田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

若者の夢を喰うもの/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-09 11:12:02 | Weblog
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やはり、新宿。
やはり、歌舞伎町。
やはり、ゴールデン街。
酔客の手垢で黒光りしているカウンター。
懐かしい木のぬくもり、
青春の希望と挫折の想いでをいっぱい載せたカウンター。

GGは店をでた。
アミダクジのように歩く。
迷路となっている細い路地を歩く。
その奥まったところに!!

なんだこりゃ。
『GG小劇場』のネオンサイン。
GGはGGというキャピタルレタの並列をみた。
じぶんが呼びかけられた錯覚にとらわれる。
ゴールデン 街の頭文字をとったのだろう。
と納得するまでに少し時間がかかった。

「いや、村木。お前さんに呼びかけているつもりだよ」

いやらしい声。
へつらい、お追従に満ちた態度。
もみ手までして、いらっしゃい、いらっしゃいといった感じ。

「ここは若者に夢をみせるスペース。音楽、演劇、トークショウ、絵画展……なんでもいい、このスペースから夢の通路がひらけます。て……とこかな。どうだ、村木さんいまからでも遅くはない……」
「むかしのおれだったら、むげに断っただろう。あっさりと拒んだはずだ。でも……こんなジジイを誘惑してくれるなんて、あなたも小まめなことだな。ありがたいとも思う」
「ならどうだ」
ネオンの輝き。
プラズマの光のなかからのこのこと小男がでてきた。
「署名しないか」
見おぼえのあるあの羊皮紙を取りだした。
「太く短く、おもうように生きるのも一つの人生だと思うようになった。ただそれだけのことだ。オイシイ申し入れだが、断る」
「やはりな……」 

小男がぐぐっと巨大化する。
「あまりに……も……知られ過ぎているからな。推参」
「参る!!」

GGはいつでも抜刀できるように腰を落として構える。
「GG。なに独りごといってるの」
クノイチ48のひとり麻衣。
黒のジーンズに皮ジャン。
夜なのに黒いサングラス。
ヤンキーオネエチャンに。
見える。

「モニターみてみんな心配しているよ。ミイマが留守だから、GGがゴールデン街で浮気でもしたら困るって。監督不行き届きでミイマに叱られたらどうしょうってさ」
「麻衣!! 伏せて」
さすがガールズ。
殺気を感じた。
とっさに、ビンボーゥダンスよろしく、上半身を後ろに倒す。
GGの残り少ない頭髪を二三本むしりとった。
麻衣のサングラスをふきとばし。
透明な颶風はおまけにGG小劇場の立て看板をバタバタと倒した。
ドミノ倒しのようだ。
「麻衣ちゃん、そのほうがいいよ。キレイナ目している」
「ありがとう。ねね、だれかその辺に穏行しているの」
さすがクノイチいうことがちがう。
「隠れてなんかいないょ」
プラズマの光のなかから、巨大化したルシファーが現われる。
「きゃあ。イケメンダァ」
麻衣にはソフトバンクの白戸家シリーズ。
の……新しいパパのように映るのだろう。 
バカな。
あいては、魔王だ。
どんな姿にでもじぶんを見せることができる。

GGは鬼切丸を抜く手も見せず魔王にたたきつけた。
バット青白い光がくだけた。
プラズマ体の魔王に刀がくいこんだ。
「あぶないな。不意打ちの居合い切りとはひきょうな」
「それがなにか」
ハケンの品格のセリフを麻衣がかえす。
麻衣にも敵が見えてきた。
でもたじろがない。
「麻衣ちゃん。スケットするわよ!!」
神代寺バラ園での戦いからは、勇気凛凛のガールズだ。
新宿をパトロールしていた仲間がつぎつぎに駈けつけた。
ヒュルヒュルと空気が刃もののように襲ってくる。
「木霊反し」
麻衣の構えた刃の上を鋭い空圧が上空へと誘導される。
上の方で音。
こんどは劇場の表看板が飛び散った。
「避けて!!」
麻衣が叫ぶ。
轟音とともに横五メートルもありそうな看板が落下した。

表の騒動に、劇場から観客パニクッテ飛びだしてきた。
みんな夢見心地の顔をしたままだ。




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