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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

靴だけが焼け残った/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-21 07:10:46 | Weblog
12

「吸血鬼が忍法使うなんて、おどろきだね。百子」
決して驚いていない声だ。
「だって、わたしたちだって平成の世まで伊賀の忍法をうけついでいるのよ」
「あっそうか。吸血鬼は死なない種族だものね。戦国時代から生きのびているモノもいるわけか」
「忍法はもっと古いのよ。南北朝時代に大塔の宮が長持ちのなかに穏行して難を逃れた古事もある」
「うわぁ。百子って博学なんだ」
「宮に穏行の術を指南したものがいるはずよ」
「そうか……すごいね」
タカの壮絶な死を見た。止めることができなかった。
落ちこんでいる百子を励まそうと翔子は明るく笑う。

ふたりは無事地上にでた。青山墓地だった。
タカの携帯に地上にでる非常階段の位置が記録されていた。
それで、マンホールから脱出できたふたりだった。

百子はタカを死なせた喪失感から立ち直りかけていた。
「おまえらも死ぬか」吸血鬼トオルだった。
「アングラから指令が来た。忍びこんだふたりは――やはり翔子し百子か」
吸血鬼テツがイヤラシイ顔でふたりをにらんでいる。

ふたりは待ち伏せされていた。

「翔子」
百子がこえを低める。
唇をかすかに動かしている。
「穏行してみせるね」
ちょうどいま話していた穏行。
実践してみせるというのだろう。
さっと墓石のかげに走りこむ。
トオルが配下のVと追った。
いない。
テツに回転とび蹴りをかませた。
翔子は墓石の上にとびのっていた。
墓石の影に百子はいない。
「ここよ」

黒々としてごつごつしている。
桜の幹の影でささやくような声がした。
左の墓石の影に逃げこむと見せ。
右の樹木と一体となっていた。
目の錯覚を巧みに利用した。
マジック。

「木トンの術」

百子の顔にようやくほほ笑みがもどった。
「タカのともらい合戦よ!!」
「敵がおおすぎない」
「ひとりでも多く倒す」
はやくも百子の刃がきらめいた。
Vが――青い血をふく。
青い粘塊となって溶けていく。

Vは二つの均等なグループにわかれる。
翔子と百子を襲ってきた。
不可視の敵は恐怖だった。
目に見えるVはウザイ。
怒号が入り乱れる。
「やっちまえ」
溶解した仲間をみて興奮している。
「喰らうてやる。おまえ、おいしそうだ」
「わからないの。バカモノ。わたしの剣には、ミネに銀メッキしてみたのよ」
「それで、アンナにカンタンにとけるのか」
「バァカ。イマゴロキヅイタノ」
タァ。
トゥ。
イァ。
リベンジをこめた気合い。
裂帛の気合が吸血鬼を襲う。
Vの群れはじりじりと、それでも包囲網を狭める。
多すぎる。
Vが多すぎる。

「殺せ。ふたりとも殺せ」
「百子。これって多勢に無勢ってとこね」
この期に及んでもまだジョーク。
「ヤバイことはヤバイわね」
でもふたりとも、肩で息している。
「翔子!! 上よ!!!」
翔子が油断していた。
Vがいったん墓石の上にとんだ。
そしてその高さをうまく使った。
上空から翔子におそいかかってきた。
避けられない。
鉤爪が翔子の喉元めがけて迫る。
ヒカッ。
閃光。
それも青白い閃光だった。
翔子をおそっていたV。
喉元ちかくまで迫っていた鋭利な鉤爪。
消えた。
瞬時にして光を浴びて消滅した。
「レザーガンと火焔放射器。これの完成を待ったのでおくれた」
「遅いよ。父上」
アングラに降りたとき。
百子が誰かに電話していた。
あの相手だった。

――その少し前。
百子のポケットで携帯が鳴った。
タカに託されたほうの携帯だった。
「はい。タカ」
うっと、息をのむがした声がした。
「その声は、百子??  だな」

「遅いよ。パパ」
「タカはおまえの、腹ちがいの姉さんだった」
意外な事実をきかされた。

悲しみがもどってきた。
百子のタカを失った悲しみはさらに深いものとなった。

迷彩服の兵士がVを攻めたてている。
青白いひかりが交差している。
携帯用の火焔放射器の威力だ
「自衛隊異能部隊です。隊長の百々です」

「娘がお世話になっています」
百子がいった。
父のかわりにいった。
父の言葉をひきついだ。
百子がテレテている。
涙ぐんでいる。

「タカ姉のお陰で、通路がわかった。吸血鬼の通路をのぼってココに出られたの」

Vたちの靴が焼け残った。
なぜか、靴だけが焼け残った。
墓石の間に散乱している。
明日、清掃に来た作業員の口から。
新たなる、都市伝説が。
転がっている半焼の靴から生まれるだろう。




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空蝉の術・依り代・里忍/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-20 06:25:11 | Weblog
11

駅前の広場まで……どうにか逃げのびてきた。
殺気は感じる。
それも妖気とすらおもえる。
不気味な殺気なのだ。
それでいて――いない。
だあーれもいない。
むわっとするヒトイキレさえ皮膚感覚でとらえているのに。

さっと身をかわす。
髪の毛が何本ももっていかれた。
かわしきれなかったら、カラダガ血をふいていただろう。

「こんなのって、戦いきれないよ、百子」
「翔子、弱音吐かないで。簡単なことよ。them(ヤッラ)は空蝉の術で攻撃してきているのよ。依り代に、紙の人型でなく、透明な極薄型のプラスチックのフイルムでも使っているの。吸血鬼の本体はモニタールームで血のカクテルでも飲みながら、観戦しているのよ」
「そうか。百子ってスゴイ」
敵の正体がわかった。
怖さがうすれた。

「百子さん?  百地組の統領の血をひく百々百子(どどももこ)さん……?」

駅前の噴水の影がエプロン姿の少女を突きだした。

百子はコクンとウナヅク。
ロリータールックに反応して幼い動きをみせている。
「これかけてみて」
3Dメガネのようだ。
「うわぁ。立体的に見える」
「もうひとつあります。これで戦って」
翔子は攻撃を仕掛けてきたものを斬り捨てた。

敵の姿がよく見える。
おびただしい敵にとりかこまれている。
いままで無傷で逃亡してこられたことが、奇跡だ。

「平和を願う気持ちには伊賀も甲賀もありません。ワタシは甲賀のタカ。これで地上に逃げてください。里忍(その土地に住み情報を収集する)の使命は、この携帯にすべて記録しました」

「いっしょにタカさんもいこう」
「ありがとうございます。百子さん。この敵をくいとめるのは下忍のつとめですから」
タカはふたりを改札から送りだすと、群がる敵陣にもどっていった。
「火焔車!!」
じぶんの体に火をつけた。
両腕を車のようにふりまわしていた。
プラスチックの依り代のなかにとびこんでいった。

「会えて、光栄でした」という言葉を百子に残して。

百子はタカとは、どう書くのか、ききはぐっていた。



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out of date GGのパソコン恐怖症/麻屋与志夫

2010-11-19 04:59:37 | Weblog
プログです

11月19日 金曜日

●生きていることが不思議だ。
GGは感覚が鈍くなってきた。
例えば、街を歩いても周囲の景色に感動しなくなった。
寂しいではないか。いままさに初冬。
周りの季節が静かに冬へと移り変わっている。
乙女のごとく感傷にひたって風景に溶けこみたいのだが。
どうも、そうはいかない。
ただぼんやりと街行く人を眺めたり、
せっかく大きくなたのに切られてしまった街路樹の切株を、
嘆きながら見おろしたりしている。

●ほんとうに、不思議な町だ。
せっかく成長した樹木をバッサリと切ってしまう。
木工の街だから木を切るのが好きなのかもしれない。
だからといって、せっかくのマロニエ並木を伐採することはないだろう。
校舎を新築するからといって、グランドの周囲の古い桜やヒマラヤシダを。
神社の境内のイチョウの木を。
しまいには、古い祠ごとそっくり倒してしまった。
古くなったわたしもそのうち塾ごと刈り取られてしまうのではないか。
おお、こわや。こわや。

●もっとも、これが年相応の感性なのかもしれない。
GGがイチョウの葉の落ちるのを見て……。
「ああ、ロクサーヌ」などと、シラノ・ド・ベルジュラックのセリフを口ずさんだら……キモイといわれそうだ。

●皮膚感覚もオカシイ。
風に反応しない。
風が吹いていることはわかる。でも感性としてとらえられない。
寒いからマフラーをして外出しよう。
そのていどなのだ。
あの外気に触れたときの。
ひりひりした新鮮さは。
どこにいってしまったのだろうか。
いまはカミサンとなっている、
むかし恋人だった、
目の前にいるSHEとはじめて手をつないで、
宇都宮は三の沢を歩いたときの、
ひりひりした感触はどにいってしまったのだ。

●サランラップに包まれているような感じだ。
息苦しい。
すべての事象にナマで触れていないような、
もどかしさがある。

●ロクサーヌを検索したら別世界だった。
いやぁ、マイッタ。
バンドとか、曲の名前。ゲームについて。歌手。スケーターが使った曲。
なにがなんだかわからない世界がひらけていた。

●このブログをかきだしたのも、
そうしたモヤモヤした別世界へのコンプレックスだ。
ネットサーフィンをしていた。この言葉だって死語だという。
たまたま『発狂した宇宙塵』というブログサイトにヒットした。
すごくおもしろかった。
コメントをいれた。
うまくいれられなかった。
これまた不思議な国におちこんだようなものだ。
パソコンそのものをうまく操作できない。
コメントをいれる操作がわからない。
情けない。
なんだかオカシナコメントがはいってスゴイ迷惑をかけたろう。
ゴメンナサイ。

●すごく落ち込んでいます。
きょうは「さすらいの塾講師」はお休みするかもしれません。
カミサンとはじめてdateした宇都宮の街をさすらってくる予定です。



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レアで召し上がれ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-18 08:18:53 | Weblog
10

改札を出ようとした。
何処からともなく声がふってきた。
電子音だ。どことなく、ぎこちない。

「ビジターのかたですか」
バーはトウセンボしたままだ。
翔子はそこで、雑司ヶ谷霊園の地下でのことを思いだした。
霊園では無機質な扉に阻まれた。
こではバーだ。
ここをすぎれば、MDZ。最危険地帯。

「ビジターのかたですか」

「はいはい。これでどう」

霊園で、吸血鬼よけのお守りといわれて購入した。もっとも無料だった。
そのIDカードを認識パネルのうえにだした。
「どうぞ。よくいらっしゃいました。アミュレットもどうぞ」
腕に巻いたままのアミュレットを改札の窓ぐちに見せる。
カメラがしこまれている。ピカッと光った。

街は白昼。
でも太陽はアングラだからもちろんでていない。
光源もどこにもみあたらない。
それどころかヒト? も見当たらない。
「なによこの街、百子」
「竊斧――セップかも」
「接吻? 切腹? 百子どうしたの。難しいことばかり言うね。結合なんてコトバも教えられたそ」
「しっかりしてよ。翔子。来年は受験生でしょう」
「忘れていたのに」
「その目で見れば、すべてがそう見える。列子にでてるんだって」
「ムズカシイ」
「父にしこまれたのよ。忍者の心得なんだって。敵の町や城に忍んでも、その目で見ると、本当の状況や、敵の姿がみえてこない」
「そうか。ここが吸血鬼の街だとおもいこんではいけないってことね」
「わたしたちの住む町には吸血鬼はいないとおもって、みんな生きているものね」
「固定観念にとらわれるな」
「翔子だって、難しいこと言うね」

翔子も百子も現実離れした会話をしている。
本人たちは気づいていない。
明るすぎる。なんの変哲もない。街。
だがどこかおかしい。不気味ですらある。
そのことには触れたくない。
それで難解なことばかり言っている。

「大江戸スパにようこそ」

やっと見つけだしたモール。
そのなかのスーパー。
そのさらに奥のスパ。
入ったのがまずかった。
またもや、メカ音。あまりに爽やか過ぎ。妖気をかんじてしまう。

「キンゾクセイノモノは棚においてください」
「洗い場でよくシャワーを浴びてから入浴してください

「やだぁ。これって『注文の多い料理店』じやない」と翔子がしりごみする。
「逃げよう。翔子」
スパ仕様の場だぁ!!
逃げる。
ヒトでイッパイノのモールを抜ける。
逃げる。
逃げる。

街にもどつた。

「こわかったよ。餌にされるとこだったね。百子」
「翔子、あれみたぁ。アイツラ、なかまの部位を集めていた。再生するためじやないのよ。ステンレスのboxに腕だの足だのいっぱいあったよ」
「だってなかまの血を吸えば、じぶんも溶けちゃうのでしょう」
「だから、化学的に処理しているのよ」
「怖いことね」
「怖いよ。翔子。仲間を蛋白源にしてる。レアな蛋白をレアなまま食べちゃっている」
「こんなとこで、戦えないよ。百子はやく逃げよう」



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闇に潜み捕食するもの/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-17 06:02:06 | Weblog
10

「いこうか?」
翔子はとても竹下通りに戻る気はしない。
こうなんども吸血鬼と遭遇するようではヤバイことになる。
携帯で撮られている。吸血鬼は映らない。
映らないからこそ、みんなが怪しみだす。
わたしたちは映っている。話題になっているにちがいない。
顔をしられると動きにくくなる。

「待って。ココおかしいよ。テントの跡、空洞ができている」
「ほんとだ。このまま放置しておいては、危険だわ」
「工事中というコーン標識でもたてようか」
歩きだしていた翔子に百子が笑いながら話しかけている。
「あの手榴弾には、こんな破壊力ないよ」
翔子も穴をのぞきこむ。
「階段がある。これって翔子、地下からの出口の上にテント張っていた。骨董店をよそおって仲間の死体回収に励んでいたってことよ」
「とんでもないもの見つけちゃった」

ここで引きかえせば、あたりまえの女子高生。
ここで地下への階段に踏みこまなければクノイチ48のリーダーじゃない。

あたりまえでない翔子は階段を降りだした。
女忍者の首領。百子は先頭切って……すでに先に進んでいる。

「携帯、ケッコウ、結合するよ」
「なによ。その結合って」
「ツナガルってこと。むかしはそういう重々しい言葉使ったんだて」
「メールなんかするようになって、日本語が軽くなったなんて……」
「だれが……?」
「うちの『白川郷』のにごり酒好きなオジイチャンも同じこというよ。どこにメールしてるの」
「バレタカ。まだまだ修行が足りないな」
「ゴマカサナイデ。百ちゃん……もしかして、彼氏? かな??」
「忍者に恋はご法度でござる。なぁんてね」

不安を隠すための陽気なオシャベリ。
薄暗い地下道をふたりは進んでいる。
ときどき、地下鉄の音がする。副都心線かしら。
地下鉄のシールド(トンネル掘削)工事のときに、この通路は堀った穴なのだろう。
施工主かゼネコンの経営陣にまで、吸血鬼のテリトリーはひろがっている。
そしてふたりは幻のホームにでた。ぐっと扉を押すとホームにいた。
あっと翔子はこころの中で声をだした。
これって、アノときの。
そうだ、翔子が見ている前で、池袋の地下鉄の通路が膨らんで吸血鬼を分娩した。
壁が膨らみスポッ吸血鬼を産みだしたように見えた。
すべてはあのときから始まった。お兄ちゃんにSOSのメールをした。
純、大好きな、彼氏。

「なに考えてるの」
「ベッニ」
「彼のことでしょう」

もしこのホームに人がいれば、わたしたちが壁から抜けだしたようにみえた。
あのときの吸血鬼もこうした、幻の通路からあらわれたのだ。
翔子は怖くなった。
この東京にはわたしたちの知らない地下通路が、吸血鬼回廊が至る所にある。
そうおもうと鳥肌だった。
人が消える。これでは当たり前だ。
アンダーグランドに引きずりこまれたら、お終いだ。
年間どれくらいの行方不明者がいるのかしら。
もどってきても吸血鬼になっている。
異妖を知覚する勘の鋭い人間でないとわからない。
戻ってきたものが、もはやニンゲンでないことを。

電車の来るはずのない地下鉄駅。ところが轟音を響かせて、来た。
駅名、到着をしらるアナウンスもない。
だが、ふたりは乗りこんだ。
行く先の表示もない。
幽霊電車に乗りこんだ。



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竹下通りに血の雨が降る/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-16 10:50:09 | Weblog
9

女子学生がオカシイ。
妙にうつろだ。ぼんやりとしている。
宙をみすえたようなメで竹下通りに群れている。
百子がまずそれに気づいた。
「どうみても、なにかに憑かれているようにみえる。ね、翔子。どう」

ふたりはoff。
めずらしくふたりだけで街に遊びに出た。
「ねね。泉さんがいないのでさびしいの」
「ああ、ごめん……」
翔子もこころが虚ろだった。
同世代の女の子と同じだった。
わたしも、あんな表情しているのだろうな。
そこへ、百子に話しかけられた。
リアクションが遅れたのだ。

「日名子は、とうぶん女子医大病院からでられないみたい。セキュリティつきの特室に入っているの。PTSD――心的外傷後ストレス障害……こころが正常に戻っていないの。自殺願望もあるシ。時穴に墜ちたりしてるシ。立ち直るのたいへんみたい。ソレデネ、純が日名子センパイのパパにたのまれて警護してるの」
「ああ、やつぱし泉さんのと考えていたんだ。副総理じきじきのオファーじしかたないわね」
「からかわないで、まじて゛心配してるんだから。美人の看護婦さんもおおぜいいるし」

ヘンに同情しない。
それはご心配ですこと。
などと大人びたこも言わない。百子らしい。

こうして竹下通りをながしていると普通の女の子。
タレントショップで小物をあさったりしてふつうの女の子。
かわいいシュシュにムネときめかせ、フツウの女の子。

百子がそれ気づいた。
翔子の髪にシュシュを着けてやっていた。
その手の甲にポツンと落ちた。
あら、天気雨。
ちがう。
赤い雫。
血。
血と思ったのは吸血鬼との戦いで見てきた。
毎日のようにす蘇芳色の血を見てきた。
初冬の空は雲ひとつない。ピンとはりつめた青空。
ポッンポッン。ポツポツ。ザ―。
キャァ。悲鳴がおきた。

降ってきた。血の雨が降ってきた。
そして肉の塊。
肉のコマ切れ。
多毛な腕。
足。
脚。
首。
どうみても鬼のもの。こうみても鬼のパーツだ。
キャァ。
竹下通りはときならぬ、ファフロッキ現象(そらから降ってくるはずのないものがふってくる現象)に見舞われた。
空がにわかに暗くなった。雷鳴はきこえないのに、稲妻が光る。
「来るわよ。百子」
「ヌカリないわ」
百子もギラリと刀を抜き放った。

明治通りに面した建築中のビルのわきにテントが張ってある。
お店のようだ。骨董屋かしら。古い鬼の面がテントの周囲にビッチリと飾りつけられている。
「あそこよ、あのテントに鬼さんの部位が集まっていく」

血の雨でぬらついている舗道。
逃げまどうギャルたちを押しのける。
彼女たちは真っ赤に血を浴びている。不気味だ。

「あのテントに鬼のパーツを入れないで」
「あのテントに蘇生装置があるのかも……」
「そうなたら……いままで鬼を倒したのがすべて」
「水の泡」

テントからBVとびだしてきた。
テツとトオルだ。
「あんたら、手広くいろいろやってくれるじゃないの」
と百子。
「なんで、おまえらがここにいる」
「わたしたちだって女の子よ」

雷鳴がとどろく。
通りのいたるところに鬼火がもえあがる。
プラズマだ。
空の稲妻と呼応して鬼火がさらに燃え広がる。
舗道に流れた血がイヤナ臭いをたてて蒸発する。
この臭い、この悪臭は翔子にはトラウマとなっている。
嫌悪感。頭がこんらんする。

「やるわよ」
翔子の手に手榴弾がにぎられていた。
GGにまねてサイドバック。
だが、手裏剣ではない。
翔子の持参したのはペンタゴン特製。
テロ制圧用の小型手榴弾。

それでもテントがふっとんだ。
「なんてことしてくれた」
テツとトオルが襲ってくる。
いき場を失った鬼のパーツは――。
ジュジュと音を立てて舗道で溶けていく。

「なんてことを――」
「これで再生はむりね」

「キル・ビルのロケみたい」
「ちがうわよ。サヤじゃない」
「セーラ服だよ。ラスト・ブラッドのチョン・ジヒョンよ」
「あれ池袋学園の制服だシ」
「吸血鬼ハンター美少女彩音だシ」

かたや、翔子と百子。
テツとトオルのナイフのような鉤爪をかわして斬り結んでいる。
テツとトオルは戦うたびにパワーアップしている。

空があかるくなってきた。
翔子と百子は光りに助けられた。

吸血鬼のふたりはまぶしそうに目をすぼめた。

明治通りを青山方面に消えていった。


作者注「吸血鬼ハンター美少女彩音」拙作は「のべぷろ」サイトに載っています。




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この美しい日本が好き/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-15 10:05:17 | Weblog
8

父たちがアラブ人のアジトをいちはやく発見した。
Vセクションの情報収集力にオドロキ。
弾丸で撃たれた死体のムゴサをはじめて見た。
そして内臓のはみでた不気味さ。
イヤナ臭い。
「日名子は……? いるの。ブジなの」
「いまのところ、わからない。GOGOGO」
突入の指令は英語。ここはトウキョウなのに。なにかヘンなの。
死体の悪臭をかいでいるうちに、翔子の感覚は異常になった。

わたしは、純粋培養で育てられてきた。
世の中の悪意、悪友、悪趣味、には触れたことがない。
でも、ダカラと言うべきか、正義感は強い。

確かに異形のモノ、吸血鬼は斬り捨ててきた。
吸血鬼は斬れば、粘ばつく塊とる。
溶ける。
あるいは、灰となる。
キレイナモノだ。
あとになにも残らない。
人間の死体のムゴサ。
生きようとする執念。
死の恐怖と戦い。
かれらは死に、あるいは致命傷をうけながら……のたうっている。

「翔子はここにのこって」
父が去ってから数分。
まだ銃声が時折している。
「ヘルプ」 
ノタウッテいた男が翔子に手をのばした。
それで、おしまい。ばたっと手が倒れた。

翔子はやりきれない。
せっない。どうしてテロなんて起こすの。

ふと見上げる。
父たちが踏み込んだ日本家屋の裏にビルがある。
平屋の日本家屋のすぐそばにビルがある。
都会の建造物のアンバランス。異常だ。
銃声はそのビルのほうでしている。

あっだれかいる。

はつきりとはわからない。
制服だ。わたしの学校の制服だということはみてとれる。
まさか日名子。跳び下りる気らしい。
背筋が震える。
もうどうしょうもない。
「やめて」
翔子は叫ぶ。
「死なないで」
翔子は泣き声で叫ぶ。
「やめて。だれかとめて」
だが跳んだ。
落下する。
ああもうだめだ。
その時だ。
ばさっと羽ばたきの音がした。
とてつもなくおおきな白い翼。
天使の羽だ。
飛翔してきたものは中空で落下する女子学生を捉えた。
バサッと羽の音がして、翔子のそばに舞いおりた。
日名子だった。日名子に翔子かけよる。
「センパイ。日名子さん、どうして。どうして」
「わたしが生きていると父がおもうように政治家てして動けないの。いつもわたしのことで脅迫されているの。愛する日本のために命をかけている父の行動が鈍るの。わたしもこの日本が大好き。だからわたしを死なせて」
それだけいうと、失心してしまった。
「落下するときのショックが強すぎたのかしら」
ミイマだった。
ミイマたち神代寺MV族は、天国の花園の園丁だった。
ルシファーの悪だくみで神の園から追われた。
堕天使だ。
羽根があって空が飛べても、あたりまえだ。

「あうりがとう、ミイマ。日名子を救ってくれて。ありがとう」

「ああ、しばらくぶりで封印していた飛翔能力を使ったので、息切れがしたわ」

ミイマにとっての「しばらくぶり」とは。
その歳月を考えると翔子は頭がくらくらした。
悪臭の悪酔いからまだぬけきつていないのかしら。
「ミイマ、ありがとう」
翔子はミイマにだきついた。
こんどこそ大声で泣きだした。

銃声もやんでいた。

APECのテロは未然に防げたらしい。



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ウラネタばらしのプログです/麻屋与志夫

2010-11-15 06:19:43 | Weblog
11月15日 月曜日

ブログです。

●ネタばらしになりますが、ブログを書くときは小説「さすらいの塾講師」のアイデアが浮かばない時です。浮かんだとしても、納得がいかないケースの時です。なんだか、これはどこかで読んだな。これは古いな。まだまだよく考え直してから書いた方がいい。そんな時です。

●APECの警備のものものしさは、すこし異常でしたよね。昨日は息子の車で深川のお不動さんへでかけました。随所に警官を見受けました。

●息子はカミサンに似て、整理整頓をモットーとしています。車の中は清潔でした。すこしタバコの匂いはしましたが。このところ、カミサンは家の中の不要なものを捨てるのに必死です。市役所で大きいゴミを出せるステッカーを買ってきては、せっせとゴミ捨てにはげんでいます。

●あなたに任せておいたら「ウチはごみ屋敷」になってしまうわ。

●「断捨離」なんて本も出ているらしく、このところ整理に勢いが付いています。

●恐怖です。そのうち、わたしもステッカーを張られて粗大ごみとして処理されてしまうのではないか……と。荷造り紐でくくられて、門前に打ち捨てられ、ゴミ収集車に積みこまれ、行きつく先は……。怖いイメージです。

●息子の嫡子、わたしからすれば、嫡孫、の「お宮参り」、カミサンはいそいそとひさしぶりの和服姿。おりから、七五三詣でとあって八幡さんのほうもすごい賑わい。不況だ、といっても日本はケッコウ平和なのだなと思いました。それとも、平和ボケでさしせまってそこにある経済不安から目をそむけてなすすべもなく、チッポケナ日常の平和にしがみついているのでしょうか。後者でないことを、望みます。

     深川不動尊
      

●カミサンは孫が可愛くて、嫁と交互にダッコシテいました。こうなると男にはやることがありません。わたしの好きなダキニ天が祭ってあったので白狐様にはやくカムバックできますようにと祈ったりしました。

●ダキニ天はインド、中国、日本と三国を渡り、那須野が原で滅ぼされた、九尾の狐、玉藻の前になったといわれています。「さすらいの塾講師」のミイマこと美魔はこの玉藻様を警護する武闘派ということにわたしの小説では、なっています。拙作「奥様はバンパイア」をお読みいただければ書いてあります。

●境内では紅葉する樹木をたのしみました。
  
    八幡神社
     

●さて……これからじっくりと小説のほう書きだしますね。


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一番怖いのは?/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-11-14 06:08:09 | Weblog
7

なにかかすかな音がする。
猫が壁をひっかくような音だ。
カリカリカリ。あたりを見回す。
猫の子一匹みあたらない。
なにもいない。
だれもいない。

かすかな音。
つづいている。
かすかな音。
呼びかけられているような、絶え入るような女の声。

翔子……翔子……翔子。

翔子ははっとした。
畳の下だ。
床下だ。
翔子は純たちを呼び寄せる。
「畳あげて。床下から声がするの」
「ぼくにはきこえない」
「いや、している。忍者の含み声みたい。仲間にだけ聞こえるように、忍者は周りにひとがいると、はっきりとは発音しないのよ」
と百子。
「猿ぐつわてもかまされているのよ」
と翔子。
庭の植木バチのわきからシャベルを探してきた。
純は床下の土を掘りだした。まだ最近掘られた跡がある。
土が柔らか過ぎる。
「なにが埋まってるの」
と翔子。
「音はこの下からよ」
と百子。

翔子……翔子……翔子。かすかな声がまたきこえてきた。
カリカリとなにかこするような音もする。
見えた。
棺が現われた。蓋を開ける。
そこに翔子たちがみたものは、紅子だった。鎖で手足をシバラレテいた。
「翔子ならきてくれる。翔子にならきこえる。そう信じていた」

疲れ果て、やせ細った紅子が翔子に抱きついた。
泣いていた。
まったくの偶然だった。

だれひとり頼ることのできない。
翔子しか知り合いはいない。
紅子だった。

信頼してわたしの救助をまっていた。
ここにきたのは、まったくの偶然だったと言えなくなった。
「それより……きょうは幾日か」
「11月の13日よ」
「タイヘンダよ。わたし二日も埋められていた」
 
紅子の話は意外だった。

日名子が狙われている。

日名子に紅子が声をかけた。
日名子は思い悩んで街をふらついていた。
そのすぐあどで、家まで連れてきた日名子がアラブ人らしいグループに拉致さた。
日名子の父である小山田副総理をおどしている。
なにかしょうとしとているグループがある。
日名子を誘拐してでも、副総理に従わせる……とはなにか。

日名子はじぶんがいたのでは、父が動けなくなると知った。
父の電話を立ち聞きした。
その結果の家でだった。
だから公安の推測もまつたく見当はずれではなかったのだ。
「バラ展に爆弾を仕掛けたれんちゅうかしら」
「翔子。ビンゴだ。あのころから小山田副総理は狙われていた」
「純。パパに連絡してみょうよ。あの時とちがい、こんどはパパがいる」

「テロだな。その情報はまだこちらにあがってきていない。携帯で顔写真をおくる。紅子さんに、確認してもらってくれ」
翔子の携帯にアラブ人の顔がながれだした。
「あっ、この男ダヨ」
「よしこの件は、この男はこっちに任せてくれ。翔子は日名子さんの聴きこみに集中してくれ」

クノイチガールズ48が全員街に散った。
紅子は埼玉のほうに出稼ぎにでているルー芝原と、柴山にメールをうっている。
翔子と純も在京ルーマニヤ人協会をあとにした。
むろん紅子もいっしょだ。

人にとって一番怖いのは、未知モノに襲われることだ。
いつ襲われるかわからなければ、恐怖はさらに増幅する。
そんな恐怖に日名子はさらされていたのだ。

「わたしラーメンだべたい」
新大久保駅前の繁華街。
「翔子ここで止めて」
純を車に残してふたりは降りる。
「紅子、なにか思いだしたんでしょう」
「翔子にはわかるのね。ヤッパわたしたち友だちだシ」
なるほど「中華屋」というそのお店には、ざったな種族があっまっていた。
「あら紅子さんシバラクね」
顔見知りの女性が声をかけてきた。
それからさきはルーマニヤ語らしい言葉で話しだした。
「翔子、このガールに中華丼おごってあげて」
「まかしといて。十パイぶんどうぞ」
翔子は気前よく樋口一葉をその娘にわたす。
「ありがとう、翔子。わたしたち生活きびしい。助かるよ」
娘が話しだした。
「翔子、さっきの顔写真また出るか」
翔子は百子に携帯を入れた。
純が車を発車させた。
紅子は丼りごと持ちだしてきたラーメンをまだ食べている。

「ウチのご近所さんね」
ルーマニヤ協会、紅子の家から200メートルほど新宿寄りだった。

銃声がした。SMGのようなダダダという連続音だった。

翔子ははじめて戦う父をみた。
翔子ははじめて火器のすごさを見た。
翔子は雨戸、柱、など日本家屋がみるまに粉砕されるのを見た。

そしてひとがノタウチナガラ死ぬのを――。
アラブ人だった。



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日名子はいまどこに?/さすらいの塾講師  麻屋与志夫

2010-11-13 10:02:02 | Weblog
6

GGの救援にかけつける翔子たちは検問にひっかかった。
APECが横浜でひらかれている。
とくに13、14日は米国大統領、中国国家主席、ロシア大統領が参加する。
警備もひりひりしている。
全国から警官が横浜に集中している。
都内の警備もものものしい。
その交通規制に純の車がひっかった。

「どこへいくんですはか」
「新宿」
純はブアイソに応えた。
さきを急いでいる。GGを迎えに早くいきたい。
「免許書は」
「なにかあったのですか」
アキバ系の翔子があどけなく聞く。
「特別交通規制中。テレビ見ないの」
「ああAPEC……?……の」
「はいごくろうさま。ご協力ありがとう」
かるく敬礼された。
「遅れたわね」

カーナビにGPS探査機能を加えた。
勝則の配慮によるものだった。
GGの所在をあらわす赤のマークが移動している。
「おかしいな。大久保のほうへ移動している」
「なにかあったのかしら」
「それより、見たか。警官猫みたいな爪だった。爪が指先からのびそうだった」
「それって、純、あれってこと」
「そうBVだ。人の中にまぎれて生きられるように進化しているのだ」
「それを隠すために、むかしながらの体をさらして事件を起こしつづけているの」
純は黙ったままだ。
「怖いわ。わたしたちの周りにthem、ヤッラがうじゃうじゃいる。二世もいるにちがいないわ」
「ミイマもだまされていた」
「田舎での生活が長すぎたから。ぼくらは、とっくに気づいていた。教えてあげればよかった」
「そうよね。田舎暮らしが長すぎたのよ。それまでは……千年も冬眠してたのですもの」

現状認識にズレがあってもしかたない。
ミイマに翔子は同情している。
通行人がおかしい。腰のあたりがぎくしゃくしている。
腰のあたりでパンツをはいている学生。もしや……。
スカートをベルト部分で幾重にも折って短く見せている。……おかしい。
舗道を掃除するようなロングスカート。……おかしい。
腰のあたりが、みんなオカシイ。

疑ったらきりがない。怖くなる。
バーチャルな世界が現実に侵攻している。怖い。

「トオル、言わなければこのテツの喉にバラ手裏剣をつきたてるぞ」
「日名子なんて池袋学園のコの名前なんか、きいたこともない」
「その子が、池袋学園の学生だなんてまだいっていない」
GGの言葉にトオルがしまった! という顔をした。
 
そうだったのか。GGは日名子の事件が気になっているのだ。
やはり吸血鬼がらみとみているのだ。
と麻衣は気づいた。なにかわたしたちのしらないところで胎動している。
目に見えないところでわたしたちに害意の爪をといでいる。
目前の敵よりも、こわい存在だ。
「トオル。助けてくれ。トカサレルのやだよ。たすけてくれよ」
「ルーマニヤの吸血鬼だ。やっらがなにかおかしな動きをみせている。それを探りにきていたのだ」

GGと駆けつけた百子、麻衣は薄闇に潜んでいた。
百人町の紅子の隠れ家をみはっている。
蒼然とした古い屋敷だ。

「わたしが会ってくる」

翔子が来た。
BVとの戦いの中に、日名子の誘拐?
でないかもしれなが。
日名子の問題が介入してきた。

「あのヒトタチといちばん親しいのは、わたしだから」

家の中は静まりかえっていた。
カビ臭い。
そして食べ物の腐った臭い。
誰もいない。
いや、数日は過ぎている。
シンクの洗いかけの野菜類。
腐臭を放っている。
翔子はゾクッとした。
なにか起きている。
なにかが……。




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