2007/7/31(火)
★この弦楽五重奏曲は、1828年9月ごろ、
シューベルトの死(同年11月)の直前に書かれました。
通常の弦楽四重奏にチェロがもう一人加わり、五重奏になっています。
第一チェロをバウマンが担当し、第二チェロをベッチャー先生が演奏されています。
低い順に、第二チェロ、第一チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリン、第一ヴァイオリンです。
第一チェロは内声を担当し、時に、第二チェロと、ユニゾンでバスを弾きます。
第二チェロは、この五重奏の土台となるバスを渾身の力で支えるのです。
★特に第一楽章の81小節目以降、第二チェロは、ピッチカートで、他の4声を支えます。
一見コントラバス的でもありますが、チェロでなければ出来ない音色と、
音高です。
ベッチャー先生の演奏は、他の4人の奏者が演奏を止めてしまっても、
そのバスのみを聴くことで、シューベルトが意図した他の4声の和声が想像できるほどです。
★第2楽章アダージョの第二チェロも、ピッチカートバスで、同じことが言えます。
ピアニストは是非、スコアーを見ながら、バスだけに注目してこのCDをお聴きください。
それを何度か、なさいますと、シューベルトのピアノソナタを弾く際、
バスの弾き方が変わってくると思います。
また、生きたリズムの取り方も学べます。
★ちなみに、第一楽章49小節目からの3連譜で刻まれた和音の伴奏
(第一、第二ヴァオリン、第二チェロ)と、旋律(ヴィオラ、第一チェロ)は、
シューベルト最後のピアノソナタ・D960の第一楽章・第2テーマを弾く際、
おおいに、参考になります。
★音響やムード、思いつきだけでピアノソナタを弾く演奏の問題点は、
バスの認識が、あまりにも浅すぎるということです。
勉強不足と片付けてしまえば、それまでですが、
聴くほうも、ヨーロッパのクラッシック音楽の根幹を理解せず、
妙に興奮を煽るドラマチックな演奏をもてはやす、という
悪循環に陥っているのではないでしょうか。
これは、シューベルトの世界からは、最も遠いものです。
★和声の「ドッペルドミナントの5音下行変質音」について、よくお尋ねがあります。
第一楽章の最後から20小節前の「426小節」で、第一チェロ、第二チェロが
同時に奏する「ラ♭」のトリルをお聴きください。
この第5音の意味と弾き方が、はっきりと分かるはずです。
5音が、強烈に2度下行する方向性をもったものである、ことが
お分かりになると思います。
★ベッチャー先生に「素晴らしいピッチカートバスですね」と、お話しましたところ、
「モーツァルトの“弦楽五重奏・K515”も合わせて勉強しなさい。
これは、なんという傑作だろう」とおっしゃていました。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
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ニックネーム選択 bienaimerpoh
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■■シューベルト作曲弦楽五重奏曲D.956の素晴らしいCD■■~2つのヴァイオリン、ヴィオラ、2つのチェロのための~ 傑作(0)
2007/7/24(火) 午前 11:05私が感動した演奏会や、CD、論文その他音楽 Yahoo!ブックマークに登録 ★7月21日(土)の小石川・傳通院での「フルートとハープのための演奏会」、
22日(日)の日本ベーゼンドルファー東京ショールームでの、
「アナリーゼ講座」(ショパン)が、無事終わり、ホットしております。
これから、8月初演の室内楽を作曲したい、と思います。
★7月16日(月)にも、ピアニストの皆さまを対象とする
シューベルト、ショパン、ブラームスについての「アナリーゼ講座」を開きました。
共通する「ショパン」を考える時、シューベルトの存在の大きさを思わざるをえません。
CDの日本語解説には、よく「シューベルトは構成が弱い」などと書いてありますが、
これは、巨大な象を手のひらで触った小さな人間が、
「この動物には形がない」と、言っているのに等しいと思います。
このシューベルト、という大天才に対し、どうぞ、心より謙虚に
その緻密な構成を自分で研究し発見してください。
日本の評論家の文章を信用しないでください。
★上記の両講座で、シューベルトの最後のピアノソナタ「変ロ長調D・960」について、
お話いたしましたが、この曲は次の2点について、画期的な作品です。
1)ショパンは、(それほど指摘されていませんが)、
シューベルトを大変に尊敬し、随分詳しく研究していました。
ピアノソナタ「変ロ長調D・960」は、1828年(シューベルトの没年)に作曲され、
出版されたのは、なんと10年後の1838年です。
その3年後に発表されたショパンの「バラード第3番」は、
シューベルトのこのソナタの構成から、大変大きな影響を受けています。
おそらく、ショパンは、出版楽譜を研究したはずです。
それが、ショパンの最後の大きな作品「幻想ポロネーズ」に繋がっていくのです。
★2)シューベルトのこのソナタは、ピアノという楽器を超越し、
弦楽四重奏、あるいはオーケストラのような響きや発想で作曲されています。
ピアニストは、同時期のシューベルトの室内楽曲を研究すると、
ピアノでどのように対位法、リズム、音色を表現したらいいか、参考になるはずです。
★というわけで、シューベルト最後の大きな室内楽作品である
「弦楽五重奏曲D.956」を聴きたくなり、CDショップに出掛けました。
そこで、なんという出会いでしょう。
「ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団」と
チェロのイェルク・バウマンによるこの曲のCDを見つけてしまいました。
★正直申し上げまして、いままで、あまりきちんと理解していなかったのですが、
この名演を聴くことにより、霧が晴れるように、この曲とシューベルト晩年の作風、
それがいかに、シューマン、ショパン、ブラームスを通し、
ドイツとフランス音楽の滋養の根幹となっていったか、よく分かりました。
★このCDは、まだ絶版になっておりませんので、是非お聴きください。
CD番号:≪WPCS22047テレフンケン・トレジャーズ ワーナーミュージック・ジャパン≫。
「ブランディス弦楽四重奏団」は、
ベルリンフィルの第1コンサートマスターのトーマス・ブランディス(第1ヴァイオリン)、
ペーター・ブレム(第2ヴァイオリン)、
ヴィルフリート・シュトレーレ(ヴィオラ)、
ヴォルフガング・ベッチャー(チェロ)の名匠ぞろいです。
ベッチャー先生は、誤って「ベットヒャー」と記述されています。
さらに、チェロのイェルク・バウマンが加わっての五重奏です。
バウマンは、ベッチャー先生の後を継いで、ベルリンフィルの首席チェリストに
なられた方ですが、惜しくも既にお亡くなりになっています。
このCDの素晴らしい内容については、後ほど、ブログでお知らせいたします。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★この弦楽五重奏曲は、1828年9月ごろ、
シューベルトの死(同年11月)の直前に書かれました。
通常の弦楽四重奏にチェロがもう一人加わり、五重奏になっています。
第一チェロをバウマンが担当し、第二チェロをベッチャー先生が演奏されています。
低い順に、第二チェロ、第一チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリン、第一ヴァイオリンです。
第一チェロは内声を担当し、時に、第二チェロと、ユニゾンでバスを弾きます。
第二チェロは、この五重奏の土台となるバスを渾身の力で支えるのです。
★特に第一楽章の81小節目以降、第二チェロは、ピッチカートで、他の4声を支えます。
一見コントラバス的でもありますが、チェロでなければ出来ない音色と、
音高です。
ベッチャー先生の演奏は、他の4人の奏者が演奏を止めてしまっても、
そのバスのみを聴くことで、シューベルトが意図した他の4声の和声が想像できるほどです。
★第2楽章アダージョの第二チェロも、ピッチカートバスで、同じことが言えます。
ピアニストは是非、スコアーを見ながら、バスだけに注目してこのCDをお聴きください。
それを何度か、なさいますと、シューベルトのピアノソナタを弾く際、
バスの弾き方が変わってくると思います。
また、生きたリズムの取り方も学べます。
★ちなみに、第一楽章49小節目からの3連譜で刻まれた和音の伴奏
(第一、第二ヴァオリン、第二チェロ)と、旋律(ヴィオラ、第一チェロ)は、
シューベルト最後のピアノソナタ・D960の第一楽章・第2テーマを弾く際、
おおいに、参考になります。
★音響やムード、思いつきだけでピアノソナタを弾く演奏の問題点は、
バスの認識が、あまりにも浅すぎるということです。
勉強不足と片付けてしまえば、それまでですが、
聴くほうも、ヨーロッパのクラッシック音楽の根幹を理解せず、
妙に興奮を煽るドラマチックな演奏をもてはやす、という
悪循環に陥っているのではないでしょうか。
これは、シューベルトの世界からは、最も遠いものです。
★和声の「ドッペルドミナントの5音下行変質音」について、よくお尋ねがあります。
第一楽章の最後から20小節前の「426小節」で、第一チェロ、第二チェロが
同時に奏する「ラ♭」のトリルをお聴きください。
この第5音の意味と弾き方が、はっきりと分かるはずです。
5音が、強烈に2度下行する方向性をもったものである、ことが
お分かりになると思います。
★ベッチャー先生に「素晴らしいピッチカートバスですね」と、お話しましたところ、
「モーツァルトの“弦楽五重奏・K515”も合わせて勉強しなさい。
これは、なんという傑作だろう」とおっしゃていました。
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■■シューベルト作曲弦楽五重奏曲D.956の素晴らしいCD■■~2つのヴァイオリン、ヴィオラ、2つのチェロのための~ 傑作(0)
2007/7/24(火) 午前 11:05私が感動した演奏会や、CD、論文その他音楽 Yahoo!ブックマークに登録 ★7月21日(土)の小石川・傳通院での「フルートとハープのための演奏会」、
22日(日)の日本ベーゼンドルファー東京ショールームでの、
「アナリーゼ講座」(ショパン)が、無事終わり、ホットしております。
これから、8月初演の室内楽を作曲したい、と思います。
★7月16日(月)にも、ピアニストの皆さまを対象とする
シューベルト、ショパン、ブラームスについての「アナリーゼ講座」を開きました。
共通する「ショパン」を考える時、シューベルトの存在の大きさを思わざるをえません。
CDの日本語解説には、よく「シューベルトは構成が弱い」などと書いてありますが、
これは、巨大な象を手のひらで触った小さな人間が、
「この動物には形がない」と、言っているのに等しいと思います。
このシューベルト、という大天才に対し、どうぞ、心より謙虚に
その緻密な構成を自分で研究し発見してください。
日本の評論家の文章を信用しないでください。
★上記の両講座で、シューベルトの最後のピアノソナタ「変ロ長調D・960」について、
お話いたしましたが、この曲は次の2点について、画期的な作品です。
1)ショパンは、(それほど指摘されていませんが)、
シューベルトを大変に尊敬し、随分詳しく研究していました。
ピアノソナタ「変ロ長調D・960」は、1828年(シューベルトの没年)に作曲され、
出版されたのは、なんと10年後の1838年です。
その3年後に発表されたショパンの「バラード第3番」は、
シューベルトのこのソナタの構成から、大変大きな影響を受けています。
おそらく、ショパンは、出版楽譜を研究したはずです。
それが、ショパンの最後の大きな作品「幻想ポロネーズ」に繋がっていくのです。
★2)シューベルトのこのソナタは、ピアノという楽器を超越し、
弦楽四重奏、あるいはオーケストラのような響きや発想で作曲されています。
ピアニストは、同時期のシューベルトの室内楽曲を研究すると、
ピアノでどのように対位法、リズム、音色を表現したらいいか、参考になるはずです。
★というわけで、シューベルト最後の大きな室内楽作品である
「弦楽五重奏曲D.956」を聴きたくなり、CDショップに出掛けました。
そこで、なんという出会いでしょう。
「ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団」と
チェロのイェルク・バウマンによるこの曲のCDを見つけてしまいました。
★正直申し上げまして、いままで、あまりきちんと理解していなかったのですが、
この名演を聴くことにより、霧が晴れるように、この曲とシューベルト晩年の作風、
それがいかに、シューマン、ショパン、ブラームスを通し、
ドイツとフランス音楽の滋養の根幹となっていったか、よく分かりました。
★このCDは、まだ絶版になっておりませんので、是非お聴きください。
CD番号:≪WPCS22047テレフンケン・トレジャーズ ワーナーミュージック・ジャパン≫。
「ブランディス弦楽四重奏団」は、
ベルリンフィルの第1コンサートマスターのトーマス・ブランディス(第1ヴァイオリン)、
ペーター・ブレム(第2ヴァイオリン)、
ヴィルフリート・シュトレーレ(ヴィオラ)、
ヴォルフガング・ベッチャー(チェロ)の名匠ぞろいです。
ベッチャー先生は、誤って「ベットヒャー」と記述されています。
さらに、チェロのイェルク・バウマンが加わっての五重奏です。
バウマンは、ベッチャー先生の後を継いで、ベルリンフィルの首席チェリストに
なられた方ですが、惜しくも既にお亡くなりになっています。
このCDの素晴らしい内容については、後ほど、ブログでお知らせいたします。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
シューベルトの変ロ長調は、
シューマンですら本質に迫る発言をしていませんが、
そんな段階で、ショパンが影響を受けたというのは、
すごい発見です。
1838年といえば、
ようやくリストがシューベルトの歌曲に、
開眼した頃でしょうか。