田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夜風の中のミイマ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-07 01:27:46 | Weblog
11

Fが溶解した。
戦っていたBVが動きを停止する。
起きるはずのないことが――起きた。
軍師が倒された。
Fの実体、Fの肉体が青みどろの粘塊となり、粘液となった。
溶けてしまった。
それをみて、ショックのあまり、かれらは、戦いを放棄してしまった。
電源をきられたロボットのようだ。
すばやく撤退していく。
「追うことはない」
父が言っている。
GGがミイマの肩を抱いた。
ミイマはまだ泣いている。
まだ少女のようだ。
GGは年相応の加齢に身を託している。
ミイマは抗加齢協会からその秘訣をききにきそうな若さだ。
もっともその実年齢をしったら卒倒するだろう。
年より若かくみえる。
00歳は若いですね。
そんなお世辞で表現できる段階ではない。

知り合ったころと変わりない。
艶々とした黒髪を愛撫しながらGGは無言だ。

ミイマは泣いている。
愛には歳の流れなど関係ないのかもしれない。

ミイマとの出会いがなかったら……。
いまある、このような生きかたはしていないことは確かだ。
それがどのような生きかたであるにしても、おれはこの生活で幸せだ。
いつもバラに囲まれていた。
バラの芳香の中で夢のような時の流れに身を置いてきた。
幸せだった。短い人の命の営み。
老齢にたっして……。
じぶんは幸せだったといいきることのできるものは数少ないだろう。
その数少ない幸運にめぐまれたおれはひとりだ。
ミイマの存在か愛おしくて、貴重なモノに思える。
GGも……もらい泣きしていた。
つらかったろう。
悲しかったろう。
ミイマのことだ。
この決断、Fを倒したことを長い時間かけて悔やむかもしれない。
玉藻の前の最終戦争に遅れて駆けつけたことを悔い。
千年眠りつづけたミイマだ。(拙作奥様はバンパイア参照)
みんなが引き揚げていく。
翔子と純。
玲加。
百子とクノイチガールズ48。
義父と神代寺一族。
戦いの後のうつろな、さびしさ。
そこには勝利の雄叫びを上げるような華やかさはない。
まかりまちがえば、GGたちが敗北したかもしれないような強敵。
吸血鬼の軍団(れぎおん)だった。
雷鳴は遠のいた。
肌寒さを感じる夜風のなかでGGとミイマ。
人とMVのミイマは静かに立ちつくしていた。

夜風がミイマの美しい黒髪にそよいでいた。



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