音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■私の作品 「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜が、日本に到着■

2010-06-03 01:04:17 | ■私の作品について■

■私の作品 「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜が、日本に到着■
                   2010・6・3    中村洋子




★私の作品「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜 が、

ベルリンの歴史ある出版社 Ries & Erler Berlin

リース&エアラー社から、出版され、

このほど、日本にも入荷しました。

同社から、日本人作曲家の作品が出版されるのは初めてです。


★今春に出版されていましたが、アイスランドでの火山噴火の影響で、

日本への到着が、遅れに遅れていました。

やっと、日本で入手できることになりました。


★2007年に作曲された作品で、日本の初春から初夏までの自然を、

心の中にイメージして、作曲いたしました。

私の中の日本を、歌い上げたものではありますが、

厳格に、モティーフを展開していく、という手法で作曲しました。

バッハのチェロ組曲と同じ、六曲から成っています。

バッハを吸収し、その足元にでも近付きたい、

という願いから、この構成をとりました。


★一見、日本を売り物とした「情緒的」な作品と、

受け取られるかもしれませんが、そうではありません。

骨格は、あくまでヨーロッパ・クラシック音楽そのものです。

日本伝統音楽の情緒的な世界とは、無縁の曲です。

それが、ドイツの音楽愛好家の皆さまに広く愛され、

受け入れられた理由である、と思います。

この出版も、そのような皆さまの声に押されて、実現しました。


★この作品を献呈しました、ドイツの著名なチェリスト、

ヴォルフガング・ベッチャー先生が、校訂してくださいました。

また、丁寧で詳細なフィンガリングとボーイング

Spieltechn.Einrichtung  も先生によって、付けられています。

演奏するうえで、大変に弾きやすく、また、勉強になると思います。


★例えば、私が書きましたスラーによるフレージングを残しつつ、

先生の校訂では、そのスラーを、あえて途中で、

分割している個所などが、あります。

作曲家が書いたスラーのフレージングは、

"そのように聴こえるように演奏してほしい" 

という、意味です。

しかし、それを、どのように演奏するかは、別のことです。

その手法が、細部にわたり、懇切丁寧に記載されています。


★私の願いは、この楽譜を見ながら、

先生が演奏されたこの曲のCDを、聴いてほしい、

ということです。

特に、ピアニストに、お勧めしたいのです。

ピアニストが、常に頭を悩ましているフレーズの作り方、

アーティキュレーション、ブレスなどが、

手に取るように、分かります。

ピアノ作品は、和音の手助けがあることもあり、

単旋律のみが続くことは、稀で、

旋律を極限まで問い詰めて、演奏することが少ないからです。


★この作品は、私の作品ではありますが、

先生の演奏の集大成である、ということも、

この楽譜から、読みとることができます。


★表紙のデザインを、Ries & Erler Berlin リース&エアラー社

に任せきりにしていましたので、

出来上がった表紙を見て、びっくりでした。

各曲の題に付けた漢字が、散りばめられ、踊っていました。

例えば:山笑う、惜春、五月雨、青田波・・・です。

しかし、漢字をデザインとして見るドイツ人には、

とてもセンスがよい表紙と、評判が良いそうです。


★Ries & Erler Berlin リース&エアラー社は、1881年に、

フランツ・リースとヘルマン・エアラーにより、

設立された楽譜出版社です。

フランツ・リースは、音楽史で有名な、リース一族の出身で、

伯父のフェルディナント・リース Ferdinand Ries(1784~1838)は、

ベートーヴェンの弟子で、ピアニスト、作曲家、

そして、ベートーヴェンの写譜や、秘書の仕事もしたことで、有名です。


■この楽譜と、ベッチャー先生が演奏の「無伴奏チェロ組曲1番」などが

収録されたCD 「 ヴォルフガング・ベッチャー 日本を弾く 」 などは、

・輸入楽譜の専門店 「 アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ 、

・「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

で、購入できます。
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                             ( 楽譜の表紙 )
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