音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 「くるみ割り人形」のピアノ独奏用編曲について ■

2007-12-24 17:27:34 | ★旧・感動のCD、論文,演奏会など
2007/2/23(金)

★昨日は作曲をしなければいけないのに、一日中、シューベルトを弾いて楽しんでしまいました。

音楽の楽しみは、聴くだけでなく、ピアノを自分で味わいながら演奏することにもあるのですね。

(ピアノを弾けない方は、ごめんなさい)

特にピアノ曲ではないオーケストラなどの名曲を、

ピアノ独奏や連弾に編曲したものを弾くのは、もう一つの楽しみでもあります。


★アメリカのシャーマー(Schirmer)社から出版されているチャイコフスキー(1840~1893)の

バレー組曲「くるみ割り人形」、Stepan Esipoff編曲のピアノ独奏版は、とてもいい編曲です。

難しい技巧を必要とせず、初見で気楽に弾けるわりには、

ピアノの音が無理なく響きます。

このブログでは、大作曲家が編曲した名曲について、何回か書きました。

大作曲家の編曲は、過去の名曲を自分の栄養にしようとする、強い意志を感じます。

さらに、作曲家の個性が色濃くにじんでいます。

バッハの編曲したマルチェッロや、シェーンベルク編曲のヨハン・シュトラウスがそのいい例です。

Esipoff版は、質は落とさず、だれでも名曲を気楽に弾いて楽しめるよう編曲されています。

大作曲家は自分のために、このEsipoffさんは、音楽愛好家のために編曲したのだ、と思います。


★Esipoff版は、有名な「金平糖の踊り」「ロシアの踊りTrepak」「中国の踊り」

「葦笛の踊り」「花のワルツ」など全8曲から成ります。

「くるみ割り人形」のピアノ編曲はこれまで、いくつか見たことがありますが、

どれも、妙に難し過ぎたり、あるいは、単純過ぎたり、

オーケストラの音の要約が、うまくいっていなかったりで、

すべて、いまひとつでした。

そういう訳で、この編曲がお薦めです。

お値段も1400円前後と、お手頃です。


★ピアノのレッスンで、映画音楽や甘ったるい流行曲に手を染めるより、

このような曲をお使いになることを、強くお薦めいたします。

生徒さんが、オーケストラやバレーにも興味を示すきっかけにもなることでしょう。

どこかで聴いた美しいメロディーを、自分で表現できることは、大変にうれしいことです。

是非、発表会でもお使いください。


★私は、小さい頃、樫山文枝さんの朗読が入った「くるみ割り人形」のレコードが大好きでした。

昔の横長のステレオを前に、母は針仕事、私は桑の木でできた裁縫箱を開け、

色とりどりのマチ針を並べ替えたり、余ったボタンでオハジキ遊びをしながら、

チャイコフスキーを聴いていたのを、懐かしく思い出します。

私のコンサートで、朗読を挿入するのも、そんな幼児体験があったからかもしれませんね。


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