音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 生誕150年のアルベニス、その独特な和音の秘密 ■

2010-06-28 00:05:36 | ■私のアナリーゼ講座■
■ 生誕150年のアルベニス、その独特な和音の秘密 ■
                 2010.6・28 中村洋子


★6月も、あと数日です。

梅雨空に、梔子の白い花、甘い芳香が漂ってきます。

南天も星砂のような白い花弁を、地面に散らしています。

雪と、見まがうばかりです。


★太陽の明るい湘南・平塚市で、6月17日、

斎藤明子さんが、私の「夏日星」と「東北への路」を、

演奏されました。


★平塚のフレンチ・レストラン「マリー・ルイーズ」での、

「音と衣と食の和音 ~ Toriades トリアド~ 」という、

楽しい会でした。


★アトリエ「ヌゥイ」の服装デザイナー・島田佳幸さんによる、

紬など、日本の伝統的布を素材としたドレス、

その美しいドレスで、明子さんが10弦ギター、

シェフ・尾鷲幸男さんが、曲に合わせた創作料理、

という見事な “ トリアド 三和音 ”。  

肩肘を張らずに、目と舌と耳を楽しむ、素敵な会でした。


★曲目は、組曲「夏日星」より「スギナのような双子星」、

組曲「東北への路」より、「五月雨の降り残してや光堂」、

バッハやタレガ、アルベニスの曲も演奏されました。


★ことしは、ショパン、シューマンの生誕200年が、

有名ですが、アルベニスも、生誕150年になります。

アルベニスの作品は、親しみやすく、

スペインの香りが、立ってきます。


★ここで、手軽にピアノでスペイン的な和音を、

作ってみましょう。


★分かりやすくするため、「イ短調」で、説明しますと、

右手で、短三和音 ラ ド ミ ( A C E ) を、3回弾きます。

そのとき、左手で、順番に ラ ミ ラ ( A E A ) を、

和音に合わせて、弾いていきます。


★これだけですと、ごく普通の響きですが、

左手2つ目の ミ ( E )に、前打音 レ♯ ( Dis ) を、

付けてみましょう。


★不思議にも、ピアノで弾きましても、ギターのような、

スペインの響きがします。

これは、「前打音の解決音を、その上行に置かない」という

和声の規則に、実は、反しています。

つまり、前打音 レ♯ ( Dis ) の解決音 ミ ( E ) が、

右手三和音 ラ ド ミ のなかに、含まれているから,

規則違反なのです。


★しかし、その規則違反こそが、

エキゾチックで魅力的な響きを、醸し出しています。


★さらに、この解決音 「 ミ 」 を省略して、

左手を、「ラ レ♯、ラ ( A Dis A ) 」とすることも、可能です。

そうしますと、 ラ から レ♯ への音程、増 4度が、

さらに、異国情緒を増した響きとなります。


★アルベニスの実演を収録した蝋管のCDを、聴きますと、

彼は、その増 4度 を強調するために、

2番目の音 「 レ♯ 」 に、アクセントすら付けて弾いています。


★この響きは、スペインに憧れをもった、

ドビュッシーやラヴェルの作品からも、聴くことができます。


★この種の「楽しい和声の種明かし」を、

7月14日の、第6回バッハ平均律・アナリーゼ講座「ニ短調」で、

お話いたします。


                            ( プチトマトの花 )
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