2007/3/15(木)
★ピアノのルービンシュタイン、バイオリンのハイフェッツ、チェロのピアティゴルスキーの演奏を録画した
EMIクラッシック・アーカイブシリーズを観ました。
「100万ドルトリオの名演奏」と日本語で宣伝してありますが、3人でのトリオの演奏は一曲もなく、
収録曲は、ベートーベンのピアノ協奏曲第4番、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、
ウォルトンのチェロ協奏曲、あとは小品です。
★ピアノ協奏曲は、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)が75歳の1967年、
ロンドン・ロイヤルフェスティバルホールでの録音です。
“年齢を全く感じさせない”という陳腐な表現だけでなく、
“人間として最も美しい歳のとりかた”が伝わる演奏でした。
彼が、自分で鍛え抜いた「手」の美しさに惚れ惚れとしました。
指の付け根の関節は、筋肉で大きく盛り上がっていますが、決して、
ゴツゴツした感じではなく、優雅ですらあります。
私がいままで拝見しました手で、一番美しいと思ったのは、ショパンの手ですが、
これは、ピアニストというより、創作する作曲家の手、というイメージが強いです。
ピアニストの手では、断然、ルービンシュタインです。
★以前、尊敬する歌舞伎の中村富十郎さんの腕の筋肉を、直接、触らせていただいたことがあります。
硬さは全くなく、柔らかく弾力がありました。
日本舞踊などで、瞬間的に強い力を出すために鍛え上げられた筋肉は、
普段は柔らかいものだと、分かりました。
おそらく、ルービンシュタインもそうだと思います。
また、顔の表情も興味深いものがありました。
舞台袖から、オーケストラの団員の間を縫って、ピアノに辿り着くまでの、
緊張して引き締まった顔。
背筋をすっくと伸ばし、鍵盤に向かう表情、
弾き終わった後の、大きな仕事を成し終えた安堵感。
まさに千両役者です。
残念ながら、ルービンシュタインの実演は見たことがなく、
想像するだけでしたが、映像で体験でき、とても幸せです。
★文楽の名人・故吉田玉男さんも、人形の動きとは全く関係なく、
いつも背筋をシャンと伸ばし、
どんな場面でも、顔色ひとつ変えていらっしゃいませんでした。
彼の遣う大星由良之助の人間的な奥行きの深さ、と一脈通じるかもしれません。
晩年、玉男さんの「忠臣蔵」全幕を、通しで観ることができたのはとても幸運でした。
★ベートーベンの4番は、コンチェルトのなかでは、私も最も好きな曲ですが、
「アポロ的」などとレッテルを貼られ、なんだか肩の凝る縮こまった演奏があるようです。
ルービンシュタインは、こだわることなく、おおらかに大きく羽ばたいております。
皆様もこの演奏をお聴きになりますと、
“音楽とはなんと楽しいものでしょう”とお感じになることと思います。
★このDVDには、ボーナスとして、ショパン・ポロネーズ変イ長調「英雄」が入っております。
これは、1年後の1968年に、同じホールでの録画です。
これだけでも、このDVDを購入する価値があります。
あまりに有名で、通俗的なイメージが定着しておりますが、
演奏によって、かくも変わるものか、と思いました。
軍馬のどよめきがヒタヒタと押し寄せ、眼前に迫るようです。
兵隊たちの高揚した感情まで伝わってきます。
ショパンの醍醐味です。
ドラクロアの絵画でも見ているかのようです。
ルービンシュタインには、ブラームスのピアノ五重奏の歴史的な超名演がありますが、
室内楽の抽象的な世界も、ショパンの活き活きとした絵画的世界も、難なく描き出せます。
本当にオールマイティなピアニストです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★ピアノのルービンシュタイン、バイオリンのハイフェッツ、チェロのピアティゴルスキーの演奏を録画した
EMIクラッシック・アーカイブシリーズを観ました。
「100万ドルトリオの名演奏」と日本語で宣伝してありますが、3人でのトリオの演奏は一曲もなく、
収録曲は、ベートーベンのピアノ協奏曲第4番、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、
ウォルトンのチェロ協奏曲、あとは小品です。
★ピアノ協奏曲は、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)が75歳の1967年、
ロンドン・ロイヤルフェスティバルホールでの録音です。
“年齢を全く感じさせない”という陳腐な表現だけでなく、
“人間として最も美しい歳のとりかた”が伝わる演奏でした。
彼が、自分で鍛え抜いた「手」の美しさに惚れ惚れとしました。
指の付け根の関節は、筋肉で大きく盛り上がっていますが、決して、
ゴツゴツした感じではなく、優雅ですらあります。
私がいままで拝見しました手で、一番美しいと思ったのは、ショパンの手ですが、
これは、ピアニストというより、創作する作曲家の手、というイメージが強いです。
ピアニストの手では、断然、ルービンシュタインです。
★以前、尊敬する歌舞伎の中村富十郎さんの腕の筋肉を、直接、触らせていただいたことがあります。
硬さは全くなく、柔らかく弾力がありました。
日本舞踊などで、瞬間的に強い力を出すために鍛え上げられた筋肉は、
普段は柔らかいものだと、分かりました。
おそらく、ルービンシュタインもそうだと思います。
また、顔の表情も興味深いものがありました。
舞台袖から、オーケストラの団員の間を縫って、ピアノに辿り着くまでの、
緊張して引き締まった顔。
背筋をすっくと伸ばし、鍵盤に向かう表情、
弾き終わった後の、大きな仕事を成し終えた安堵感。
まさに千両役者です。
残念ながら、ルービンシュタインの実演は見たことがなく、
想像するだけでしたが、映像で体験でき、とても幸せです。
★文楽の名人・故吉田玉男さんも、人形の動きとは全く関係なく、
いつも背筋をシャンと伸ばし、
どんな場面でも、顔色ひとつ変えていらっしゃいませんでした。
彼の遣う大星由良之助の人間的な奥行きの深さ、と一脈通じるかもしれません。
晩年、玉男さんの「忠臣蔵」全幕を、通しで観ることができたのはとても幸運でした。
★ベートーベンの4番は、コンチェルトのなかでは、私も最も好きな曲ですが、
「アポロ的」などとレッテルを貼られ、なんだか肩の凝る縮こまった演奏があるようです。
ルービンシュタインは、こだわることなく、おおらかに大きく羽ばたいております。
皆様もこの演奏をお聴きになりますと、
“音楽とはなんと楽しいものでしょう”とお感じになることと思います。
★このDVDには、ボーナスとして、ショパン・ポロネーズ変イ長調「英雄」が入っております。
これは、1年後の1968年に、同じホールでの録画です。
これだけでも、このDVDを購入する価値があります。
あまりに有名で、通俗的なイメージが定着しておりますが、
演奏によって、かくも変わるものか、と思いました。
軍馬のどよめきがヒタヒタと押し寄せ、眼前に迫るようです。
兵隊たちの高揚した感情まで伝わってきます。
ショパンの醍醐味です。
ドラクロアの絵画でも見ているかのようです。
ルービンシュタインには、ブラームスのピアノ五重奏の歴史的な超名演がありますが、
室内楽の抽象的な世界も、ショパンの活き活きとした絵画的世界も、難なく描き出せます。
本当にオールマイティなピアニストです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲