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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

レアで召し上がれ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-18 08:18:53 | Weblog
10

改札を出ようとした。
何処からともなく声がふってきた。
電子音だ。どことなく、ぎこちない。

「ビジターのかたですか」
バーはトウセンボしたままだ。
翔子はそこで、雑司ヶ谷霊園の地下でのことを思いだした。
霊園では無機質な扉に阻まれた。
こではバーだ。
ここをすぎれば、MDZ。最危険地帯。

「ビジターのかたですか」

「はいはい。これでどう」

霊園で、吸血鬼よけのお守りといわれて購入した。もっとも無料だった。
そのIDカードを認識パネルのうえにだした。
「どうぞ。よくいらっしゃいました。アミュレットもどうぞ」
腕に巻いたままのアミュレットを改札の窓ぐちに見せる。
カメラがしこまれている。ピカッと光った。

街は白昼。
でも太陽はアングラだからもちろんでていない。
光源もどこにもみあたらない。
それどころかヒト? も見当たらない。
「なによこの街、百子」
「竊斧――セップかも」
「接吻? 切腹? 百子どうしたの。難しいことばかり言うね。結合なんてコトバも教えられたそ」
「しっかりしてよ。翔子。来年は受験生でしょう」
「忘れていたのに」
「その目で見れば、すべてがそう見える。列子にでてるんだって」
「ムズカシイ」
「父にしこまれたのよ。忍者の心得なんだって。敵の町や城に忍んでも、その目で見ると、本当の状況や、敵の姿がみえてこない」
「そうか。ここが吸血鬼の街だとおもいこんではいけないってことね」
「わたしたちの住む町には吸血鬼はいないとおもって、みんな生きているものね」
「固定観念にとらわれるな」
「翔子だって、難しいこと言うね」

翔子も百子も現実離れした会話をしている。
本人たちは気づいていない。
明るすぎる。なんの変哲もない。街。
だがどこかおかしい。不気味ですらある。
そのことには触れたくない。
それで難解なことばかり言っている。

「大江戸スパにようこそ」

やっと見つけだしたモール。
そのなかのスーパー。
そのさらに奥のスパ。
入ったのがまずかった。
またもや、メカ音。あまりに爽やか過ぎ。妖気をかんじてしまう。

「キンゾクセイノモノは棚においてください」
「洗い場でよくシャワーを浴びてから入浴してください

「やだぁ。これって『注文の多い料理店』じやない」と翔子がしりごみする。
「逃げよう。翔子」
スパ仕様の場だぁ!!
逃げる。
ヒトでイッパイノのモールを抜ける。
逃げる。
逃げる。

街にもどつた。

「こわかったよ。餌にされるとこだったね。百子」
「翔子、あれみたぁ。アイツラ、なかまの部位を集めていた。再生するためじやないのよ。ステンレスのboxに腕だの足だのいっぱいあったよ」
「だってなかまの血を吸えば、じぶんも溶けちゃうのでしょう」
「だから、化学的に処理しているのよ」
「怖いことね」
「怖いよ。翔子。仲間を蛋白源にしてる。レアな蛋白をレアなまま食べちゃっている」
「こんなとこで、戦えないよ。百子はやく逃げよう」



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