずかっている。だが真にわたしを孤独な老人であることから救ってくれているのは、読書によって培われた文章を書く知の力、言葉ではないのか。


●学校での読書クラブは、この前も書いたが全滅。
だったら大人の、社会人が集まって昔のように読書会でも結成すればいいのに。

●「さすらいの塾講師」はホラー、怪奇小説のカテゴリーに属する小説だ。

●でも、わたしが一番恐怖を覚えるのは言葉を知らない、文章を書けない、意見を述べられない世代が育っていくことだ。おお怖い、怖い。




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若者の夢を喰うもの/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-09 11:12:02 | Weblog
2

やはり、新宿。
やはり、歌舞伎町。
やはり、ゴールデン街。
酔客の手垢で黒光りしているカウンター。
懐かしい木のぬくもり、
青春の希望と挫折の想いでをいっぱい載せたカウンター。

GGは店をでた。
アミダクジのように歩く。
迷路となっている細い路地を歩く。
その奥まったところに!!

なんだこりゃ。
『GG小劇場』のネオンサイン。
GGはGGというキャピタルレタの並列をみた。
じぶんが呼びかけられた錯覚にとらわれる。
ゴールデン 街の頭文字をとったのだろう。
と納得するまでに少し時間がかかった。

「いや、村木。お前さんに呼びかけているつもりだよ」

いやらしい声。
へつらい、お追従に満ちた態度。
もみ手までして、いらっしゃい、いらっしゃいといった感じ。

「ここは若者に夢をみせるスペース。音楽、演劇、トークショウ、絵画展……なんでもいい、このスペースから夢の通路がひらけます。て……とこかな。どうだ、村木さんいまからでも遅くはない……」
「むかしのおれだったら、むげに断っただろう。あっさりと拒んだはずだ。でも……こんなジジイを誘惑してくれるなんて、あなたも小まめなことだな。ありがたいとも思う」
「ならどうだ」
ネオンの輝き。
プラズマの光のなかからのこのこと小男がでてきた。
「署名しないか」
見おぼえのあるあの羊皮紙を取りだした。
「太く短く、おもうように生きるのも一つの人生だと思うようになった。ただそれだけのことだ。オイシイ申し入れだが、断る」
「やはりな……」 

小男がぐぐっと巨大化する。
「あまりに……も……知られ過ぎているからな。推参」
「参る!!」

GGはいつでも抜刀できるように腰を落として構える。
「GG。なに独りごといってるの」
クノイチ48のひとり麻衣。
黒のジーンズに皮ジャン。
夜なのに黒いサングラス。
ヤンキーオネエチャンに。
見える。

「モニターみてみんな心配しているよ。ミイマが留守だから、GGがゴールデン街で浮気でもしたら困るって。監督不行き届きでミイマに叱られたらどうしょうってさ」
「麻衣!! 伏せて」
さすがガールズ。
殺気を感じた。
とっさに、ビンボーゥダンスよろしく、上半身を後ろに倒す。
GGの残り少ない頭髪を二三本むしりとった。
麻衣のサングラスをふきとばし。
透明な颶風はおまけにGG小劇場の立て看板をバタバタと倒した。
ドミノ倒しのようだ。
「麻衣ちゃん、そのほうがいいよ。キレイナ目している」
「ありがとう。ねね、だれかその辺に穏行しているの」
さすがクノイチいうことがちがう。
「隠れてなんかいないょ」
プラズマの光のなかから、巨大化したルシファーが現われる。
「きゃあ。イケメンダァ」
麻衣にはソフトバンクの白戸家シリーズ。
の……新しいパパのように映るのだろう。 
バカな。
あいては、魔王だ。
どんな姿にでもじぶんを見せることができる。

GGは鬼切丸を抜く手も見せず魔王にたたきつけた。
バット青白い光がくだけた。
プラズマ体の魔王に刀がくいこんだ。
「あぶないな。不意打ちの居合い切りとはひきょうな」
「それがなにか」
ハケンの品格のセリフを麻衣がかえす。
麻衣にも敵が見えてきた。
でもたじろがない。
「麻衣ちゃん。スケットするわよ!!」
神代寺バラ園での戦いからは、勇気凛凛のガールズだ。
新宿をパトロールしていた仲間がつぎつぎに駈けつけた。
ヒュルヒュルと空気が刃もののように襲ってくる。
「木霊反し」
麻衣の構えた刃の上を鋭い空圧が上空へと誘導される。
上の方で音。
こんどは劇場の表看板が飛び散った。
「避けて!!」
麻衣が叫ぶ。
轟音とともに横五メートルもありそうな看板が落下した。

表の騒動に、劇場から観客パニクッテ飛びだしてきた。
みんな夢見心地の顔をしたままだ。




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悪魔との契約/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-08 12:58:43 | Weblog
第七章 吸血鬼回廊

1

いつのまにか吸血鬼に取囲まれていた。

……GGは夜の新宿の街にさまよいでていた。
ミイマを誘った。
しばらくぶりで孫たちの顔が見たいと断られた。
めずらしことだ。
彼女は孫たちにはひとりで会いにいくのが好きだ。
むかしから――恐れていた。吸血鬼の報復をおそれていた。
BV(ブラックバンパイア)は妬んでいる。
憎んでいる。
人とのあいだに子どもを産めるMV(マインドパイパイア)を羨望している。
嫉妬されてきた。
孫に災禍がおよんではと心配しているのだ。

ミイマはFとの思いでの整理がまだついていないのだろうか。
それで孫たちに会いたくなったのだろう。
自分なりのルーツを確かめたくなったのだろう。

ミイマが好きになるほどの男だ。
歴史に名をなすほどの男だったのだろう。
政治的な失脚の悔しさから復讐に狂った。
そして吸血鬼に身をゆだねてしまったのだろう。
哀れな流転だった。

おれが、おれごとき人間が、ミイマを独り占めしていいものなのだろうか。

吸血鬼がついてくる。
吸血鬼は迷っていた。
同じ種族の匂いがするのだろう。
やはり軽く噛まれているのかもしれない。
でなかつたら、人間としたら若いほうだろう。
口でいっているほどには、老いを感じていない。
破笠弊衣の一老叟。
こうして街をさまよっていると芭蕉の放浪を想い起こす。
おれは芭蕉よりもすでに20年以上も生きている。

――われらは、芭蕉よりもさらに昔より存続している。吸血鬼の群れから声がした。むろん普通のひとにはきこえていない。
――そうだろうな。信行さんと美魔の道行をみているのだろうな。
――妬けるか?
――襲ってきたらどうだ。
――GGなどと自称しているが、お前若すぎる。噛まれているのか?
――おれを襲って、確かめたらどうだ。血を吸ってみたらどうだ。
――溶けるのはきらいだ、いったん溶けたら再生がきかんからな。

護符のようにGPS機能付きの携帯電話をポケットにしのばせていた。
おれになにかあれば、玲加が気づくだろう。
いつのまにか吸血鬼の気配は消えていた。
六本木。
広尾。
渋谷。
原宿。
新宿
秋葉原
上野。
品川。
を巡る……吸血鬼の回廊ができ上がっているようだ。
吸血鬼の山手線だ。

それを確かめたくてGGは新宿まで来ていた。
これらの盛り場は暴漢によるナイフの凶行が起きている。
凶悪事件現場をつなぐと回廊のようになる。
とても、人に寄る刺殺事件とは考えられない事件が乱発している。

吸血鬼はみずから犯行には及ばない。
ひっそりと血を吸う。
被害者は路面にはそれほど血を流していない。
それなのに失血死するケースがあった。
腐肉をあさるようなことをして……。
あさましいthem(やつら)だ。

Fはわたしとは軍師だといっていた。
Fが消滅したのに、まだおれをねらっている。
吸血鬼がおれのスキをうかがっている。

Fを軍師として使役していたもの。
――それは魔王だろう。
決して姿を見せない。

堕天使。ルシファー。

どこに潜んでいる?
この吸血鬼回廊のどこかに潜んでいるはずだ。

昨夜のように夜空に稲妻が光った。
 
雷鳴はとどろかない。
プラズマの発生が感じられる。

肌にただひりひりと刺激がある。
プラズマだ。稲妻だけがジグザクに濃い藍色の空を切り裂いた。
――そうか。お前か。想いだした。わたしが作家として世に送り出してやろうとしたのを、たつたひとりあのとき拒んだ。お前だったか。
――羊皮紙に署名を求められて、ビビっただけですよ。
――油断のならない奴だ。わしの存在をあのころから嗅ぎとっていた。
――NやKは契約履行、もう呼び寄せたのですね。Tも呼びましたね。
GGよりも一回りも若い作家の名前をいってみた。
――若くして栄冠をかちとったのだ。もういいだろう。どうだ、いまからでも、遅くはない。契約しないか。〈目の前にくすんだ茶色の羊の皮が置かれていた〉署名するだけでいいのだぞ。

いつしか……ゴールデン街の飲み屋にいた。
酔客の手垢で黒ずんだ木製のカウンター。
「村ちゃん。なに見てるのよ。わたしの手、皺くちゃでしょう」
「いままで、隣にだれかいなかった?」
「なにさ。ひとりではいつてきて……横田いるかなんてわめいて」
「そうか……あまり懐かしかったのでな。まだママの店があるとは意外だった」
「横田さんも早すぎるわよねぇ。でもあのころのひとみんな立派な作家になって……。夭折して。村ちゃんの仲間ってどうなってるのよ。ところで、あれからなにしてたの」

隣にだれも座っていなかった。
だれもいない。
いない。
GGは酔いがさめてしまった。



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「三丁目の夕日」の世代 麻屋与志夫

2010-11-08 08:31:33 | Weblog
プログです。
11月8日 月曜日

●新聞配達のバイクの音が狭い袋小路にひびいた。
わたしの家の前だけは時間が止まっているような風情がある。
だいたい住んでいる人間が生きながら化石人間化しているような物書きだ。
昭和の雰囲気をのこしたままの「アサヤ塾」をいまだに主宰している。
それでなんとか食いつないでいる。古い人間だ。

●どういうふうに古いかというと『ALWAYS 三丁目の夕日』の世代である。
K大学にかようので下宿した青山一丁目。
速水さんの下宿から東京タワーの基礎工事をしているのを見に行ったものだ。
その夜近所に火事があった。
タクシーで……物見高いは江戸の常、というか大勢の人が集まって来た。

●東京では「馬が車に乗る」。と感心した。

●このオヤジギャグは解説が要るようですね。
ヤジウマがタクシーで集合してきたのを見た田舎者の正直な感想だった。

●あのころだって既に小説を書いていた。
「文芸首都」に木村正一の本名で参加していた。
古いですね。それにしてもこのシンポのなさ。あきれます。

●話は、ズズと下がって「異形コレクション」は「魔地図」の公募作品の佳作にひろってもらった。長い、ながい冬眠から覚めたところだったのでうれしかった。走りだした方向にまちがい、と自信がわいた。『今回最年長七十代の寄稿者だが瑞々しい発想。』と井上雅彦氏が敬老精神を発揮してくれた。山手線の駅を乗すごしてしまった。「進化論」では、『独自の獣人神話体系を展開する常連で、毎回、愉しみにしている。今回はいつも以上に私小説に傾いているように思われるが、新たな神話を産み出すのに必要な作品かもしれない。』この批評には、驚いた。背筋が震えた。プロの読み手の怖さ。何もかもオミトオシダ。じつは、あれはC型肝炎からやっと回復した時の経験を書いたものだった。

●あれからでも、すでに五年もたっている。無情迅速。時人不待。

●今朝、新聞配達のバイクの音が狭い袋小路にひびいた。ブログを開いたところうれしかった。

●参加しているブログ村のホラー・怪奇小説ランキング一位、人気記事一位のダブル一位になっていた。みなさん、ありがとうございます。GGにはなによりの励ましとなりした。

●「さまよえる塾講師」のほうは昼ごろにはアップします。なにとぞ引き続きご愛読ください。

●反省しています。
井上氏に指摘していただいたように、わたしの作品はどうしても私小説の尻尾がついてます。この二三日GGの追憶が「さすらいの塾講師」でも前面にでてしまっています。いいかげんでやめて、storyを進捗させますね。でも、ブログと小説と両方読んでいただいて裏ネタを探すのも一興かと思います。

●あまりうれしかつたので、つい癖の私事を話してしまった。


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夜風の中のミイマ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-07 01:27:46 | Weblog
11

Fが溶解した。
戦っていたBVが動きを停止する。
起きるはずのないことが――起きた。
軍師が倒された。
Fの実体、Fの肉体が青みどろの粘塊となり、粘液となった。
溶けてしまった。
それをみて、ショックのあまり、かれらは、戦いを放棄してしまった。
電源をきられたロボットのようだ。
すばやく撤退していく。
「追うことはない」
父が言っている。
GGがミイマの肩を抱いた。
ミイマはまだ泣いている。
まだ少女のようだ。
GGは年相応の加齢に身を託している。
ミイマは抗加齢協会からその秘訣をききにきそうな若さだ。
もっともその実年齢をしったら卒倒するだろう。
年より若かくみえる。
00歳は若いですね。
そんなお世辞で表現できる段階ではない。

知り合ったころと変わりない。
艶々とした黒髪を愛撫しながらGGは無言だ。

ミイマは泣いている。
愛には歳の流れなど関係ないのかもしれない。

ミイマとの出会いがなかったら……。
いまある、このような生きかたはしていないことは確かだ。
それがどのような生きかたであるにしても、おれはこの生活で幸せだ。
いつもバラに囲まれていた。
バラの芳香の中で夢のような時の流れに身を置いてきた。
幸せだった。短い人の命の営み。
老齢にたっして……。
じぶんは幸せだったといいきることのできるものは数少ないだろう。
その数少ない幸運にめぐまれたおれはひとりだ。
ミイマの存在か愛おしくて、貴重なモノに思える。
GGも……もらい泣きしていた。
つらかったろう。
悲しかったろう。
ミイマのことだ。
この決断、Fを倒したことを長い時間かけて悔やむかもしれない。
玉藻の前の最終戦争に遅れて駆けつけたことを悔い。
千年眠りつづけたミイマだ。(拙作奥様はバンパイア参照)
みんなが引き揚げていく。
翔子と純。
玲加。
百子とクノイチガールズ48。
義父と神代寺一族。
戦いの後のうつろな、さびしさ。
そこには勝利の雄叫びを上げるような華やかさはない。
まかりまちがえば、GGたちが敗北したかもしれないような強敵。
吸血鬼の軍団(れぎおん)だった。
雷鳴は遠のいた。
肌寒さを感じる夜風のなかでGGとミイマ。
人とMVのミイマは静かに立ちつくしていた。

夜風がミイマの美しい黒髪にそよいでいた。



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思い出のリルケのバラ/麻屋与志夫

2010-11-06 23:07:42 | Weblog
プログです

11月5日 金曜日
●塾の教室の引き戸を開けた。
塾生を送りだした。
これで一日の授業時間は無事終わったことになる。
22時になる。
黒々とした狭小庭園にバラが光っている。
ウナギの寝床みたいな庭だ。
25mほどの長さはあるが、幅は3mほどしかない。
そのささやかな広がりの中。
ミイマの庭のシンボルフラワー。
赤いリルケのバラが咲いている。
わたしの好きな白いアイスバーク、初恋の花。
塾生が去って静寂をとりもどした教室からわたしは眺めている。
黄色いバラ。
紫のバラ。
淡いピンクのバラ。
赤く小さく愛らしいマザーズデイ。

●K病院でSクンのお母さんに声をかけられた。
最近街などを歩いていてもときどきすれちがうときに挨拶される。
かつての塾生のお母さんたちだ。
いままでに何人の塾生を世に送り出したことだろう。
一時期は270人も在塾生がいた。
いろいろな職業について、社会でみんな元気に働いている。
工事現場などから「先生」と声が飛ぶ。
こんなときが一番うれしい。
ああ、元気に働いているな。

●バラの庭をみながら塾をはじめたころのことを考えていた。
よくもいままでつづいてきたものだ。
教育熱心な家庭にささえられてこまできた。
そろそろ新入生の増える時期だ。
おおぜい入塾してくれるといいな。
師走にかけての毎年の悩みだ。
ことしはどんな子供たちとの出会いがあるだろうか。

●昭和の雰囲気をのこしたままの、昔とすこしもかわらない教室。
立派な社会人となったみんなの、落書きがある机。
教室の壁。
Kクンが初恋のN嬢の名前を彫った机を先日たまたまみつけた。
今、ふたりはどこにいるのだろうか。
むすばれたのだろうか?

●リルケのバラを見あげる。
「さすらいの塾講師」の裏ネタがあふれているわが生活をかえりみていた。
鹿沼での塾生との生活が小説のなかに生きている。
それがどの場面かは読む人が楽しみながら探りあてていくことだろう。

●小説のなかでは、ミイマが元彼のFとリルケのバラの鞭で戦っている。




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