田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

河畔の散歩道/麻屋与志夫

2010-11-21 21:16:05 | Weblog
プログです。

11月22日 月曜日

●まだ枯れ切っていないススキの葉が初冬の風にそよぎ、白い穂は風にとばされうら寂びてきた河川敷、今年も白鷺が飛来した川面に向かってカミサンがあどけない声をあげた。

      

      

      

●わたしも彼女も鳥のこととなるとまったくの無知で、鷺を渡り鳥だと思っている。
鴨は渡り鳥ですよね。
夏にはみかけないから……。

      

●でも、白鷺は夏でも空に舞っているよな。
などと、会話しながら散策する川べりの遊歩道をはずれ、川の流れにつづくススキの群落をかきわけ、いますこし被写体に近づくとヨイ写真がとれるよ、などと声をかけているわたし。

●今年も稼ぎがすくなかったから、一眼レフを買うのはおあずけ。
せめてもの罪滅ぼしに、カミサンが満足のいく写真がとれますようにとススキをかきわけ踏みかため道を開拓するのだが、カミサンは小柄なのでふと姿が見えなくなる。

●一瞬、入水しようと、流れにひとりで歩みだしているような錯覚にとらわれ、背筋が総毛立つ。

●あと何年こうして、ふたりして元気にこの川べりを散歩できるのだろうか。
精進しているから今、教えている塾生が結婚するころまでは現役続行などと意気盛んだ。

●カミサンがカメラを構えている姿が好きだ。
小柄だがその均整のとれた姿には気迫すらかんじ、わたしは一瞬たじろぐこともあり、じぶんの老いを叱咤する。

●彼女と結婚できれば、5年で死んでもいいです、と寿命を限定して願った病床の白いシーツのなかの青春、あれからもう半世紀は経っている。
まだまだ生きていきたい。
いまのところ、5人の孫に囲まれ、嫡孫の宮参りもすませ、さらに生きたいという欲求が高まるいっぽうだ。

●カミサンは夢中でシャッターを切っている。

●さきほどの流れに誘われるような感覚はなんだったのだろう。

●吸血鬼やルシファーのことばかり書いているので、呪われているのかな。




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靴だけが焼け残った/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-21 07:10:46 | Weblog
12

「吸血鬼が忍法使うなんて、おどろきだね。百子」
決して驚いていない声だ。
「だって、わたしたちだって平成の世まで伊賀の忍法をうけついでいるのよ」
「あっそうか。吸血鬼は死なない種族だものね。戦国時代から生きのびているモノもいるわけか」
「忍法はもっと古いのよ。南北朝時代に大塔の宮が長持ちのなかに穏行して難を逃れた古事もある」
「うわぁ。百子って博学なんだ」
「宮に穏行の術を指南したものがいるはずよ」
「そうか……すごいね」
タカの壮絶な死を見た。止めることができなかった。
落ちこんでいる百子を励まそうと翔子は明るく笑う。

ふたりは無事地上にでた。青山墓地だった。
タカの携帯に地上にでる非常階段の位置が記録されていた。
それで、マンホールから脱出できたふたりだった。

百子はタカを死なせた喪失感から立ち直りかけていた。
「おまえらも死ぬか」吸血鬼トオルだった。
「アングラから指令が来た。忍びこんだふたりは――やはり翔子し百子か」
吸血鬼テツがイヤラシイ顔でふたりをにらんでいる。

ふたりは待ち伏せされていた。

「翔子」
百子がこえを低める。
唇をかすかに動かしている。
「穏行してみせるね」
ちょうどいま話していた穏行。
実践してみせるというのだろう。
さっと墓石のかげに走りこむ。
トオルが配下のVと追った。
いない。
テツに回転とび蹴りをかませた。
翔子は墓石の上にとびのっていた。
墓石の影に百子はいない。
「ここよ」

黒々としてごつごつしている。
桜の幹の影でささやくような声がした。
左の墓石の影に逃げこむと見せ。
右の樹木と一体となっていた。
目の錯覚を巧みに利用した。
マジック。

「木トンの術」

百子の顔にようやくほほ笑みがもどった。
「タカのともらい合戦よ!!」
「敵がおおすぎない」
「ひとりでも多く倒す」
はやくも百子の刃がきらめいた。
Vが――青い血をふく。
青い粘塊となって溶けていく。

Vは二つの均等なグループにわかれる。
翔子と百子を襲ってきた。
不可視の敵は恐怖だった。
目に見えるVはウザイ。
怒号が入り乱れる。
「やっちまえ」
溶解した仲間をみて興奮している。
「喰らうてやる。おまえ、おいしそうだ」
「わからないの。バカモノ。わたしの剣には、ミネに銀メッキしてみたのよ」
「それで、アンナにカンタンにとけるのか」
「バァカ。イマゴロキヅイタノ」
タァ。
トゥ。
イァ。
リベンジをこめた気合い。
裂帛の気合が吸血鬼を襲う。
Vの群れはじりじりと、それでも包囲網を狭める。
多すぎる。
Vが多すぎる。

「殺せ。ふたりとも殺せ」
「百子。これって多勢に無勢ってとこね」
この期に及んでもまだジョーク。
「ヤバイことはヤバイわね」
でもふたりとも、肩で息している。
「翔子!! 上よ!!!」
翔子が油断していた。
Vがいったん墓石の上にとんだ。
そしてその高さをうまく使った。
上空から翔子におそいかかってきた。
避けられない。
鉤爪が翔子の喉元めがけて迫る。
ヒカッ。
閃光。
それも青白い閃光だった。
翔子をおそっていたV。
喉元ちかくまで迫っていた鋭利な鉤爪。
消えた。
瞬時にして光を浴びて消滅した。
「レザーガンと火焔放射器。これの完成を待ったのでおくれた」
「遅いよ。父上」
アングラに降りたとき。
百子が誰かに電話していた。
あの相手だった。

――その少し前。
百子のポケットで携帯が鳴った。
タカに託されたほうの携帯だった。
「はい。タカ」
うっと、息をのむがした声がした。
「その声は、百子??  だな」

「遅いよ。パパ」
「タカはおまえの、腹ちがいの姉さんだった」
意外な事実をきかされた。

悲しみがもどってきた。
百子のタカを失った悲しみはさらに深いものとなった。

迷彩服の兵士がVを攻めたてている。
青白いひかりが交差している。
携帯用の火焔放射器の威力だ
「自衛隊異能部隊です。隊長の百々です」

「娘がお世話になっています」
百子がいった。
父のかわりにいった。
父の言葉をひきついだ。
百子がテレテている。
涙ぐんでいる。

「タカ姉のお陰で、通路がわかった。吸血鬼の通路をのぼってココに出られたの」

Vたちの靴が焼け残った。
なぜか、靴だけが焼け残った。
墓石の間に散乱している。
明日、清掃に来た作業員の口から。
新たなる、都市伝説が。
転がっている半焼の靴から生まれるだろう。




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