音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番フーガの、付点リズムの扱い方■

2010-06-07 02:10:37 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番フーガの、符点リズムの扱い方■
                    2010・6・7 中村洋子


★カワイ表参道での「第5回平均律アナリーゼ講座」は、

明 8日となりました。


★「 1巻 5番」の「 フーガ 」を弾くうえで、

皆さまが、最も気にかけるのは、

「付点 8分音符と 16分音符」のコンビについて、

「 16分音符」を、「 32分音符 」のように、

鋭くリズムを刻んで、演奏すべきかどうか、

という点であると、思います。


★上記の演奏は、このフーガが、

「フランス風序曲の様式に則って、作曲されている」

という解釈に基づき、ヴァンダ・ランドフスカが、

チェンバロで、「 32分音符 」のように録音したため、

1950年代から、広く知れ渡りました。


★この「付点 8分音符と 16分音符」の扱い方を、

12人のピアニスト、チェンバリストの演奏で、

比較検討してみました。


★ランドフスカと、ほぼ同じリズムの取り方は、

グスタフ・レオンハルト ( 1968年と1973年の録音 )。


★一方、バッハの記譜通りのリズムでの演奏は、

エドウィン・フィッシャー ( 1933~34年録音 )

ワルター・ギーゼキング ( 1950 )

スヴャトスラフ・リヒテル ( 1970 )

フリードリッヒ・グルダ ( 1972 )

ヴィルヘルム・ケンプ ( 1975 )

ミエッチスラフ・ホルショフスキー ( 1979~80 )

マルリッツィオ・ポリーニ ( 2008 )


★両者の折衷派は、

主題頭部の「32分音符」の対主題として、付点リズムを使う場合、

16分音符をやや鋭く、32分音符に近づけています。

それ以外の、例えば、16分音符のモティーフに、

付随させて使う場合は、バッハの記譜通りのリズムとしています。

そのような演奏は、

アンドラーシュ・シフ ( 1984 )

トン・コープマン ( 1982 )

アンジェラ・ヒューイット ( 1997 )です。


★この三通りに、優劣をつけるのではなく、

どのような考え方から、その奏法が導き出されたか、

それを、ご自身の演奏に生かす方法を、

講座で、お話したいと、思います。


★また、「 5番プレリュード 」 8、9小節目のバスに現れる、

「Fis」の保続音と、16、17、18小節に現れる

「 H 」の保続音は、演奏中に見落とされがちですが、

この曲の要となる、重要な音です。


★この二つの音が、バッハの序文の意味を解く、

カギともなりますので、

詳しく、お話したいと、思います。


                              ( カンゾウ )
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